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公開日 2021/03/13 07:00

温水洗浄便座をオーディオ用電源で強化したら何が起きたか

驚きの結果が
風間雄介
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ある日、自宅で仕事をしていたら、同僚から「便座が会社に届きました」とDMが飛んできた。

恥ずかしい。プライベートなものをECサイトで買って、配送先を誤って会社にしてしまい、それを見られてしまった(しかも安いモデル)。

そんな私の気持ちを知ってか知らずか、同僚から「風間さん、ついに便座もレビューするんすか?」と追い打ちのDMが来た。

冗談と思ってスルーすべきところだろうが、のせられやすい性格ということもあり、温水洗浄便座を記事にするにはどうすれば良いか、真剣に考え始めた。

弊社の媒体が伝統的に得意としている、同一条件での一斉レビューを行うのは難しい。たくさん便器を用意し、それに便座を取り付け、一つ一つ座って検証していけば良いのだろうが、そんなに便器や便座が用意できない。

電源で何か変わるのでは? 蘇る炊飯器の記憶

思いついたのが「電源」だ。オーディオについて詳しくない方のためにかんたんに説明すると、我々オーディオに関わるメディアにとって、高音質を実現するために電源環境がとても重要というのは、もはや常識だ。

電源ボックスや電源ケーブルはもちろん、コンセントやブレーカーを交換したり、さらには電柱の上にある柱状トランスを、電柱ごと自宅に設置する「マイ柱」などというものも存在する。オーディオ機器は電気で動かすものだから、その大元である電源をクリーンにするのは、とても大切なことなのだ。

かつて私は、オーディオ用電源で炊いたご飯と、そうでないご飯の味を食べ比べる記事を書かせてもらったことがある。

私の感覚では、オーディオ用電源で炊いたご飯は、そうでないご飯に比べてはるかに美味しく、そのポテンシャルの高さに驚いた。そのとき実験に参加した弊社社員の多くが、オーディオ用電源ご飯の方が美味しいと答えたのも、克明に覚えている。

それでは、温水洗浄便座に、オーディオグレードの高品位な電源機器をつないでみたら、何かが起こるのだろうか。それとも何も起こらないのだろうか。

「何も起こるわけねーだろ」と普通は思うだろう。私もこの仕事をしてなかったら、即座にそう切り捨てるはずだ。

だが、オーディオ電源ご飯のおいしさを体験した身からすると、高品位な電源は、時に常識を越えてくることが記憶に刻まれている。

とはいえ今回は、つなぐ機器が温水洗浄便座である。さすがに何も変わらないだろうな…などと思いつつ、オーディオグレードの電源ボックスと電源ケーブルを用意し、実験してみた。

今回使ったのは光城精工の「Force Bar 3.1」という製品。既に販売終了しているが、後継機種が出ている

まずは基準となる状態を確かめる

まずはじめに、通常の状態から確認してみる。家の壁コンセントから給電した、ふだん通りの状態で、温水洗浄を試してみる。

具体的には、便座に座り、リモコンの「おしり」ボタンを押す。水の勢いは3段階の真ん中に固定する。

いつもの水勢、いつもの当たり心地だ。今回のテストではこれが基準となるので、しっかりとその感触を、お尻で記憶しておく。

「ムーブ」も試してみる。ふだん私は、自分の方がムーブし、良い感じの位置を探り当てる方法を採っているのだが、今回は実験なので特別だ。クイックイッと、ノズルが前後に動く。なるほど、ムーブってこんな感じなのか…。

「リズム」機能も、今回初めて使った。水の勢いが弱くなったり強くなったりを繰り返すというものだ。マッサージ効果を感じる。癖になりそうで、別の意味で気をつけたいところだ。

こうして一通り、通常の電源で洗浄などの基本機能をテストした。とはいえ、基本的な洗浄は毎日やっていることなので、確認程度ですぐに終了した。

写真はイメージです

オーディオグレード電源で温水を噴射

さて、いよいよオーディオグレード電源に温水洗浄便座を装着する。…と書くと大袈裟だが、やることはかんたん。コンセントの温水洗浄便座の電源プラグを引っこ抜き、あらかじめ用意したオーディオ用電源ボックスに差し込むだけだ。

今回購入した温水洗浄便座は貯湯式だ。あまり時間をかけると、温水がぬるくなってしまい、この後のテストの評価に影響しかねない。素早く行う必要がある。

さて、電源プラグを差し替えると、温水洗浄便座が「ブオーーン」と音を立てて再起動した。起動する際の音や挙動に、何ら変わった点は見られない。

そりゃそうだよな、温水洗浄便座の動作が、電源で変わるわけないよな…。そう思いつつ、念のため「おしり」ボタンを押してみた。実験の失敗を最後まで見届けよう、そんな心境だった。

