数々の裏話も飛び出した
<本人登場>LiSAの新譜「Launcher」の“ハイレゾ”試聴会に、アニソンオーディオ編集部が潜入!
2月21日、かなりの広さを有した一室には100名を超えるであろう人々が集まった。壇上には1つの机が置かれ、それと向かい合うように来場者が席につく。まるで大学で講義を受けるような、どことなく真面目な雰囲気。みな緊張しているようだが、かすかに流れる耳に馴染んだ歌声に期待を抱いているようにも見える……。
LiSAのニューアルバム「Launcher」が3月4日にリリース、同時にハイレゾ配信も決定されたことを記念してのハイレゾ先行試聴会。これはそのイベント直前の模様だ。堅苦しくお伝えしてみたが、実際には和気あいあいとした空気が流れている。音楽配信サイト「mora」から応募したLiSAファンしかこの会場にはいない。これから「Launcher」収録の新曲を発売前に聴くことができるのだから、楽しみでないわけがない。しかも、LiSA本人と、サウンドディレクター岡村氏による楽曲解説まで予定されているのだ。否が応でもテンションが上がるじゃないか。
■「Launcher」 Information
発売日:2015年3月4日(水)
通常盤:SVWC-70060 \3,000(税別)
初回生産限定盤(CD+DVD):SVWC-70058〜SVWC-70059 \3,800(税別)
初回生産限定盤(CD+BD):SVWC-70056〜SVWC-70057 \4,500(税別)
*初回生産限定盤はCD+DVDもしくはCD+BD、三方背スリーブケース仕様、撮りおろし48P ブックレット、イベント応募券封入
ハイレゾ音源(96kHz/24bit):\3,200円(税込)
音楽ダウンロード「mora」にて3月4日(水)より配信
そしてついに開始時刻となり、アニプレックス 枦山氏の司会によってイベントがスタート。とはいえ、まだ壇上には誰も姿を現していない。いきなり試聴が始まっても、誰も今回の趣旨についていけないからだ。そう、ハイレゾである。ハイレゾがどういったものか分からないと、曲をただ聴くだけで終わってしまう。1ファンとして、それでも十分な気がしたが、その意味はこの後の試聴で思い知らされることとなる。
はじめに「ハイレゾの勉強を」ということで、オーディオライター野村ケンジ氏が壇上に呼ばれた。数々のオーディオ機器の試聴を通してハイレゾ音源がどういったものか、どのように聴こえるのかを知り尽くしている野村氏により、ハイレゾについての簡単な解説が行われた。
まず、会場に普段ハイレゾを楽しんでいる方がどのくらいいるのか、挙手によるアンケートをとる。結果は10名程度。名前は知っているけれど、という方が圧倒的に多い。LiSAのタイトルも、「シルシ」と「BRiGHT FLiGHT / L.Miranic」の両シングルがハイレゾで配信されているのみ。聴く環境がないから聴いたことがない、という方が多いのも仕方ないことだろう。
そこで、野村氏は分かりやすくまとめてハイレゾのポイントを挙げた。「データが大きいので情報量も多くなり、アーティストの本来の姿をより楽しめる音源」ということだ。つまり、これまでは切り捨てざるを得なかった細かな部分まで、余裕があるから拾い上げることができる。それにより、LiSAや楽器隊がスタジオで演奏した際の音に近づくという寸法だ。野村氏によれば、実際に会話した際のLiSAの声と、ハイレゾで収録されたタイトルの歌声が一致している、とのこと。
ここまでの解説を受けて、いよいよ1曲目の試聴となった。曲目は「Rising Hope」。まずは圧縮音源(mp3)で、そして次にハイレゾで最初のサビが終わるまでを聴いていく。また挙手でアンケートを取ると、はっきり違うと分かった、という問いには15人くらいが手を上げた。それを受けて、圧縮音源とハイレゾの違いについて野村氏より解説が入る。先ほどの情報量が多くなる、という部分は音の数や細かさ、解像度といったものであるということ。そして、1つのマイクの前でまずはヴォーカル、次にギター、といったように代わる代わる音を出しているような圧縮音源に対し、ハイレゾではメンバーがそれぞれのポジションで音を出していることが感じられる、という違いがあるということ。それにより、音楽のノリが良くなり、グルーヴ感が出てくるのだ。この解説を、全員が真剣に聞いていて、まさに受講といった様相を呈していた。その成果は、後に結果として表れることとなる。
