もうすぐプラグ/ジャックが量産開始
ヘッドホンのバランス端子がついに統一? JEITAが規格化「5極φ4.4mmプラグ」の詳細を聞く
■これまでのバランス接続端子が抱えていた3つの課題
規格策定以前に原氏が感じていた課題は、規格がまちまちで互換性がないことのほかに、もう2つあった。
1つは「バランス接続のために2本のプラグ、あるいは大型プラグが必要となる構造は、ポータブル機器の小型化と相容れない」こと。もう1つは「ロック機構を有するプラグのヘッドホンへの使用は、安全性の点で不安がある」ということだった。
2本のプラグや大型プラグをポータブル機器で使用することの問題点は、すぐにお分かり頂けるかと思うが、ロック機構を備えたXLRなどの問題点については、若干説明が必要かもしれない。
ヘッドホンアンプは小型で軽量のものも多い。ロック機構があると、頭を動かした際に機器が引っ張られ、下に落ちてしまったりすることもあり得る。またケーブルが傷つくことも考えられる。家庭内で使用する際の安全性を考えると、一定の強さで引っ張られた際に抜去する構造が望ましいというのが原氏の見解である。たとえばアップルは、PCの電源コネクタを磁力で固定し、一定の力がかかると抜けるようにしているが、それと同じ考え方だ。
もう一つ重要なポイントがある。上記でポータブル機器における課題と据え置き機での課題の両方を挙げていることからもわかるとおり、今回規格化したバランス接続用プラグは、ポータブルと据え置き両方での使用を想定して検討された。
■「ゼロから最も良い規格を考えよう」
こうして実際の規格化に移ったわけだが、まずは方針として「まっさらなゼロの状態から、最も良い規格を考えよう」という大前提で作り始めたという。
φ4.4mm、5極1本という新しいサイズと方式にした背景について原氏は、「どこか1つのメーカーが、自分のところの規格を使って欲しいと強硬に主張すると収拾が付きません(笑)。まだどこも使っていない、スタート地点が同じものであれば規格化しやすいと考えました」と理由を語る。
もちろんそれだけが理由ではない。「4.4mmは、3.5mmでもなく2.5mmでもない新しいサイズなので、誤接続が起こりません。厳密にいうと、DTMで使われるバンタムプラグは4.4mmなので、全く新しいサイズではありませんが、今回は民生用の規格なので問題ないと考えました」。