公開日 2024/03/08 14:10
ポークオーディオのスピーカーなら“5万円で始められる”、良い音のある暮らしを提案
【特別企画】手が届くモデルが豊富な人気の米ブランドに注目!
お求めやすい価格で本格的なサウンドを実現し、国内シェアを席巻している米国の人気スピーカーブランド「POLK AUDIO(ポークオーディオ)」。今回は豊富なラインナップから、“5万円”で購入できるスピーカーに的を絞り、そのサウンドを徹底検証した。オーディオ・ビギナーはもちろん、リビングなどにセカンドシステムを構築したいベテランまで、ぜひ注目してほしい。
昨今のオーディオ機器は、微に入り細を穿つ開発が進み、また資材が高騰していることから、価格がどうしても上がってしまいがちだ。特に若い人がピュアオーディオへ入ってこようとすると、それが大きなハードルになっているのではないかと、若干の危惧がある。
しかし、広いオーディオ界にはいまだ頼もしい「バジェットHi-Fi」機器が結構な数存在している。今回はそんな中から飛び切りの存在感を放つ、米ポークオーディオのスピーカーをいくつか聴いていこう。
「学生にも手の届きやすい本格ハイファイスピーカーを」というスローガンも掲げている同社のスピーカーは、編集部が提示する「ペア5万円以下」という無茶なテーマへ、何と4機種の製品を挙げることができる。ヘッドホンを中心に音楽を聴かれていて、スピーカーへも進出してみたいと思われている方などにも、まさに打ってつけなのではないか。
せっかくお求めやすいスピーカーを聴くのだ。CDプレーヤーとアンプもそれにふさわしいところから選ぶ。今回指名したのはデノン「DCD-600NE」と「PMA-600NE」のペアだ。セット12万円少々という価格で、極めて正統派なピュアオーディオをやっている、そんなシステムである。
ポークオーディオのベースグレードを構成する「Monitor XTシリーズ」は、おそらくシアター用途へ対応するためだろう、艶消しブラックのシンプルな佇まいを持ち、とにかく投入された物量が価格ランクからはあり得ないレベルのものである。
ユニットは巨大なマグネットを持ち、キャビネットも頑丈だ。ネットワーク素子は見た目こそ至って普通なものが並ぶが、その構成からどうやったらこんな瑞々しく勢いのある音が出せるのか、見当もつかないくらいだ。限られたコストの中で適した音質を有する素子の、膨大なデータベースを活用しているのだろうと推測する。
最初はMonitor XTシリーズより、「MXT15」を聴く。130mm口径の3層ラミネート・ウーファーとPET繊維による25mmソフトドーム・トゥイーターのバスレフ型である。
クラシックは、しっかりしたオケのスケール感と実体感あふれる音像を聴き取ることができる。目を閉じればとてもこのシンプルな外観のスピーカーから出ているとは思えない、鮮やかで軽やかなサウンドだ。
ジャズは冒頭のピアノに爽やかなエコーがついて聴こえるが、これはDCD-600NEの旨味だ。それをしっかり表現する本機は決して侮れない。ベースはさすがに若干膨らむ傾向があるが、それでも帯域バランスは良く、強烈なDレンジを持つこのソフトをどうにか自分のものにしてしまうのだから恐れ入った。ドラムスのパワーとスピードは一流である。
ポップスも難しいソフトで、幾層にも重ねられた音場成分をしっかり分解しないと魅力半減なのだが、何とこのクラスにして中々の音場構成を聴かせるのだから舌を巻く。声はちょっと歪みが加わると途端にガサガサしてしまうが、本機はしっかりと艶やかなハスキーボイスに描き出す。
続いて「MXT20」を聴こう。ウーファー口径が165mmと大型化され、それに伴って内容積も大幅拡大されただけに、低域方向が充実し、オケのスケールが数段上がる。
その分といっては何だが、バッフル面積が大きくなったこともあり、音場感はほんの僅かにMXT15へ軍配を挙げる。しかし、トータルではやはりMXT20がオケ録音の表現として優れているといってよいのではないか。ジャズも余裕が増した結果、MXT15よりもリラックスした鳴り方になり、MXT20の方が聴きやすいだろう。低域方向への伸びも大いに再現性の向上へ役立っていることが分かる。
ポップスは低域方向の下支えが増したせいだろう、あの複雑な音場構成がより深く伝わってくるようになった。一方、ヴォーカルはMXT15の方が若干上手く質感を伝える。ウーファーの口径とバッフル面積が小さいことが、効いているのではないかと推測している。
お次は「Signature Eliteシリーズ」を起用しよう。側面と天/底面の稜線が緩やかなラウンド構成とされているが、これは回折によるバッフルステップを軽減するとともに、キャビネットそのものの強度を大幅に高める働きを持つ。
ウーファーはマイカ(雲母)によって強化されたポリプロピレン・コーンで、トゥイーターは40kHzまで伸びたソフトドームである。背面や底面に搭載されたバスレフポートには、ホーンに似た形状で気流の流れを整えるディフューザーが装着され、それにより低域は3dBの能率アップを遂げたという。
