公開日 2022/06/22 06:30
ウェスタンエレクトリック最新「300B」の音楽表現力は? トライオードの「TRZ-300W」でチェック!
【特別企画】最新の設備で生まれ変わった「300B」
トライオードの創業25周年記念モデルとして2019年に発売された「TRZ-300W」。4本の300Bでパラシングルで駆動する、まさにトライオードの代表作と言えるアンプである。今回は、このアンプに最新の米国ウェスタンエレクトリック社製「WE300B」を組み合わせ、その音楽表現力を探ってみた。
トライオードの原点は、創業年1994年に発表された直熱三極管の銘球300Bを搭載した一体型アンプ「VP-300BD」にあるという。本機は2016年まで同社を象徴する製品として、ロングセラーを続けてきた。
今回取り上げるTRZ-300Wは、トライオード創立25周年記念モデルとして送り出された製品だ。前述のVP-300BDと同じように4本の300Bを使ったA級パラシングル構成を受け継ぎつつ、筐体や全般的なレイアウト、トランスなどの見直しを図り、同社の新しい象徴となるべく設計・開発された。
本機は300Bの持つ透明で繊細、芳醇な響きを引き出しながら、現代的な数多くのスピーカーシステムも十分にドライブ可能なパワーを実現すべく、A級パラシングルの出力段を採用し、20W×2(8Ω)の出力を得ている。そのパワーを支える電源部には大型トロイダル・トランスを搭載し、整流回路には応答が早く損失の少ないSiCショットキーバリア整流ダイオードを採用している。この整流回路と大型トロイダル・トランスの相乗効果で、効率良く強力でレスポンスの良い電源供給を実現している。
直熱三極管アンプには、100V電源周波数の50Hzもしくは60Hzの音が直接音楽信号に載るハムノイズが発生する。従来の直熱三極管アンプでは、ハムバランサーを用いた手動式の回路でハムノイズをキャンセルしていたが、本機は独自のTHC(トライオード・ハム・キャンセリング)回路を搭載してメンテナンスフリーとしている。
使用真空管を交換した時や長期にわたって使用した場合、真空管を最適な状態で動作させるためにバイアス調整が必要になる。フロントパネル中央に装備したバイアス調整用メーターでバイアス電流を確認しながら、トップパネルに備えたバイアス・セレクターとバイアス調整ボリュームを使って簡単にバイアス電流の調整が行える。
デザイン面では、シャーシ前面に4本の300Bが並び、後方に大型トランス3基が並ぶ伝統的なレイアウトを採っている。その大型トランスの天面にはアルミ切削加工された8mm厚のトップ・プレートが装着されている。これによりトランスの振動低減と放熱効果を高めている。
また、一体型アンプだが簡単な操作でパワーアンプとして使うことができる。リアパネルに備えたメイン・イン入力端子にプリアンプの出力を接続し、その隣にあるON/OFFスイッチONにすることで入力切り替えと、ボリュームをバイパスし直接メインアンプ回路に入力することになる。
資料では回路構成の詳細は発表されていないが、初段が2本の12AX7によるSRPPでカソード結合位相反転のドライブ段が12AU7の並列接続というオーソドックスな構成ではないかと思われる。
真空管式アンプながらリモコンが付属し、リスニング・ポジションから入力切り替えと音量調整が可能になっている。そしてMM型カートリッジに対応したフォノステージ回路を搭載しているのも親切な配慮といえるだろう。
入力端子はフォノ入力1系統、ライン系RCA端子4系統、そして前述のメイン・イン端子を装備しているので多くのソース系コンポーネントで300Bのサウンドを楽しむことができる。出力管300BにWEオリジナルを思わせる高音質な「PSVANE WE300B」搭載のヴァージョンも用意されている。
『ジュビレーション』(八城邦義プロジェクト)を聴くと、真空管式アンプながら十分なSN比が確保され、DSDマスターの持つ情報量をスポイルせずに忠実なサウンドが構築される。トロンボーンの低音部に仄かな温もりと伸びやかさが感じられ、早いパッセージのフレーズに滑らかさがあるのは真空管式ならではと思える。ダイレクト2トラック録音ならではと思える鮮度の高いサウンドでアドリブ・ソロが生き生きと再現された。