そしてついに、LiSA本人が登場。「こんなに静かに聴かれるRising Hopeは初めて! リスニングテストみたい、皆固いよ!笑」と、全員が机に座って耳を澄ませていた不思議な光景にコメント。LiSAの明るいキャラクターもあって、ファンにも笑顔が広がる。ニューアルバム、そして今回の試聴会については「新しいアルバムは凄いカッコイイんです。このカッコイイという気持ちをお伝えしたいし、自分がリアルに思っていることを伝える場が与えられたことが嬉しい。誰よりも早く聴けるなんてラッキーじゃない?笑 こんな広い場所で、こんないい機材で、こんな大勢で聴く機会は滅多にないので楽しんでください!」と語った。続いて楽曲制作時の進行・まとめ役、アニプレックス サウンドディレクター岡村 弦氏も登場し、ここから一気に試聴が進んでいく。その様子を、それぞれのコメントを抜粋してお伝えしたい。
●「Mr.Launcher」
LiSA「とにかく言いたいのは、カッコイイから1曲めにしました! 今回どんなアルバムにしたいか、何を歌っていたいかを、武道館での2daysライブのあと考えたんです。最初の武道館での悔しい思い、それがあっての武道館2days。これを乗り越えたあとは、無敵になれる!って思ったんです。もう、なんだってぶっ放せるような。そんな勢いのある曲として、こういう形になった。歌詞の”そう、僕に間違いない!”という部分、これは皆で言って欲しい。ライブで最強のピースをみんなでしたいです。今からライブ楽しみにしてます!笑 楽器それぞれが引き立って、空間のなかに楽器のメンバーの姿が見えるのがハイレゾなんじゃないかな」
岡村氏「Mr.LauncherはイントロにSEが入ってカウントダウンがある演出なんですけど、それはアルバムの最初と最後の曲はインストの部分が長い曲にしたかったからなんです。本当はもっと長かったけど、プリプロを3回作って、何度もやり取りして、その結果として今の形に収まったんです」
野村氏「ベース、ドラムスがカッコイイ。グルーヴ感、ノリの良さが相当違うと思います」
●「rapid life シンドローム」
LiSA「先輩(UNISON SQUARE GARDEN 田淵智也氏)に凄いLiSAっぽい曲を作ってください、皆が元気になるような曲をくださいってお願いしました。そうしたら、さすが皆のことよくわかってるっていうか、やることの多い曲ができたんです。ライブで皆のやるとこいっぱいあるから覚えといてよ!笑」
岡村氏「アドリブとかは、スタジオの現場で生まれたのをそのまま使います。皆が凄く真面目にやったあとに、LiSAの真似をして「みんなーやれるかー!!」って盛り上げてます。笑 そうしたらワクワク感というか、楽しんでやってるテイクを作り出せて、結果としてそれを採用することも多いですね。そんな楽しさがある曲です」
野村氏「楽曲自体のノリが良い曲では、その良さをさらに高めてくれます。ハチャメチャなようで、それぞれの音をしっかりと聴き取れます」
●「蜜」
LiSA「エロい曲です。笑 この歌詞を書いたとき”マジでキタ!”と思った!」
岡村氏「朝9時に歌詞を見せられた時には、”うわー”と。笑 けど、ほぼ訂正なしで通しました。録音時にはブースの照明の色をピンク紫にして雰囲気を出しました。笑」
野村氏「声の調子を変えているのが、録音マイクを変えたのかと思うくらい分かりますね。女性らしさ、艶やかさといったものがとても感じられると思います」
●「アコガレ望遠鏡」
LiSA「作曲はebaさんなんですけど、アルバムを作る前からこのメロディがずっと好きで、いつか歌えたらと温めていた曲です。一歩が踏み出せない、誰かに声をかけられない、凄く勇気が欲しい。そんなときに皆が主人公になれる、そういう曲です」
