公開日 2023/08/03 06:40
カセットプレーヤーのエモさに脳がバグった。令和のワイヤレス再生スタイルを実践
AUREXの新モデルを触ってみた
Bluetooth対応ポータブルカセットプレーヤーの新モデル、AUREX Walky「AX-W10C」を触ってみたらノスタルジーと新鮮な感動に包まれた。
AX-W10Cは誕生50周年を迎えたオーディオブランドAUREX(オーレックス)から登場した、リブランディング第一弾モデルだ。AUREXは東芝がオーディオ製品などに用いるブランドで、一度は途絶えたものの近年復活を果たしている。50周年を機に若年層からも共感されるブランドへと進化することを目指し、ブランドが得意とするカセットプレーヤー製品を打ち出してきた。
ちなみに、AX-W10Cの「C」はクリア(Clear)の「C」で、カセット窓をスケルトン仕様にしている。全体がホワイトな「AX-W10」との2バリエーションを展開する。
デザインは1980年代に登場したポータブルカセットプレーヤー「Walky」をベースに現代風にアレンジされており、無骨もしくはメカメカしい見た目の旧Walkyから丸みを帯びたシルエットに変更。レトロな香りも漂わせながら、古さは感じさせない。
手に持ってみると、それなりのサイズ感がある。これはカセットテープそのものがある程度の大きさがあるため仕方ない部分だが、片手で掴んで操作するには手が小さい方は苦労するかもしれない。ただ先述したように丸みがあるため、手に持って角が当たるようなことはなく、すべすべして持ちやすい。無理せず両手を使えばまったく問題ないし、小さなバッグにも収まるだろう。
操作ボタンはシンプルに「PLAY(再生)」「FWD(早送り)」「REW(巻き戻し)」「STOP(停止)」「REC(録音)」の5つが片側に並んでいる。油断すると隣り合うPLAYとRECを押し間違いそうになるのは “あるある” なので気をつけたい。
こうしたポータブルカセットプレーヤーはスピーカーを内蔵しているケースもあるが、本機ではそれを省いた代わりに、Bluetooth接続が行えるのを特長としている。完全ワイヤレスイヤホンやBluetoothスピーカーなどと、スマートフォンと同じようにワイヤレスで接続できるのだ。3.5mm端子での有線接続にも対応するが、メインはBluetooth接続になってくるだろう。
このBluetooth機能を使用する際は、背面に備えられたボタンを操作する。そしてもう1つ、本機には「VIRTUAL SURROUND」のオン/オフスイッチが搭載されている。これは「複数のスピーカーで再生したような音響効果を実現」するというものだ。
それにしても、カセットテープを聴くのはいつ以来だろう。アナログレコードの人気再燃が言われて久しいが、カセットテープもここ数年、ブーム再来という話題を耳にする。しかし、国内では大きなムーブメントになるには至らず、時たま人気アーティストがカセットテープをリリースした際に盛り上がる程度ではないだろうか。
だが、それだけにカセットテープには希少性がある。「これから来る」アイテムを先取りしているような嬉しさがある。ほかの人とは違う、でも皆が知っているアイテムを使っている気持ちよさも感じられる。懐かしさがあるし、エモさもある。年代によって抱く感想は違うだろうが、総じてポジティブな印象を受けるのではないか。
昔持っていたカセットテープは、プレーヤーを廃棄する際にすべて処分してしまった。ちまちま作り上げた“自分ベスト”や、臥薪嘗胆の思いでとっておいたホームセンターで買った知らないおじさんが歌っているカラオケバージョン、それらは手元にはない。しかし逆に、いまなら手に入るカセットテープも多数存在する。どのショップにも必ず置いてあるわけではないが、ネット通販を使えばいいし、レコード盤より安かったりする。久しぶりにカセットテープを探したが、思ったより買いやすかった。
Walkyと完全ワイヤレスイヤホンをBluetooth接続して、サウンドを確認してみる。ちゃんと接続できたか確認する際は、いつもボリュームを最小にしておいて、徐々に適正な大きさにあげていくようにしているのだが、PLAYボタンが押されてテープが回っている状態だと、常に「キュルキュル」「チチチチチ」といった音がする(有線イヤホンを接続した場合はこの音はしない)。STOPすると音も止まるので、テープの回転に由来するノイズか、あえてその音を処理せず音声信号として送っているのか、どちらかと推察される。
