公開日 2015/05/28 15:00
超実力派メンバーが世界最高峰を目指す! 『うたわれるもの 偽りの仮面』楽曲マスタリングの裏側
「アナ雪」エンジニアや“レジェンド”も参加
先日、9月24日発売予定のPlayStation(R)4/PlayStation(R)3/PlayStation(R)Vita専用ソフト『うたわれるもの 偽りの仮面』のなかで使用されるボーカル曲に関し、海外でのレコーディングプロジェクトが進行している旨をお届けした(関連記事)。
そしてこの度、プロジェクトの総仕上げともいえるマスタリング工程が完了。いよいよその全貌が明らかになってきた。今回はそのマスタリングの模様について、ダイジェスト的にレポートをお届けしたい。
まず前回ご紹介したレコーディング〜ミックスダウンまでの流れをまとめておこう。作中に用いられるボーカル曲はSuaraさんが担当しており、その楽曲たちのストリングス・パートを英・ロンドンの「アビー・ロード・スタジオ」“スタジオ2”でレコーディング。
この時のレコーディングエンジニアは『ロード・オブ・ザ・リング』『ハリーポッター』シリーズをはじめとしたハリウッドの大作を数多く手がける上級エンジニア、サイモン・ローズさんが担当した。
この時の録音に参加したストリングスの面々も前述した映画のサウンドトラック収録に携わっているそうで、精緻でありながらも躍動感、抑揚の豊かさも備わったリッチな演奏を聴かせてくれる。さらにサイモンさんの巧みなマイクアレンジとスタジオの持つ独特な残響感も相まって、濃密で重厚感あるストリングスサウンドを得ることができたのだ。
続くミックスダウンは米・ロサンゼルスに場を移し、ハリウッドの中心地にある「イーストウェストスタジオ」“スタジオ2”にて行われた。ミキシングエンジニアは『アナと雪の女王』のサントラや主題歌も担当しているデヴィッド・バウチャーさんだ。
数々のディズニー映画のサントラ製作で辣腕をふるってきたデヴィッドさんのサウンドは、主題であるボーカルを鮮明に際立たせ、豪華なオーケストラにも負けない存在感のあるミックスとなる。このミックスのバランスがある意味アニソンらしさにも繋がる要素となっていることも興味深いが、デヴィッドさん指定の「イーストウェストスタジオ」が持つヴィンテージ機材や音響特性がもたらすウォームでヒューマンライクな音色が楽曲を生き生きと彩ってくれるようであった。
また前回のレポートのキャプションでも紹介しているが、歴史あるスタジオのアコースティックな響きを生かした“リアンプ”と呼ぶ手法もこのミックスダウンの特徴となっている。
“リアンプ”とは、スタジオのメインブースに置かれたアクティブスピーカーへ特定の楽器の音を大音量で出力し、その残響音をマイクで拾うのだ。この手法で特に効果を発揮するのは打ち込み音であり、スタジオの響きを付加させることでいかにも生っぽいサウンドに仕上げることができるのである。
“スタジオ2”はレッド・ホット・チリ・ペッパーズが好んでドラム録音を行った環境であり、今回のミックスダウンでもドラムの音色を“リアンプ”によって整え、生々しいアコースティックな響きをもたらすことに繋がったのだ。
そして最後に本題であるマスタリング工程についてご紹介しよう。マスタリングはミックスダウンに続いてアメリカで実施されたが、場所はロサンゼルスとは真逆の東海岸、ポートランドにある「ゲートウェイ・マスタリング・スタジオ」で行われた。担当したマスタリングエンジニアは世界屈指の腕を持つボブ・ラドウィックさんだ。
今回のプロジェクトにおいてはストリングス・レコーディング、ミックスダウン、マスタリング、これらの各工程を世界的エンジニアと海外の理想的な環境を用いて最高のクオリティで完成させることが一つの目標でもあった。
その締めくくりとなるマスタリングをボブさんに依頼をしたのは、F.I.X.RECORDS社長&プロデューサーである下川直哉さんが以前からその音に惚れ込んでいたこと、さらにデヴィッドさんがミックスした『アナと雪の女王』のマスタリングも担当していることなど、様々な必然性が合致したことも理由となっている。
