公開日 2016/05/25 15:24
ケンブリッジオーディオの新コンセプトを体現する「CXシリーズ」を藤岡誠が分析する
藤岡誠のオーディオワンショット<第11回>
藤岡誠が自身の推薦するオーディオ機器、関連アクセサリー、あるいはコンポーネントの組合せ、またある時は新技術や様々な話題など、毎回自由なテーマで進めていく本連載。今回はCambridge Audio(ケンブリッジオーディオ)が新たなコンセプトとして市場導入した「CXシリーズ」を紹介する。
ケンブリッジオーディオは、昨年2015年11月から新企画の「CXシリーズ」を市場導入した。同シリーズは現時点で、2機種のDAC内蔵型インテグレーテッドアンプと1機種のCDトランスポート、そしてネットワークプレーヤー及びユニバーサル型ブルーレイプレーヤーが各1機種、合計5機種がラインアップされている。価格は例によってすべてオープン価格が設定され、全機種の仕上げはシルバーとブラックの2仕様がある。
このCXシリーズで私が注目するのは、シリーズ内に“CDプレーヤー”ではなく“CDトランスポート”がラインアップされていることだ。CXシリーズに限らず、近頃のプリメイン(インテグレーテッド)アンプは、PCオーディオやネットワークオーディオなど、デジタルオーディオデータによる音楽メディアの急激な普及を意識してDACやUSB-DACを内蔵したタイプが多くなっている。この方向性は今後、その良し悪しや好むと好まざるとに関わらず、世界的に継続、普及していくことは確実だ。
その一方、CDを代表とする光メディアの再生も抜かりはないようで、CXシリーズの場合は前述したように“プレーヤー”ではなくDACやオーディオ回路が省かれた“CDトランスポート”で対応。シリーズ内で展開する2機種のDAC内蔵アンプとスムーズなインターフェースを可能としている。これまでのように、汎用性を意図して普通のCDプレーヤーをラインナップするのではなく、トランスポートをシリーズ内に採り込んだことは、DAC内蔵アンプの機能を無駄なく活用するという意味からいっても合理的だ。また、シリーズにおけるコスト面でも有利だろう。
それでは以下、CXシリーズにおける2機種のDAC内蔵アンプとCDトランスポートをシンプルに紹介する。なお、ネットワークプレーヤーとユニバーサル型ブルーレイプレーヤーについては輸入元ののナスペック社のウェブサイトなどを参照してほしい。
CXシリーズで展開される「CXA60」(オープン価格・市場想定価格120,000円前後)と「CXA80」(オープン価格・市場想定価格160,000円前後)は、何れもDAC内蔵型インテグレーテッドアンプだ。パネルデザイン、外形寸法はまったく共通。重量はCXA80が僅か400gほど重い。その割に価格差が4万円と大きいので、何処かに大きな差額分の違いがありそうだと探ると出力量が違う。
CXA60の60W/ch(8Ω)に対して、CXA80は80W/ch(8Ω)である。「出力素子の構成の違いではないか?」と思い、内部を点検するとパワーICを採用した出力段の規模と構成は同一だ。出力量の差異は、電源回路の違いにあった。何れもトロイドコア型電源トランスが使われているが、CXA60のそれが一般的であるのに対し、CXA80は電源トランスの2次側が左右ch独立巻線で整流回路も左右独立構成になっている。その結果、CXA80の左右出力段への電源供給の効率が向上し出力を大きく取り出せる要因になっているわけだ。この電源回路の違いは、最終的な音質・音調にもプラス方向に働き、CXA60が一般的な方向性の聴こえであるのに対し、CXA80は固有のキャラクターが抑えられ広帯域に亘ってスムーズで空間再現性も良好。個人的にはCXA80をお薦めしたい。
機能面での相違は、CXA60はDACだけの内蔵だがCXA80はUSB-DACも内蔵。PCと接続して今日的プログラムソースを楽しむことができる。なお、別売のBluetoothレシーバー「BT100」でスマートフォンやタブレットからの音楽データ、ファイルを受信して楽しめる入力端子は両機共に装備している。これはいかにも今日的機能と捉えるべきだろう。
さらに共通の機能は、アルプス社製のモーター駆動方式可変抵抗器による音量調整、トーン/バランスコントロールやヘッドフォン端子、プリアウト端子、サブウーファー出力の付属など。付属リモコンはCXCにも対応。
アナログ入力はRCA端子×4(CXA80には専用スイッチ切換えでXLR端子×1に対応)、デジタル入力はRCA端子×1とTOS端子×2、そしてCXA80にはBタイプのUSB-DAC入力がある。
「CXC」(オープン価格・市場想定価格80,000円前後)はCD専用トランスポート。ここでは省略するが、独自の回転制御技術「S3 Servo」を採用し高精度なデータ読み取りを行う。