ノズルが伸びる音が響き、1秒ほどの間があって、温水が噴射開始。私のお尻に当たりはじめた。

温水がお尻を直撃した瞬間、私は心底驚いた。今起きていることは、果たして現実なのか。神経をお尻だけに集中し、何度も確かめる。これが紛れもない現実であることを受け入れるまで、しばらく時間がかかった。

「強い……!!」

自宅トイレの中、私は思わず独りごちた。

水圧が、強くなっている。お尻に当たる水の勢いが、先ほどの通常電源より、明らかに強い。もちろん水の勢いの設定は、3段階の真ん中のまま変えていない。

こんなことが起こるわけがない、そう思った。良質な電源のパワーを何度も体験してきた私だが、水の勢いが増すなどと言うことは、ちょっと信じられない。

実はこのテストを検討している際、編集長の押野とSlackで会話していた。彼は「水圧が変わるのでは」みたいなことをコメントしていた。そのときは互いに冗談と思っていたはずだが、いざ実験してみると、私のお尻が、「いや、その『まさか』があるかもよ?」と告げている。

企画段階のSlack。水圧が変わるだけでなく、後に説明する水勢の安定まで予言していた押野。さすが(?)だ

通常電源の噴射とオーディオ用電源の噴射は大違い

もう一度確認しようと、ふつうの電源に戻してみる。やることは先ほどと逆。オーディオ用電源ボックスからプラグを引っこ抜き、壁コンセントに直接つなぐだけだ。

はやる心で「おしり」ボタンを押す。お湯が私のお尻に当たり始める。だが、やはり力がない。勢いが先ほどより弱く、明らかにやる気が感じられない。オーディオ用電源で強化した温水洗浄便座の力強い噴射力とは、比べものにならない。

「マジか…」

呆然としながら、再度電源をオーディオ用電源に変更。再び強化した電源で、温水洗浄便座を起動させる。

温水を噴射させてみると、先ほどとは打って変わって、お湯の噴流が力強く私のお尻を叩く。これだよ、これ。

しばらく続けていると、ただ単に水の勢いが強いだけでなく、その勢いが安定していることに気づいた。通常電源では水の勢いにムラがあるが、オーディオ電源ではビシッと一定の強さを保っている。電源が安定すると、ここまで違いが出るものなのか。

しばらく心地よさに身を委ねていると、お湯がだんだん冷めてきたが、それとは逆に、私の心は熱くなってきた。

改めてオーディオ用電源の凄さに驚いた

水の勢いだけでなく「ムーブ」も過激に…

オーディオ用電源で強化すると、温水洗浄便座の水の勢いが増す。私のお尻の感覚を信じる限り、これは事実だ。

それだけではない。実はノズルが前後に動く「ムーブ」にも、電源の影響が現れた。オーディオ用電源では、動くときの勢いが、より力強くなるのだ。

通常電源での動きを「クイックイッ」という擬音で表現するとしたら、オーディオ用電源では「グイッグイッ」と、一段力強くなる。「ウソだろ」と思われるだろうが、本当なのだから仕方ない。

「リズム」も明らかに変化した。強いときはより強く、弱いときはより弱く。まるで音のダイナミックレンジが広がったような変化に、思わず目を見張った。

なお、今回のテストは貯湯式の便座でしか行っておらず、瞬間式でも差が出るかどうかはわからない。自宅の便座がもっと高級なものだったら、近づいたときにパカッとフタが開く動きや脱臭機能など、ほかにも色々テストできたのだが、残念だ。

テストのあと、弊社のオーディオ電源のエキスパートである中野に結果を伝えたら、水の勢いが変化したことについては、特に驚く様子もなかった。

中野によると、温水洗浄便座の便座保温機能は、電源ノイズの発生源としてメジャーな存在であるとのことだ。名前は出せないが、某社製の温水洗浄便座はノイズが多く、そのノイズ飛び込みによる音質劣化を嫌うオーディオファンが別のメーカーの便座を選ぶ、などということもあるらしい。「ノイズフィルターを便座に付けて、別室のオーディオの音質変化を確かめてみても良いかも」と真顔で言うのだから、凄い世界だ。



温水洗浄便座をオーディオ用電源で強化すると、水の勢いが強くなるし、その勢いが安定する。ムーブにも力強さが加わる。テストを通じて得られたこれらの結果から、オーディオ用電源の凄さを今回も実感させられた。

とはいえ、これが普通の人にはあまり意味がないのが辛いところ。ぶっちゃけ通常電源でも、水の勢いを「強」に設定すれば事足りるのだ。

ふだん、温水洗浄便座の水の勢いを最強レベルに設定していて、さらなる水圧を求めているという方は、オーディオ用電源で強化する方法があることを覚えておいてほしい。力強い刺激がお尻を満足させること請け合いだ。

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