岡村氏「この曲はたくさんの候補曲から、コンペを行って選ばせていただいたんです。こういったタイプの曲が欲しいです、というこちらの要望に色々なクリエイターの方がデモを送ってくださって、そこから選ぶわけです。その際には公平を期するために、誰の作った曲か、というのは隠すんです。いつかやろう、とは考えていましたが、先入観を無くして選ばれるべくして選ばれた曲です」
野村氏「ドラムスの非常に細かい技術が感じ取れるのが凄いですね。ロールの微妙なニュアンスでグルーヴ感を出している、そのテクニックもハイレゾではしっかり再生されています」
●「FRAGILE VAMPIRE」
LiSA「作詞はLiSAというアーティストが何を歌いたいかを分かってる、信頼している作家さんにお願いすることが多いんです。それで私の曲の作詞は自分か、田淵さん(UNISON SQUARE GARDEN)、そしてこの曲の古屋(真)さんが多いんです。武道館2daysではピンク(=POP)とブラック(=ROCK)で曲目を分けたんですけど、古屋さんの曲はピンクだけだったんですよ。そこでブラックの曲も本当は書きたいんだ、という古屋さんにお願いしました。笑」
岡村氏「実は俺は、ブラックもいけるんだぜ、みたいな。笑 アコガレ望遠鏡と同じ作詞、作曲のメンバーですけれど、まったく違う曲調に仕上がっています。曲としても難しいんですけど、これは基本ファースト・テイクの演奏で完成してますね。ミュージシャンの実力の高さも実感できる曲かもしれません」
野村氏「この早さでも、テクニックが潰れず感じられるのが凄いところですね。また、こんな激しい曲でも、何回聴いても聴き疲れしないのもハイレゾのメリットだと思います。100回でも200回でも聴きたいですね」
●「ANTIHERO」
LiSA「いろんな人のいろんな感情があって、自分が正しいと思って喋っていても、他の人にとっては正解じゃない。けど、多くの人がそれが正解だって言うと、それが正解に見えてしまう。何が正解かなんて分からないなって思って書いた曲です。じゃあ、ヒーローって何って考えた時に、本当のヒーローはヒーローじゃないんじゃないかな、と。誰かから見たヒーローであって、一方ではそうではないとか。そんな色んな想いや感情をたくさん考えた上で、”なんなんだよーっ!”て気持ちを書いてますね。笑」
岡村氏「セリフが入っているところは驚かれるんじゃないかなと。笑 オケが止まった時に、”うざい”、”うっとうしい”というセリフが入っているんです。これはLiSAのアイデアだったんですけど、収録は面白かったですね。静かなスタジオでLiSAが悪態をついて、それをスピーカーで聴く、という。笑」
野村氏「ある方面の方はすごく好きなんじゃないかな、と。笑 それだけはっきり聴こえるので、ゾクッとするくらいです。笑」
●「Bad Sweet Trap」
LiSA「ストレスが溜まっている人用の曲です。笑 作詞は田淵さんと共作で、”ちょっと黙ってて”という歌詞を固めたのは私で、そんなセリフを入れたいと考えたのが田淵さんです。自分が書きたいことを書いて、それを田淵さんや古屋さんが手を入れて、それを私がまた、というやり取りを通して共作の歌詞は出来上がるんです。自分1人じゃ書けない言葉、例えばこの曲の”ハートのエースがおでまし”という言葉は自分じゃ出ない、田淵さんらしい言葉だなと。そういうのが生まれるのが面白いです」
岡村氏「歌録りがとても早く進んだので、LiSAはこういう曲は得意だな、と思います。あとは、やっぱりセリフの部分はドキッとしますね。笑 普段仲良く仕事しているので、絶対言われることのない言葉だけにヒリヒリきます。笑 ドラムスも、もとはこんな激しくなかったんです。それがアドリブでこうなって、それがカッコイイ! となって採用されました」
野村氏「合いの手とかの部分が入っている楽曲は、それが聴き取りやすいメリットがありますね。その結果、キレが良くなってグルーヴも良くなるんです」
●「エレクトリリカル」
LiSA「途中で入る”アソ アソボウ ムチャシチャオウジャン”の部分はボーカロイドちっくな声を、機械じゃなくて自分でそれっぽく出してます。笑 デモ曲の歌部分を、ボーカロイドで入れてくださる方も結構いらっしゃるんです。それを聴いてるうちに段々歌い方の感じを覚えて、それを遊びで真似したりしていたのを、この曲で披露してます」