業務用機器を使ってアナログ・リマスタリングされたグランドスラムレコーズの『新世界より』(ケルテス指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団)は、大音量部でも安定したサウンドが得られ、弱音部との対比も正確に再現される。20Wの出力ではあるが、いつもより少し大き目な音量で聴いてもパワー不足とは感じられなかったので、多くの音楽ファンも特に不満を覚えることなく300Bの音を堪能できるだろう。高音弦楽器の繊細感や美しいハーモニーも自然に表現され、ティンパニの打撃音などに反応の良さが感じられる。
次に出力管をウェスタンエレクトリックの「WE300B」に替えて聴いてみる。
現在のウェスタンエレクトリックは、ジョージア州ロスヴィルに新工場を設立。最新の設備を導入して真空管の製造を行っている。これまでの復刻モデルなどは、プレートのコーティングにカーボンを用いていたが、新しいWE300Bは、熱伝導に優れたグラフェンを採用し、高い真空度を確保しながら長寿命を狙った設計になっているという。
『ジュビレーション』を聴くと全体的に整然とした響きとなり、5人のアーティストのまとまりが良くなったように感じる。タイトル曲のエンディングのシンバルの余韻が鮮明になる。そしてトロンボーンのソロチェンジの合間の小音量部分の静けさが増しバックのピアノ・トリオの音像がクリアになるとともにフロアタムやキックドラムのショットがスムーズに立ち上がる。
『ロイヤル・ジャム』(クルセイダーズ)では、ホールの空間が正確に再現され、クルセイダーズのバックにオーケストラが展開され弦楽器群の響きも瑞々しさを増してくる。二人のギタリストのソロでは使用楽器のサウンドの違いや奏者の演奏スタイルがリアルに表現されるなど、トータルにみて音楽表現力が向上してくるので、投資する価値は十分にあるように感じた。
(提供:トライオード)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.185』からの転載です
トライオードブランドを象徴する300Bのパラシングルアンプ
トライオードの原点は、創業年1994年に発表された直熱三極管の銘球300Bを搭載した一体型アンプ「VP-300BD」にあるという。本機は2016年まで同社を象徴する製品として、ロングセラーを続けてきた。
今回取り上げるTRZ-300Wは、トライオード創立25周年記念モデルとして送り出された製品だ。前述のVP-300BDと同じように4本の300Bを使ったA級パラシングル構成を受け継ぎつつ、筐体や全般的なレイアウト、トランスなどの見直しを図り、同社の新しい象徴となるべく設計・開発された。
本機は300Bの持つ透明で繊細、芳醇な響きを引き出しながら、現代的な数多くのスピーカーシステムも十分にドライブ可能なパワーを実現すべく、A級パラシングルの出力段を採用し、20W×2(8Ω)の出力を得ている。そのパワーを支える電源部には大型トロイダル・トランスを搭載し、整流回路には応答が早く損失の少ないSiCショットキーバリア整流ダイオードを採用している。この整流回路と大型トロイダル・トランスの相乗効果で、効率良く強力でレスポンスの良い電源供給を実現している。
直熱三極管アンプには、100V電源周波数の50Hzもしくは60Hzの音が直接音楽信号に載るハムノイズが発生する。従来の直熱三極管アンプでは、ハムバランサーを用いた手動式の回路でハムノイズをキャンセルしていたが、本機は独自のTHC(トライオード・ハム・キャンセリング)回路を搭載してメンテナンスフリーとしている。
使用真空管を交換した時や長期にわたって使用した場合、真空管を最適な状態で動作させるためにバイアス調整が必要になる。フロントパネル中央に装備したバイアス調整用メーターでバイアス電流を確認しながら、トップパネルに備えたバイアス・セレクターとバイアス調整ボリュームを使って簡単にバイアス電流の調整が行える。
