公開日 2019/08/08 06:00
耳を塞がなくてもクリアな高音質!スポーツにも使える骨伝導イヤホン、AfterShokz「Aeropex」レビュー
【特別企画】300以上の特許で骨伝導技術を革新
スポーツ好きにとって“音楽”は欠かせないスパイス。しかし、空気の振動で音を伝える従来型のイヤホンでは、周囲の音が聴こえなくなるため、屋外でそのまま利用するのは危険も伴う。そこで注目したい技術が、骨を通して伝わる音(骨導音)を聴く『骨伝導』だ。この方式は物理的に耳を塞がず音を出すため、突然誰かに話しかけられても、背後から自動車が近づいてきても、すぐに気付くことができる。
その骨伝導技術で意気盛んなイヤホンブランドが「AfterShokz(アフターショックス)」だ。2011年に米ニューヨーク州シラキュースで誕生して以来、骨伝導による高音質を実現すべく技術開発に力を注ぎ、2019年現在、世界各国で獲得した特許は300を超える。
たとえば、振動を巧みに制御して一般的なイヤホンに匹敵するダイナミックレンジを実現する「Premium Pitch+」や、骨伝導の構造上発生しがちな音漏れを最小限に抑える「Leak Slayer」も、AfterShokzの独自技術だ。かつて骨伝導によるHi-Fiサウンドは難しいとされていたが、技術革新はその定説を覆した。
最新モデル「Aeropex(エアロペクス)」は、2012年発売のBluezから数えて第6世代となる骨伝導イヤホン。Premium Pitch+の進化版にあたる振動制御技術「Premium Pitch 2+」を新たに採用している。
皮膚に接する部分に内蔵されたトランスデューサー(特許取得済)が、頬骨を伝わる微弱な振動を生み、それが鼓膜を迂回して内耳に移動することで音として認識される仕組みは同様だが、内部構造を見直すことで、より歪みの少ないサウンドを実現した。さらに前世代のAfterShokz Airに比べ、30%の小型化と15%の軽量化を実現し、さらにスポーツ向けに最適化されている。
音漏れのさらなる抑制も重要な進化点だ。従来のLeak Slayer技術は音漏れ防止用の“孔”を必要としていたが、Aeropexでは、孔を不要とした新開発の音漏れ防止構造を採用。新構造ではAfterShokz Airに比べて音漏れが50%も低減した。
孔が無くなったことで防塵防水性能も向上しているが、理由はそれだけではない。外装素材としてナノテクノロジーコーティングと防水ゴム製シール材を採用し、性能向上を徹底したのだ。その結果、防塵性能は「粉塵が内部に侵入しない」という最高ランクの第6等級、防水性能も「一定の水圧で一定時間水中に浸けても有害な影響がない」という第7等級を担保し、「IP67」という高い水準を満たした。また連続再生も最大8時間とタフネス仕様で、スポーツでの応用範囲が一気に広がる。
Aeropexは骨伝導イヤホンなだけに、装着方法は独特だ。左右ユニットを耳に掛けると、振動板のある先端部分が耳穴近くの出っ張り(耳珠)付近にあてがわれる形になり、適度な側圧により固定される。ヘッドバンド部分が後頭部に回り込むスタイルだが、約26gという軽さもあり負担は感じない。
実際に装着してみると、この26gのありがたみがわかる。前世代のAfterShokz Airは約30gと、単純な引き算ではわずか4gの差だが、小刻みな体の動きが続くランニングではスタートから5分も経たないうちに先端部分のズレの違いに気付く。この点だけでも、スポーツ利用が主要用途のイヤホンとしては大金星だ。
音質についても、着実な前進を感じる。小さな振動で頬骨にしっかり伝わる(聴こえる)ように、顔に対して30度の傾きになるよう設計された振動板の効果もあってか、AfterShokz Airに比べて音の情報量が多い。
ギターのカッティングにしてもドラムのフィルインにしても、輪郭が滲むことなく鮮明に描かれる。中高域の解像感は、空気振動で音を伝える一般的なイヤホンの方がやはり優位だが、「骨伝導でHi-Fiは難しい」という先入観を払拭するには、十分な水準に到達している。
もちろん、音質に関して一般的なイヤホンを上回る部分もある。なんといっても、開放的なところがいい。聴覚が音楽に占領されないから、音楽が“環境音に上乗せ”される自然な聴き方ができるし、運動が続くにつれ激しくなる自分の息づかいもナチュラルに感じられる。鼓膜付近に異物がないのだから当然と思えるかもしれないが、実際に体験してみなければ気付きにくいことだ。このように自然体で音楽と付き合えるところが骨伝導イヤホンの醍醐味であり、新しいイヤホンの楽しみ方といえるだろう。
振動板の位置で音の傾向が変わりやすいため、装着はややセンシティブ。またEDMのような低域の量感が豊富な音楽ではくすぐったく感じることもあるだろう。そういった独特な部分もあるが、骨伝導ならではの開放的なサウンドは、一般的なイヤホンでは味わえない。屋外をランニングする時でも安全に音楽を聴きたい、耳から入る情報も損なわずにスポーツを楽しみたいという時には、Aeropexは唯一無二のイヤホンとなるはずだ。