ボリュームを上げていって、音が鳴った瞬間、「これこれ!」という感じ。カセットテープの再生音はこれだ。中域に厚みがあり、太い。低音はブンブンするというか若干オーバードライブでパワフル。もちろん機材を揃えて、良質な録音がなされたメタルテープを聴く、などであれば話も変わってくるのだろうが、ポータブルカセットプレーヤーでラフに聴くスタイルで馴染んでいたサウンドはこれだった。
野外ライブ会場のようなザワザワ感があり、音楽配信サービスなどに慣れた耳にはクリアさが足りないようで、むしろ音圧が楽しいようにも思える。そして完全ワイヤレスイヤホンからこの音がするのは、違和感がある。スマートフォンと組み合わせてデジタルサウンドばかりを聴いていたので、完全ワイヤレスイヤホンとカセットテープの組み合わせは脳がバグを起こしそうになる。だからこそ、わざわざカセットプレーヤーを使う意味があるというものだ。
VIRTUAL SURROUNDをオンにしてみると、明らかに響きが加わり、ボーカルが踏み台に乗って歌い出したかのように音場の変化が感じられる。効き具合が大きい機能で聴こえ方がまるで変わってくるため、オンにしっぱなしはオススメできないが、マッチする曲にはオンにしないと寂しく感じられる。効果的なのは間違いない。
◇
カセットテープは聴きたい曲にたどり着くまでが長い。CDでも音楽配信サービスでもすぐに曲が選択できるし、なんならレコードも針を落とす位置で調整できる。カセットテープは早送り/巻き戻しのどちらにしても時間がかかる。パッパッと聴きたい曲を聴くのが当たり前になっていたため、感覚的には昔以上に長く思える。
けれど、そんな時間もカセットテープの醍醐味。“捨て曲” なんてないのだから、なんならアルバム全部聴けばいいし、ようやく再生が始まった目当ての曲は飛ばさずしっかり聴きたくなる。
AUREXからはこのほか、カセット付きワイヤレススピーカー「AX-R10/AX-R10C」「AX-T10」も同時発売。スタイルによって選べるのも嬉しい。集めていたコレクションを引っ張り出すにも、新しい趣味として始めるにも、カセットテープに目を向ける良い機会かもしれない。
■AUREXのカセットプレーヤーWalkyが現代的なワイヤレス仕様で復活
AX-W10Cは誕生50周年を迎えたオーディオブランドAUREX(オーレックス)から登場した、リブランディング第一弾モデルだ。AUREXは東芝がオーディオ製品などに用いるブランドで、一度は途絶えたものの近年復活を果たしている。50周年を機に若年層からも共感されるブランドへと進化することを目指し、ブランドが得意とするカセットプレーヤー製品を打ち出してきた。
ちなみに、AX-W10Cの「C」はクリア(Clear)の「C」で、カセット窓をスケルトン仕様にしている。全体がホワイトな「AX-W10」との2バリエーションを展開する。
デザインは1980年代に登場したポータブルカセットプレーヤー「Walky」をベースに現代風にアレンジされており、無骨もしくはメカメカしい見た目の旧Walkyから丸みを帯びたシルエットに変更。レトロな香りも漂わせながら、古さは感じさせない。
手に持ってみると、それなりのサイズ感がある。これはカセットテープそのものがある程度の大きさがあるため仕方ない部分だが、片手で掴んで操作するには手が小さい方は苦労するかもしれない。ただ先述したように丸みがあるため、手に持って角が当たるようなことはなく、すべすべして持ちやすい。無理せず両手を使えばまったく問題ないし、小さなバッグにも収まるだろう。
操作ボタンはシンプルに「PLAY(再生)」「FWD(早送り)」「REW(巻き戻し)」「STOP(停止)」「REC(録音)」の5つが片側に並んでいる。油断すると隣り合うPLAYとRECを押し間違いそうになるのは “あるある” なので気をつけたい。
こうしたポータブルカセットプレーヤーはスピーカーを内蔵しているケースもあるが、本機ではそれを省いた代わりに、Bluetooth接続が行えるのを特長としている。完全ワイヤレスイヤホンやBluetoothスピーカーなどと、スマートフォンと同じようにワイヤレスで接続できるのだ。3.5mm端子での有線接続にも対応するが、メインはBluetooth接続になってくるだろう。
