公開日 2017/07/11 10:01

【実験】ダイソー100円グッズでオーディオの音はどれだけ良くなる? − 剣山登場編 −

評論家が本気で検証


多くのスピーカーやアンプには、「スパイク」と呼ばれる先の尖った脚が装着されている製品が多いことにお気づきであろう。スパイクというジャンルは、アクセサリー業界でも今や花形の印象が強いが、その概念的な元祖をたどると日本へ行き着く。

オーディオ業界にこの人ありというべき鬼才、江川三郎というオーディオ評論家の大先達がおられた。江川氏が剣山を鞄へ詰めて欧米を旅し、分厚いじゅうたんの上へスピーカーを置いて音を出していた現地の人々に「この剣山をじゅうたんへ打ち込んで、床下地へ直結させてスピーカーをセットしなさい」と説かれたのは、もう30年以上も前のことだ。

じゅうたんによる音の曖昧さが消えたスピーカーから飛び出してきたサウンドに吃驚した欧米人は数知れず、それから程なくして、1980年代の半ば頃だったか、日本へ「ティップ・トゥー」というインシュレーターが輸入されてきた。これが「スパイク」というインシュレーターの元祖とされる製品である。

ならば、スパイクのご先祖様というべき剣山の音を、今改めて聴いておくのは無駄ではあるまい。そう考えて、編集部を説得して8個も買い込んできたというわけだ。

ところで、スパイクは「どんな素材で受けるか」次第で生きも死にもする。剣山も同じことである。それで、まず柔らかい素材の代表というべき「やわらか積み木」で支えてみることとした。音は決して悪くないが、剣山のイメージよりも積み木のキャラクターが勝ってしまっている。ソフトでたっぷりしたサウンドの方向で、「うん、これなら別に剣山はなくてもかまわないな」という印象だ。

上からスピーカー、剣山、やわらか積み木、スピーカースタンド

続いては、質の良い木材で受けることとする。テストでは山本音響工芸のスタンドを使っているのだが、その天板には自社のスパイクを受けるための落とし込みが設けられていて、剣山がその穴へピッタリと収まったので、そのまま聴いてみた次第である。スタンドの材質は北海道産のアサダ桜、非常に堅く響きのいい材質である。

スタンドのスパイク受けに剣山がぴったりハマった

音が出た瞬間、「これが同じ剣山か!?」と思わず天を仰いだ。素晴らしい切れ味と抜けの良さ、輝かしくハイスピードに鳴り渡るサウンドは、100円ショップの剣山を挟んでいるとはにわかに信じられない。もちろん、これは大変な高品位のスタンドがあって初めて成り立つものではあるが、改めて剣山の、というよりスパイクというジャンル全体の大いなる可能性を垣間見ることができた。

やわらか積み木には穴があいた

まだまだ試した製品は残っているが、つい筆が進んでしまったため、前編はここまで。次回のキーワードは「有田焼」「ペット用マット」「赤ちゃんボール」「」。そして100円ショップ・オーディオアクセサリーの「コスパ賞」を大発表したい。

(炭山アキラ)

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