岡村氏「もともとは、ウサギを探すといったテーマで作曲家の渡辺さんが出してくれていた曲なんです。ある日、海外に行っていたLiSAから、動画サイトのURLが貼られたメールが夜中に届いたんです。何かと思ったら『コンピューターおばあちゃん』でした。笑 長く一緒にやっているとそれだけでも分かるもので、”ウサギか?”と。笑 それをヒントに、80年代ポップの匂いをつけたチップチューンな仕上がりになりました」
野村氏「ソフトシンセなどの16ビットCDスペックの音をあえてハイレゾで、というのは効果的な手法として用いられることがあります。そういう意味で面白い聴こえ方がすると思います」
●「君にピエロ」
LiSA「この曲は作詞・作曲の両方を担当しています。例えるなら、プロのシェフが作った料理ばかりのなかに、愛妻弁当が入っていることで、私自身の愛情の表現が出来ればな、と思って入れた曲です。笑 武道館2daysが終わったあとに、皆に届ける手紙として作りました。仮題としてピエロとつけていたのが、そのまま形として残ったタイトルですね」
岡村氏「LiSAが自分で作った曲をデモとして持ってくるとき、どういった感じか、ちょっと言葉では伝えづらいですね」
ここで特別にLiSAが曲を聴いてもらうためのデモとして録音した音源が会場で流された。自身でギターを弾いて、iPadの録音機能を使って録られたという音源に、会場は大いに盛り上がるも、LiSAは悲鳴を上げる。
LiSA「ちょっと、やめてー! 恥ずかしいー!笑」
岡村氏「これ、アコースティックギターの曲なのに、デモはエレキギターで、しかもアンプも通さずに弾いてるんですよ。笑 最初にガチャっていう、カセットテープのボタンを押して録音する、という演出が入っているのは、このデモにインスパイアされてます。歌詞も誰かに届ける、というような内容でしたので」
野村氏「エフェクトの音と、生の音の違いはハイレゾだと分かりやすいです。そういった演出の部分だったり、またアコースティックギターの生楽器の響きなんかも楽しめると思います」
これで試聴はひとまず終了。「Rising Hope」以外は全てフルで試聴、そしてトークも盛り上がったこともあり、気づけば結構な時間が過ぎていたが、来場者に疲れた様子はない。野村氏の言うように聴き疲れのしないハイレゾ音源と、それを再生する優れた機器、そして岡村氏とLiSAの他では聞けない裏話を心底楽しんでいたからだろう。締めとして、壇上の3人が感想を述べていく。
LiSA「最後に恥ずかしい思いをしました。笑 デビューから3年半が過ぎて、LiSAがやりたいことを怖がらずにさらけ出した、これまでの集大成とも言えるアルバムです。このカッコイイアルバムを引っさげて、またライブをしますので、ぜひ楽しみにしてください!」
岡村氏「若い頃に好きなアーティストのイベントとかに行ったときに何が楽しかったかを考えたんですが、表に見えてこない話を知ることが出来たことでした。だから今日は、そういったことが出せたらと思って話をしていました。LiSAが本当に真剣に音楽に向かい合って完成したこのアルバムを、皆さんに聴いてもらえたら嬉しいです」
野村氏「ハイレゾだからとしかめっ面して聴くということではなく、ただ楽しむためにハイレゾという媒体を利用して貰えればと思います。ロックって、ハイレゾと合うんです。もちろん、それ以外の曲も楽しめますし。このアルバムも、ハイレゾならではの音が楽しめる作品となっていると思います」
会場が拍手で包まれる。こうしてハイレゾ試聴会は大盛況のうちに終了……、というところでサプライズ企画が始まった。「ハイレゾ人格付けチェック」、名前から分かるように、2つの音源を聴いてどちらがハイレゾかを当てるというゲームだ。まずそこでふるいをかけて、最終的にはLiSAとじゃんけんをして勝者を決めるというルール。プレゼントはLiSAのサイン付きハイレゾウォークマン「NW-A16」。1名にのみ用意された、非常に狭き門だ。記事の最初でお伝えしたとおり、「Rising Hope」でハイレゾの違いを感じたと手を上げたのは僅かな人数。「そんなの分からないよ」という不安な声が漏れる会場で、果たしてどれだけの人がじゃんけん勝負に進めるのだろうか?