高音弦楽器の繊細感や美しいハーモニーも自然に表現される
デザイン面では、シャーシ前面に4本の300Bが並び、後方に大型トランス3基が並ぶ伝統的なレイアウトを採っている。その大型トランスの天面にはアルミ切削加工された8mm厚のトップ・プレートが装着されている。これによりトランスの振動低減と放熱効果を高めている。
また、一体型アンプだが簡単な操作でパワーアンプとして使うことができる。リアパネルに備えたメイン・イン入力端子にプリアンプの出力を接続し、その隣にあるON/OFFスイッチONにすることで入力切り替えと、ボリュームをバイパスし直接メインアンプ回路に入力することになる。
資料では回路構成の詳細は発表されていないが、初段が2本の12AX7によるSRPPでカソード結合位相反転のドライブ段が12AU7の並列接続というオーソドックスな構成ではないかと思われる。
真空管式アンプながらリモコンが付属し、リスニング・ポジションから入力切り替えと音量調整が可能になっている。そしてMM型カートリッジに対応したフォノステージ回路を搭載しているのも親切な配慮といえるだろう。
入力端子はフォノ入力1系統、ライン系RCA端子4系統、そして前述のメイン・イン端子を装備しているので多くのソース系コンポーネントで300Bのサウンドを楽しむことができる。出力管300BにWEオリジナルを思わせる高音質な「PSVANE WE300B」搭載のヴァージョンも用意されている。
『ジュビレーション』(八城邦義プロジェクト)を聴くと、真空管式アンプながら十分なSN比が確保され、DSDマスターの持つ情報量をスポイルせずに忠実なサウンドが構築される。トロンボーンの低音部に仄かな温もりと伸びやかさが感じられ、早いパッセージのフレーズに滑らかさがあるのは真空管式ならではと思える。ダイレクト2トラック録音ならではと思える鮮度の高いサウンドでアドリブ・ソロが生き生きと再現された。
業務用機器を使ってアナログ・リマスタリングされたグランドスラムレコーズの『新世界より』(ケルテス指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団)は、大音量部でも安定したサウンドが得られ、弱音部との対比も正確に再現される。20Wの出力ではあるが、いつもより少し大き目な音量で聴いてもパワー不足とは感じられなかったので、多くの音楽ファンも特に不満を覚えることなく300Bの音を堪能できるだろう。高音弦楽器の繊細感や美しいハーモニーも自然に表現され、ティンパニの打撃音などに反応の良さが感じられる。
ウェスタンエレクトリック新型WE300Bの音を聴く
次に出力管をウェスタンエレクトリックの「WE300B」に替えて聴いてみる。
現在のウェスタンエレクトリックは、ジョージア州ロスヴィルに新工場を設立。最新の設備を導入して真空管の製造を行っている。これまでの復刻モデルなどは、プレートのコーティングにカーボンを用いていたが、新しいWE300Bは、熱伝導に優れたグラフェンを採用し、高い真空度を確保しながら長寿命を狙った設計になっているという。
『ジュビレーション』を聴くと全体的に整然とした響きとなり、5人のアーティストのまとまりが良くなったように感じる。タイトル曲のエンディングのシンバルの余韻が鮮明になる。そしてトロンボーンのソロチェンジの合間の小音量部分の静けさが増しバックのピアノ・トリオの音像がクリアになるとともにフロアタムやキックドラムのショットがスムーズに立ち上がる。
『ロイヤル・ジャム』(クルセイダーズ)では、ホールの空間が正確に再現され、クルセイダーズのバックにオーケストラが展開され弦楽器群の響きも瑞々しさを増してくる。二人のギタリストのソロでは使用楽器のサウンドの違いや奏者の演奏スタイルがリアルに表現されるなど、トータルにみて音楽表現力が向上してくるので、投資する価値は十分にあるように感じた。
(提供:トライオード)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.185』からの転載です