デザインの整合性を考慮するとCXシリーズ内の「CXA60」や「CXA80」とベストマッチングするが、当然、他社のDAC内蔵型アンプと問題なく組合せが可能。背面のデジタル出力はRCA端子×1、TOS端子×1。パネルは主要操作ボタンのみで、細かな機能操作は付属リモコンで行う。
(藤岡誠)
ケンブリッジオーディオは、昨年2015年11月から新企画の「CXシリーズ」を市場導入した。同シリーズは現時点で、2機種のDAC内蔵型インテグレーテッドアンプと1機種のCDトランスポート、そしてネットワークプレーヤー及びユニバーサル型ブルーレイプレーヤーが各1機種、合計5機種がラインアップされている。価格は例によってすべてオープン価格が設定され、全機種の仕上げはシルバーとブラックの2仕様がある。
このCXシリーズで私が注目するのは、シリーズ内に“CDプレーヤー”ではなく“CDトランスポート”がラインアップされていることだ。CXシリーズに限らず、近頃のプリメイン(インテグレーテッド)アンプは、PCオーディオやネットワークオーディオなど、デジタルオーディオデータによる音楽メディアの急激な普及を意識してDACやUSB-DACを内蔵したタイプが多くなっている。この方向性は今後、その良し悪しや好むと好まざるとに関わらず、世界的に継続、普及していくことは確実だ。
その一方、CDを代表とする光メディアの再生も抜かりはないようで、CXシリーズの場合は前述したように“プレーヤー”ではなくDACやオーディオ回路が省かれた“CDトランスポート”で対応。シリーズ内で展開する2機種のDAC内蔵アンプとスムーズなインターフェースを可能としている。これまでのように、汎用性を意図して普通のCDプレーヤーをラインナップするのではなく、トランスポートをシリーズ内に採り込んだことは、DAC内蔵アンプの機能を無駄なく活用するという意味からいっても合理的だ。また、シリーズにおけるコスト面でも有利だろう。
それでは以下、CXシリーズにおける2機種のDAC内蔵アンプとCDトランスポートをシンプルに紹介する。なお、ネットワークプレーヤーとユニバーサル型ブルーレイプレーヤーについては輸入元ののナスペック社のウェブサイトなどを参照してほしい。
CXシリーズで展開される「CXA60」(オープン価格・市場想定価格120,000円前後)と「CXA80」(オープン価格・市場想定価格160,000円前後)は、何れもDAC内蔵型インテグレーテッドアンプだ。パネルデザイン、外形寸法はまったく共通。重量はCXA80が僅か400gほど重い。その割に価格差が4万円と大きいので、何処かに大きな差額分の違いがありそうだと探ると出力量が違う。
CXA60の60W/ch(8Ω)に対して、CXA80は80W/ch(8Ω)である。「出力素子の構成の違いではないか?」と思い、内部を点検するとパワーICを採用した出力段の規模と構成は同一だ。出力量の差異は、電源回路の違いにあった。何れもトロイドコア型電源トランスが使われているが、CXA60のそれが一般的であるのに対し、CXA80は電源トランスの2次側が左右ch独立巻線で整流回路も左右独立構成になっている。その結果、CXA80の左右出力段への電源供給の効率が向上し出力を大きく取り出せる要因になっているわけだ。この電源回路の違いは、最終的な音質・音調にもプラス方向に働き、CXA60が一般的な方向性の聴こえであるのに対し、CXA80は固有のキャラクターが抑えられ広帯域に亘ってスムーズで空間再現性も良好。個人的にはCXA80をお薦めしたい。
機能面での相違は、CXA60はDACだけの内蔵だがCXA80はUSB-DACも内蔵。PCと接続して今日的プログラムソースを楽しむことができる。なお、別売のBluetoothレシーバー「BT100」でスマートフォンやタブレットからの音楽データ、ファイルを受信して楽しめる入力端子は両機共に装備している。これはいかにも今日的機能と捉えるべきだろう。
さらに共通の機能は、アルプス社製のモーター駆動方式可変抵抗器による音量調整、トーン/バランスコントロールやヘッドフォン端子、プリアウト端子、サブウーファー出力の付属など。付属リモコンはCXCにも対応。
アナログ入力はRCA端子×4(CXA80には専用スイッチ切換えでXLR端子×1に対応)、デジタル入力はRCA端子×1とTOS端子×2、そしてCXA80にはBタイプのUSB-DAC入力がある。
「CXC」(オープン価格・市場想定価格80,000円前後)はCD専用トランスポート。ここでは省略するが、独自の回転制御技術「S3 Servo」を採用し高精度なデータ読み取りを行う。
デザインの整合性を考慮するとCXシリーズ内の「CXA60」や「CXA80」とベストマッチングするが、当然、他社のDAC内蔵型アンプと問題なく組合せが可能。背面のデジタル出力はRCA端子×1、TOS端子×1。パネルは主要操作ボタンのみで、細かな機能操作は付属リモコンで行う。
(藤岡誠)