ボブさんは洋楽フリークにとって“神”ともいえる存在であり、エリック・クラプトンやポール・マッカートニー、ローリング・ストーンズ、クイーン、ジャーニー、デフ・レパード、ニルヴァーナ、ダフト・パンクなど、ロック系アーティストの名盤に数多く携わっている、まさに“マスタリング界のレジェンド”だ。
以前クイーンの96kHz/24bitマスタリング音源が配信された際、ボブさんにメールインタビューをお願いしたこともあるが(関連記事)、筆者自身もまたその高音質なマスタリングサウンドに惚れ込んでいる。
適度に引き締まった音像感と自然な空間表現。そしてほのかに艶を持ちながらしっとりと潤う質感。そうした複数の要素をバランス良くまとめ上げる絶妙なさじ加減がボブ氏の持ち味であり、SACDのマスタリングも数多くこなしていることも含め、F.I.X.RECORDSの目指すサウンドの方向性とも合致するのではないか。そうした期待は音が仕上がる前から持っていたが、完成したサウンドを耳にすると一つの理想形が音場に形成されるかの如く、凛としたボーカルとストリングスをはじめとする楽器の、粒立ち細かく、鮮やかに浮き立つ解像度の高い音像が目の前に展開する。
SACDでのリリースを検討していることもあり、DSDマスタリングが実施されたが、弾力ある低域の引き締まりと奥行き方向を含めた自然な音場展開も申し分ない。SACDはもちろん、ハイレゾ配信にも大いに期待が持てる仕上がりだ。まさに高音質なアニソンのお手本となる最高のレファレンス音源がここに誕生したといえるだろう。
次回はこの海外レコーディングプロジェクトを支えたキーパーソンの皆さんへのインタビューに加え、ロサンゼルスでのミックスダウンについて、もう少し踏み込んで解説したいと考えている。
■『うたわれるもの 偽りの仮面』 PV第二弾「オープニングアニメ」公開中!
タイトル:うたわれるもの 偽りの仮面
ジャンル:AVG+S・RPG
発売日:2015年9月24日発売予定
メーカー :アクアプラス
対応機種:PlayStation(R)4/PlayStation(R)3/PlayStation(R)Vita
価格:プレミアムエディション…9,800円(税別)
通常版…6,800円(税別)
ダウンロード版…6,000円(税別)
メディア:BD/PlayStation(R)Vitaカード
CERO:審査予定
(C)2015 AQUAPLUS
公式サイト
そしてこの度、プロジェクトの総仕上げともいえるマスタリング工程が完了。いよいよその全貌が明らかになってきた。今回はそのマスタリングの模様について、ダイジェスト的にレポートをお届けしたい。
まず前回ご紹介したレコーディング〜ミックスダウンまでの流れをまとめておこう。作中に用いられるボーカル曲はSuaraさんが担当しており、その楽曲たちのストリングス・パートを英・ロンドンの「アビー・ロード・スタジオ」“スタジオ2”でレコーディング。
この時のレコーディングエンジニアは『ロード・オブ・ザ・リング』『ハリーポッター』シリーズをはじめとしたハリウッドの大作を数多く手がける上級エンジニア、サイモン・ローズさんが担当した。
この時の録音に参加したストリングスの面々も前述した映画のサウンドトラック収録に携わっているそうで、精緻でありながらも躍動感、抑揚の豊かさも備わったリッチな演奏を聴かせてくれる。さらにサイモンさんの巧みなマイクアレンジとスタジオの持つ独特な残響感も相まって、濃密で重厚感あるストリングスサウンドを得ることができたのだ。
続くミックスダウンは米・ロサンゼルスに場を移し、ハリウッドの中心地にある「イーストウェストスタジオ」“スタジオ2”にて行われた。ミキシングエンジニアは『アナと雪の女王』のサントラや主題歌も担当しているデヴィッド・バウチャーさんだ。
数々のディズニー映画のサントラ製作で辣腕をふるってきたデヴィッドさんのサウンドは、主題であるボーカルを鮮明に際立たせ、豪華なオーケストラにも負けない存在感のあるミックスとなる。このミックスのバランスがある意味アニソンらしさにも繋がる要素となっていることも興味深いが、デヴィッドさん指定の「イーストウェストスタジオ」が持つヴィンテージ機材や音響特性がもたらすウォームでヒューマンライクな音色が楽曲を生き生きと彩ってくれるようであった。