このBluetooth機能を使用する際は、背面に備えられたボタンを操作する。そしてもう1つ、本機には「VIRTUAL SURROUND」のオン/オフスイッチが搭載されている。これは「複数のスピーカーで再生したような音響効果を実現」するというものだ。
■カセットテープ×完全ワイヤレスイヤホンで不思議な感覚に
それにしても、カセットテープを聴くのはいつ以来だろう。アナログレコードの人気再燃が言われて久しいが、カセットテープもここ数年、ブーム再来という話題を耳にする。しかし、国内では大きなムーブメントになるには至らず、時たま人気アーティストがカセットテープをリリースした際に盛り上がる程度ではないだろうか。
だが、それだけにカセットテープには希少性がある。「これから来る」アイテムを先取りしているような嬉しさがある。ほかの人とは違う、でも皆が知っているアイテムを使っている気持ちよさも感じられる。懐かしさがあるし、エモさもある。年代によって抱く感想は違うだろうが、総じてポジティブな印象を受けるのではないか。
昔持っていたカセットテープは、プレーヤーを廃棄する際にすべて処分してしまった。ちまちま作り上げた“自分ベスト”や、臥薪嘗胆の思いでとっておいたホームセンターで買った知らないおじさんが歌っているカラオケバージョン、それらは手元にはない。しかし逆に、いまなら手に入るカセットテープも多数存在する。どのショップにも必ず置いてあるわけではないが、ネット通販を使えばいいし、レコード盤より安かったりする。久しぶりにカセットテープを探したが、思ったより買いやすかった。
Walkyと完全ワイヤレスイヤホンをBluetooth接続して、サウンドを確認してみる。ちゃんと接続できたか確認する際は、いつもボリュームを最小にしておいて、徐々に適正な大きさにあげていくようにしているのだが、PLAYボタンが押されてテープが回っている状態だと、常に「キュルキュル」「チチチチチ」といった音がする(有線イヤホンを接続した場合はこの音はしない)。STOPすると音も止まるので、テープの回転に由来するノイズか、あえてその音を処理せず音声信号として送っているのか、どちらかと推察される。
ボリュームを上げていって、音が鳴った瞬間、「これこれ!」という感じ。カセットテープの再生音はこれだ。中域に厚みがあり、太い。低音はブンブンするというか若干オーバードライブでパワフル。もちろん機材を揃えて、良質な録音がなされたメタルテープを聴く、などであれば話も変わってくるのだろうが、ポータブルカセットプレーヤーでラフに聴くスタイルで馴染んでいたサウンドはこれだった。
野外ライブ会場のようなザワザワ感があり、音楽配信サービスなどに慣れた耳にはクリアさが足りないようで、むしろ音圧が楽しいようにも思える。そして完全ワイヤレスイヤホンからこの音がするのは、違和感がある。スマートフォンと組み合わせてデジタルサウンドばかりを聴いていたので、完全ワイヤレスイヤホンとカセットテープの組み合わせは脳がバグを起こしそうになる。だからこそ、わざわざカセットプレーヤーを使う意味があるというものだ。
VIRTUAL SURROUNDをオンにしてみると、明らかに響きが加わり、ボーカルが踏み台に乗って歌い出したかのように音場の変化が感じられる。効き具合が大きい機能で聴こえ方がまるで変わってくるため、オンにしっぱなしはオススメできないが、マッチする曲にはオンにしないと寂しく感じられる。効果的なのは間違いない。
カセットテープは聴きたい曲にたどり着くまでが長い。CDでも音楽配信サービスでもすぐに曲が選択できるし、なんならレコードも針を落とす位置で調整できる。カセットテープは早送り/巻き戻しのどちらにしても時間がかかる。パッパッと聴きたい曲を聴くのが当たり前になっていたため、感覚的には昔以上に長く思える。
けれど、そんな時間もカセットテープの醍醐味。“捨て曲” なんてないのだから、なんならアルバム全部聴けばいいし、ようやく再生が始まった目当ての曲は飛ばさずしっかり聴きたくなる。
AUREXからはこのほか、カセット付きワイヤレススピーカー「AX-R10/AX-R10C」「AX-T10」も同時発売。スタイルによって選べるのも嬉しい。集めていたコレクションを引っ張り出すにも、新しい趣味として始めるにも、カセットテープに目を向ける良い機会かもしれない。