※本記事は「PREMIUM HEADPHONE GUIDE<2019夏版>」所収記事を転載したものです
(協力:フォーカルポイント)
その骨伝導技術で意気盛んなイヤホンブランドが「AfterShokz(アフターショックス)」だ。2011年に米ニューヨーク州シラキュースで誕生して以来、骨伝導による高音質を実現すべく技術開発に力を注ぎ、2019年現在、世界各国で獲得した特許は300を超える。
たとえば、振動を巧みに制御して一般的なイヤホンに匹敵するダイナミックレンジを実現する「Premium Pitch+」や、骨伝導の構造上発生しがちな音漏れを最小限に抑える「Leak Slayer」も、AfterShokzの独自技術だ。かつて骨伝導によるHi-Fiサウンドは難しいとされていたが、技術革新はその定説を覆した。
最新モデル「Aeropex(エアロペクス)」は、2012年発売のBluezから数えて第6世代となる骨伝導イヤホン。Premium Pitch+の進化版にあたる振動制御技術「Premium Pitch 2+」を新たに採用している。
皮膚に接する部分に内蔵されたトランスデューサー(特許取得済)が、頬骨を伝わる微弱な振動を生み、それが鼓膜を迂回して内耳に移動することで音として認識される仕組みは同様だが、内部構造を見直すことで、より歪みの少ないサウンドを実現した。さらに前世代のAfterShokz Airに比べ、30%の小型化と15%の軽量化を実現し、さらにスポーツ向けに最適化されている。
音漏れのさらなる抑制も重要な進化点だ。従来のLeak Slayer技術は音漏れ防止用の“孔”を必要としていたが、Aeropexでは、孔を不要とした新開発の音漏れ防止構造を採用。新構造ではAfterShokz Airに比べて音漏れが50%も低減した。
孔が無くなったことで防塵防水性能も向上しているが、理由はそれだけではない。外装素材としてナノテクノロジーコーティングと防水ゴム製シール材を採用し、性能向上を徹底したのだ。その結果、防塵性能は「粉塵が内部に侵入しない」という最高ランクの第6等級、防水性能も「一定の水圧で一定時間水中に浸けても有害な影響がない」という第7等級を担保し、「IP67」という高い水準を満たした。また連続再生も最大8時間とタフネス仕様で、スポーツでの応用範囲が一気に広がる。
Aeropexは骨伝導イヤホンなだけに、装着方法は独特だ。左右ユニットを耳に掛けると、振動板のある先端部分が耳穴近くの出っ張り(耳珠)付近にあてがわれる形になり、適度な側圧により固定される。ヘッドバンド部分が後頭部に回り込むスタイルだが、約26gという軽さもあり負担は感じない。
実際に装着してみると、この26gのありがたみがわかる。前世代のAfterShokz Airは約30gと、単純な引き算ではわずか4gの差だが、小刻みな体の動きが続くランニングではスタートから5分も経たないうちに先端部分のズレの違いに気付く。この点だけでも、スポーツ利用が主要用途のイヤホンとしては大金星だ。
音質についても、着実な前進を感じる。小さな振動で頬骨にしっかり伝わる(聴こえる)ように、顔に対して30度の傾きになるよう設計された振動板の効果もあってか、AfterShokz Airに比べて音の情報量が多い。
ギターのカッティングにしてもドラムのフィルインにしても、輪郭が滲むことなく鮮明に描かれる。中高域の解像感は、空気振動で音を伝える一般的なイヤホンの方がやはり優位だが、「骨伝導でHi-Fiは難しい」という先入観を払拭するには、十分な水準に到達している。
もちろん、音質に関して一般的なイヤホンを上回る部分もある。なんといっても、開放的なところがいい。聴覚が音楽に占領されないから、音楽が“環境音に上乗せ”される自然な聴き方ができるし、運動が続くにつれ激しくなる自分の息づかいもナチュラルに感じられる。鼓膜付近に異物がないのだから当然と思えるかもしれないが、実際に体験してみなければ気付きにくいことだ。このように自然体で音楽と付き合えるところが骨伝導イヤホンの醍醐味であり、新しいイヤホンの楽しみ方といえるだろう。
振動板の位置で音の傾向が変わりやすいため、装着はややセンシティブ。またEDMのような低域の量感が豊富な音楽ではくすぐったく感じることもあるだろう。そういった独特な部分もあるが、骨伝導ならではの開放的なサウンドは、一般的なイヤホンでは味わえない。屋外をランニングする時でも安全に音楽を聴きたい、耳から入る情報も損なわずにスポーツを楽しみたいという時には、Aeropexは唯一無二のイヤホンとなるはずだ。
※本記事は「PREMIUM HEADPHONE GUIDE<2019夏版>」所収記事を転載したものです
(協力:フォーカルポイント)