また前回のレポートのキャプションでも紹介しているが、歴史あるスタジオのアコースティックな響きを生かした“リアンプ”と呼ぶ手法もこのミックスダウンの特徴となっている。
“リアンプ”とは、スタジオのメインブースに置かれたアクティブスピーカーへ特定の楽器の音を大音量で出力し、その残響音をマイクで拾うのだ。この手法で特に効果を発揮するのは打ち込み音であり、スタジオの響きを付加させることでいかにも生っぽいサウンドに仕上げることができるのである。
“スタジオ2”はレッド・ホット・チリ・ペッパーズが好んでドラム録音を行った環境であり、今回のミックスダウンでもドラムの音色を“リアンプ”によって整え、生々しいアコースティックな響きをもたらすことに繋がったのだ。
そして最後に本題であるマスタリング工程についてご紹介しよう。マスタリングはミックスダウンに続いてアメリカで実施されたが、場所はロサンゼルスとは真逆の東海岸、ポートランドにある「ゲートウェイ・マスタリング・スタジオ」で行われた。担当したマスタリングエンジニアは世界屈指の腕を持つボブ・ラドウィックさんだ。
今回のプロジェクトにおいてはストリングス・レコーディング、ミックスダウン、マスタリング、これらの各工程を世界的エンジニアと海外の理想的な環境を用いて最高のクオリティで完成させることが一つの目標でもあった。
その締めくくりとなるマスタリングをボブさんに依頼をしたのは、F.I.X.RECORDS社長&プロデューサーである下川直哉さんが以前からその音に惚れ込んでいたこと、さらにデヴィッドさんがミックスした『アナと雪の女王』のマスタリングも担当していることなど、様々な必然性が合致したことも理由となっている。
ボブさんは洋楽フリークにとって“神”ともいえる存在であり、エリック・クラプトンやポール・マッカートニー、ローリング・ストーンズ、クイーン、ジャーニー、デフ・レパード、ニルヴァーナ、ダフト・パンクなど、ロック系アーティストの名盤に数多く携わっている、まさに“マスタリング界のレジェンド”だ。
以前クイーンの96kHz/24bitマスタリング音源が配信された際、ボブさんにメールインタビューをお願いしたこともあるが(関連記事)、筆者自身もまたその高音質なマスタリングサウンドに惚れ込んでいる。
適度に引き締まった音像感と自然な空間表現。そしてほのかに艶を持ちながらしっとりと潤う質感。そうした複数の要素をバランス良くまとめ上げる絶妙なさじ加減がボブ氏の持ち味であり、SACDのマスタリングも数多くこなしていることも含め、F.I.X.RECORDSの目指すサウンドの方向性とも合致するのではないか。そうした期待は音が仕上がる前から持っていたが、完成したサウンドを耳にすると一つの理想形が音場に形成されるかの如く、凛としたボーカルとストリングスをはじめとする楽器の、粒立ち細かく、鮮やかに浮き立つ解像度の高い音像が目の前に展開する。
SACDでのリリースを検討していることもあり、DSDマスタリングが実施されたが、弾力ある低域の引き締まりと奥行き方向を含めた自然な音場展開も申し分ない。SACDはもちろん、ハイレゾ配信にも大いに期待が持てる仕上がりだ。まさに高音質なアニソンのお手本となる最高のレファレンス音源がここに誕生したといえるだろう。
次回はこの海外レコーディングプロジェクトを支えたキーパーソンの皆さんへのインタビューに加え、ロサンゼルスでのミックスダウンについて、もう少し踏み込んで解説したいと考えている。
■『うたわれるもの 偽りの仮面』 PV第二弾「オープニングアニメ」公開中!
タイトル:うたわれるもの 偽りの仮面
ジャンル:AVG+S・RPG
発売日:2015年9月24日発売予定
メーカー :アクアプラス
対応機種:PlayStation(R)4/PlayStation(R)3/PlayStation(R)Vita
価格:プレミアムエディション…9,800円(税別)
通常版…6,800円(税別)
ダウンロード版…6,000円(税別)
メディア:BD/PlayStation(R)Vitaカード
CERO:審査予定
(C)2015 AQUAPLUS
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