まずは最小モデル、「ES10」を聴こう。100mm口径のウーファーと幅140mm、高さ220mm程度の極めて小さなキャビを持つ製品である。
MXT比でユニットがさらに強化され、キャビネットの剛性も高まっているせいであろう、クラシックは音像がグッと大地を踏みしめ、今回の4機種でも際立って小さな体躯から、朗々とオケが音楽を紡ぎ出しているさまが伺える。音場感の広さ濃厚さは逸品で、これはバッフル面積の小ささ、また側面のラウンド構成も効いているものと思われる。音の飛びはMonitor XTシリーズだが、コクがあって彫りの深い表現はSignature Eliteシリーズだな、という印象を持つ。
ジャズも音色が色鮮やかで芳醇で、ローエンド方向の量感こそさすがに限界はあるが、ベース帯域くらいまではこの大きさながら結構な余裕を持って鳴らし切るのがすごい。ポップスは音場のヒダを描き出すよりも楽器の音色や情感の濃さ、声の質感を克明に表現するタイプと見た。音場感も前後方向はかなり深い。面白い表現である。
しんがりは「ES15」だ。クラシックはウーファーとバッフルが大きくなっているにもかかわらず、オケの音像はグッと奥へ定位し、爽やかな空気の充満した広大な音場が耳をくすぐる。この表現力には少々驚いた。
ジャズはセットドラムがマッシブかつパワフルに鳴りまくり、ピアノは艶やか、ベースは抑制の効いた、言い替えると実に上質な音色で楽曲を支える。スピード感こそMonitor XTシリーズに一歩を譲るが、この表現はかなり上級のスピーカーとも渡り合えるのではないか。
ポップスはやはり複雑に絡む音場を読み解くよりも音像の実体感、ヴォーカリストが歌唱へ込めた情熱などを色濃く表現する。この音源自体がある種特殊な録音だからこういう評価になるが、一般的なポップス録音ならむしろこの持ち味が好評価となるに違いない。
今回改めて“安さ”という切り口でポークオーディオ製品を聴いたが、試聴の途中からそんなテーマなど忘れていた。立派なピュアオーディオ製品として、もっともっと注目されるべき製品群である。
<試聴したディスク>
ワルター・ジュスキント指揮/セントルイス交響楽団『ホルスト/組曲「惑星」』 (米VOX/CDX5105)
FLIM & THE BB'S『TRICYCLE』 (米dmp/GOLD9000)
ピーター・ガブリエル『ピーター・ガブリエル IV』 (英CHARISMA/PGCD4)
(提供:株式会社ディーアンドエムホールディングス)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.192』からの転載です
ペア5万円以下に4モデルがラインナップ
昨今のオーディオ機器は、微に入り細を穿つ開発が進み、また資材が高騰していることから、価格がどうしても上がってしまいがちだ。特に若い人がピュアオーディオへ入ってこようとすると、それが大きなハードルになっているのではないかと、若干の危惧がある。
しかし、広いオーディオ界にはいまだ頼もしい「バジェットHi-Fi」機器が結構な数存在している。今回はそんな中から飛び切りの存在感を放つ、米ポークオーディオのスピーカーをいくつか聴いていこう。
「学生にも手の届きやすい本格ハイファイスピーカーを」というスローガンも掲げている同社のスピーカーは、編集部が提示する「ペア5万円以下」という無茶なテーマへ、何と4機種の製品を挙げることができる。ヘッドホンを中心に音楽を聴かれていて、スピーカーへも進出してみたいと思われている方などにも、まさに打ってつけなのではないか。
せっかくお求めやすいスピーカーを聴くのだ。CDプレーヤーとアンプもそれにふさわしいところから選ぶ。今回指名したのはデノン「DCD-600NE」と「PMA-600NE」のペアだ。セット12万円少々という価格で、極めて正統派なピュアオーディオをやっている、そんなシステムである。
価格を超越しているサウンドの「Monitor XTシリーズ」
ポークオーディオのベースグレードを構成する「Monitor XTシリーズ」は、おそらくシアター用途へ対応するためだろう、艶消しブラックのシンプルな佇まいを持ち、とにかく投入された物量が価格ランクからはあり得ないレベルのものである。
ユニットは巨大なマグネットを持ち、キャビネットも頑丈だ。ネットワーク素子は見た目こそ至って普通なものが並ぶが、その構成からどうやったらこんな瑞々しく勢いのある音が出せるのか、見当もつかないくらいだ。限られたコストの中で適した音質を有する素子の、膨大なデータベースを活用しているのだろうと推測する。
最初はMonitor XTシリーズより、「MXT15」を聴く。130mm口径の3層ラミネート・ウーファーとPET繊維による25mmソフトドーム・トゥイーターのバスレフ型である。
クラシックは、しっかりしたオケのスケール感と実体感あふれる音像を聴き取ることができる。目を閉じればとてもこのシンプルな外観のスピーカーから出ているとは思えない、鮮やかで軽やかなサウンドだ。
