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公開日 2012/08/03 10:00

【レビュー】使いやすいサイズ感のフロアスタンド − クリプシュ「RF-62 II」を聴く

「様々なシーンで活躍できるハイC/Pホーンスピーカー」
岩井喬
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■使いやすいサイズ感のフロアスタンド「RF-62 II」


もう1モデル、リファレンスシリーズにおいて使いやすいサイズ感、安定したバランス重視のサウンド傾向を持つフロアスタンディング型のミドル機「RF-62 II」のレビューもお届けしよう。本機もデノンのSACDプレーヤー「DCD-1650SE」とラックスマンのエントリークラス・プリメインアンプ「L-505uX」を組み合わせて試聴した。

RF-62 II

この「RF-62 II」は「RF-7 II」、「RF-82 II」直近の普及モデルである。セラミックモーター搭載の2.5cmチタンドライバーと90°×60°スクエア“Tractrixホーン”による高域と、16.5cmセラメタリック・ダブルウーファーによる低域の2ウェイ3スピーカー構成だ。

上位モデル同様にデュアル・リア・ファイアリング式バスレフポートやスパイクオプションを持つ新デザインのフットを採用し、バイワイヤリングにも対応。キャビネットもチェリーとブラック(ともに木目調ビニールシート仕上げ)の2色がラインナップされている。能率は97dBとなっており、同じようなサイズ、価格帯の製品としては非常に高いスペック値といえるだろう。

チェリーモデル

フィニッシュの違いのイメージ

推測ではあるが、キャビネットの板材厚はほぼ「RF-82 II」と同じものであり、本機はサイズが小さい分、キャビネット剛性が取れている印象だ。結果として低域のダンピング感も優れており、“Tractrixホーン”の音色と相性が良い適度な引き締まりとともに、ソースの持つ解像度もストレートに表現してくれる。

背面の様子

クラシックの諏訪内晶子は、高域の粒立ちに優れ、伸び良いバイオリンの弦は定位もすっきりと見通すことができる。木管のローエンドも伸び良く、低域制動の高さも相まって分離の良いオーケストラが展開。

ジャズのオスカー・ピーターソン・トリオではピアノが軽快なタッチで輝き、高域のハーモニクスがクリアに響く。ウッドベースは胴鳴りが引き締まり弦のたわみ感はハリ艶良く浮き上がる。

Pure2ではホーンセクションだけでなくシンバルなどの金属系の音色はストレスなくクリアに描かれ、アンビエント感もリアルに広がっている。ウッドベースは弾力良くドラムのアタックはキレが良い。ボーカルはクールな描写で口元はくっきりとソリッドに浮かび、リヴァーブ成分との分離も良い。

続いてポピュラー音源であるが、KOTOKOでは、キック&ベースが引き締まり、タイトな押し出しとなった。

ボーカルはキレ良く鮮やかな口元描写となり、分離感に優れる。ギターのリフも重みとエッジ感のバランスが良く、シンセの鮮やかでキレの良い際立ちと好対照だ。全般的にラウドかつゴージャスな音色といえる。

同じジャンルから中島愛も聴いてみたが、ボーカルは幾分中域のふくらみを持たせ粒立ち良く描写。囁くような声であっても詰まりなくすっと前に出てくるあたりはホーンならではの立ち上がりの良さが活きている。

ストリングスやシンセのパートも細やかな音までしっかりとトレースし、前後感も的確に再現してくれた。音の分離も良く立体的な音像描写で、低域は程良く丸みを持たせた押し出しで耳馴染み良い。

試聴の様子

最後にロックサウンドとしてヒートとエイジアを再び聴くことにしたが、クリプシュのスピーカーが北米の『ハードロックカフェ』で採用されている実績を示すように相性の良いメリハリの効いた鳴りっぷりだ。

まずヒートではシンセのキレ込みが鮮明で、リズム隊も同様に引き締まった描写である。ボーカルはクリアでキリッとした際立ちで、ギターのリフは厚みを適度に持たせつつキレと音伸びをバランス良く両立。スピードを伴ったドライブ感満載の爽快さだ。

一方大人びた“いぶし銀”の風情が漂うエイジアでは全体的にこじんまりと落ち着いた音像感となるが、各楽器一つ一つ粒立ち鮮やかでリズム隊は音伸び良い厚みとアタックのキレを持ち、音場の見通しの良さに繋がっている。

ギターは渋みのあるアンプトーンをしっかりと押し出してくるが、エッジ感を持たせながら優しげなミドルトーンを厚み良く紡ぎだす。オルガンの深い抑揚感も併せ、表現力の幅も十分に持ったサウンド性といえる。

この「RF-62 II」と同じ口径のウーファーを単発で用いた「RB-61 II」とともに、ホーンならではの音色とアメリカンサウンドを地で行く爽快な鳴りっぷりの良さに加え、新たなリファレンスシリーズで獲得した様々なジャンルへの適合性とレンジバランスの良さも絶妙な配分で融合したサウンドを持っているといえる。

しかも高能率でありながらリーズナブルな価格でまとめられていることもあり、様々なシーンで活躍できるハイコストパフォーマンス・ホーンスピーカーとして楽しむことができるだろう。

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■文中におけるアルバム名表記のないジャンルごと基本試聴ソース詳細
○クラシック
・諏訪内晶子『シベリウス&ウォルトン:ヴァイオリン協奏曲』(ユニバーサル・SHM-SACD:UCGD-9007)
○ジャズ
・オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』〜ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー(ユニバーサル:UCCU-9407)
・『Pure2 〜Ultimate Cool Japan Jazz〜』〜届かない恋、夢であるように(F.I.X.:KIGA10)
○ポップス
・YUKI『プレイボール/坂道のメロディ』(ソニー:ESCL-3897)
・KOTOKO『→unfinished→』(ワーナー:1000300210)
・中島愛『Be With You』〜TRY UNITE!、恋、好キッス!KISS!!(フライングドッグ:VTZL-38)
○ロック
・H.E.A.T『ADDRESS THE NATION』〜LIVING ON THE RUN(アヴァロン:MICP-11050)
・エイジア『XXX』〜BURY ME IN WILLOW(アヴァロン:MIZP-30002)

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