ジャズは冒頭のピアノに爽やかなエコーがついて聴こえるが、これはDCD-600NEの旨味だ。それをしっかり表現する本機は決して侮れない。ベースはさすがに若干膨らむ傾向があるが、それでも帯域バランスは良く、強烈なDレンジを持つこのソフトをどうにか自分のものにしてしまうのだから恐れ入った。ドラムスのパワーとスピードは一流である。
ポップスも難しいソフトで、幾層にも重ねられた音場成分をしっかり分解しないと魅力半減なのだが、何とこのクラスにして中々の音場構成を聴かせるのだから舌を巻く。声はちょっと歪みが加わると途端にガサガサしてしまうが、本機はしっかりと艶やかなハスキーボイスに描き出す。
続いて「MXT20」を聴こう。ウーファー口径が165mmと大型化され、それに伴って内容積も大幅拡大されただけに、低域方向が充実し、オケのスケールが数段上がる。
その分といっては何だが、バッフル面積が大きくなったこともあり、音場感はほんの僅かにMXT15へ軍配を挙げる。しかし、トータルではやはりMXT20がオケ録音の表現として優れているといってよいのではないか。ジャズも余裕が増した結果、MXT15よりもリラックスした鳴り方になり、MXT20の方が聴きやすいだろう。低域方向への伸びも大いに再現性の向上へ役立っていることが分かる。
ポップスは低域方向の下支えが増したせいだろう、あの複雑な音場構成がより深く伝わってくるようになった。一方、ヴォーカルはMXT15の方が若干上手く質感を伝える。ウーファーの口径とバッフル面積が小さいことが、効いているのではないかと推測している。
コクがあって彫りの深い表現の「Signature Eliteシリーズ」
お次は「Signature Eliteシリーズ」を起用しよう。側面と天/底面の稜線が緩やかなラウンド構成とされているが、これは回折によるバッフルステップを軽減するとともに、キャビネットそのものの強度を大幅に高める働きを持つ。
ウーファーはマイカ(雲母)によって強化されたポリプロピレン・コーンで、トゥイーターは40kHzまで伸びたソフトドームである。背面や底面に搭載されたバスレフポートには、ホーンに似た形状で気流の流れを整えるディフューザーが装着され、それにより低域は3dBの能率アップを遂げたという。
まずは最小モデル、「ES10」を聴こう。100mm口径のウーファーと幅140mm、高さ220mm程度の極めて小さなキャビを持つ製品である。
MXT比でユニットがさらに強化され、キャビネットの剛性も高まっているせいであろう、クラシックは音像がグッと大地を踏みしめ、今回の4機種でも際立って小さな体躯から、朗々とオケが音楽を紡ぎ出しているさまが伺える。音場感の広さ濃厚さは逸品で、これはバッフル面積の小ささ、また側面のラウンド構成も効いているものと思われる。音の飛びはMonitor XTシリーズだが、コクがあって彫りの深い表現はSignature Eliteシリーズだな、という印象を持つ。
ジャズも音色が色鮮やかで芳醇で、ローエンド方向の量感こそさすがに限界はあるが、ベース帯域くらいまではこの大きさながら結構な余裕を持って鳴らし切るのがすごい。ポップスは音場のヒダを描き出すよりも楽器の音色や情感の濃さ、声の質感を克明に表現するタイプと見た。音場感も前後方向はかなり深い。面白い表現である。
しんがりは「ES15」だ。クラシックはウーファーとバッフルが大きくなっているにもかかわらず、オケの音像はグッと奥へ定位し、爽やかな空気の充満した広大な音場が耳をくすぐる。この表現力には少々驚いた。
ジャズはセットドラムがマッシブかつパワフルに鳴りまくり、ピアノは艶やか、ベースは抑制の効いた、言い替えると実に上質な音色で楽曲を支える。スピード感こそMonitor XTシリーズに一歩を譲るが、この表現はかなり上級のスピーカーとも渡り合えるのではないか。
ポップスはやはり複雑に絡む音場を読み解くよりも音像の実体感、ヴォーカリストが歌唱へ込めた情熱などを色濃く表現する。この音源自体がある種特殊な録音だからこういう評価になるが、一般的なポップス録音ならむしろこの持ち味が好評価となるに違いない。
今回改めて“安さ”という切り口でポークオーディオ製品を聴いたが、試聴の途中からそんなテーマなど忘れていた。立派なピュアオーディオ製品として、もっともっと注目されるべき製品群である。
<試聴したディスク>
ワルター・ジュスキント指揮/セントルイス交響楽団『ホルスト/組曲「惑星」』 (米VOX/CDX5105)
FLIM & THE BB'S『TRICYCLE』 (米dmp/GOLD9000)
ピーター・ガブリエル『ピーター・ガブリエル IV』 (英CHARISMA/PGCD4)
(提供:株式会社ディーアンドエムホールディングス)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.192』からの転載です