ここで流されたのは、壮大なバラード曲「シルシ」。誰もが、今日イチの集中力を発揮している。1回目、2回目と流されると、頷くようなリアクションを取る姿もあった。さて、試聴会でハイレゾを聴き込んだ参加者の答えは? ……ほぼ全員が正解。あまりの正解者数に、じゃんけん大会がメインになってしまったほどだ。広い会場だったので、リスニングポジションによる差が生じたのは否めない。もし、より適切な場所であれば、100%の正解率も実現しただろう。
それだけハイレゾの音楽は、違いがあると同時に、心に響くものがある。1曲1曲に込められた想いを、強く感じられるのだ。この試聴会で分かったのは、ハイレゾの良さと、作品に関わる多くの人が最高の音楽のために力を注ぎ込んでいるということ。聴けば今日もいい日と絶対に感じられるアルバム「Launcher」、3月4日の発売日が待ちきれない。
なお、今回の試聴で使われたのはソニーのオーディオ機器。ハイレゾの持つ情報量を明確に描き出した、かなりの実力機達だ。ソニーでは小型のモデルなどもラインアップされているので、ハイレゾ再生環境がまだ整っていない、という方にもお薦めしたい。
・HDDオーディオプレーヤー「HAP-Z1ES」
・プリメインアンプ「TA-A1ES」
・スピーカーシステム「SS-AR1」
※VOCALOIDならびにボーカロイドはヤマハ株式会社の登録商標です。
LiSAのニューアルバム「Launcher」が3月4日にリリース、同時にハイレゾ配信も決定されたことを記念してのハイレゾ先行試聴会。これはそのイベント直前の模様だ。堅苦しくお伝えしてみたが、実際には和気あいあいとした空気が流れている。音楽配信サイト「mora」から応募したLiSAファンしかこの会場にはいない。これから「Launcher」収録の新曲を発売前に聴くことができるのだから、楽しみでないわけがない。しかも、LiSA本人と、サウンドディレクター岡村氏による楽曲解説まで予定されているのだ。否が応でもテンションが上がるじゃないか。
■「Launcher」 Information
発売日:2015年3月4日(水)
通常盤:SVWC-70060 \3,000(税別)
初回生産限定盤(CD+DVD):SVWC-70058〜SVWC-70059 \3,800(税別)
初回生産限定盤(CD+BD):SVWC-70056〜SVWC-70057 \4,500(税別)
*初回生産限定盤はCD+DVDもしくはCD+BD、三方背スリーブケース仕様、撮りおろし48P ブックレット、イベント応募券封入
ハイレゾ音源(96kHz/24bit):\3,200円(税込)
音楽ダウンロード「mora」にて3月4日(水)より配信
そしてついに開始時刻となり、アニプレックス 枦山氏の司会によってイベントがスタート。とはいえ、まだ壇上には誰も姿を現していない。いきなり試聴が始まっても、誰も今回の趣旨についていけないからだ。そう、ハイレゾである。ハイレゾがどういったものか分からないと、曲をただ聴くだけで終わってしまう。1ファンとして、それでも十分な気がしたが、その意味はこの後の試聴で思い知らされることとなる。
はじめに「ハイレゾの勉強を」ということで、オーディオライター野村ケンジ氏が壇上に呼ばれた。数々のオーディオ機器の試聴を通してハイレゾ音源がどういったものか、どのように聴こえるのかを知り尽くしている野村氏により、ハイレゾについての簡単な解説が行われた。
まず、会場に普段ハイレゾを楽しんでいる方がどのくらいいるのか、挙手によるアンケートをとる。結果は10名程度。名前は知っているけれど、という方が圧倒的に多い。LiSAのタイトルも、「シルシ」と「BRiGHT FLiGHT / L.Miranic」の両シングルがハイレゾで配信されているのみ。聴く環境がないから聴いたことがない、という方が多いのも仕方ないことだろう。
そこで、野村氏は分かりやすくまとめてハイレゾのポイントを挙げた。「データが大きいので情報量も多くなり、アーティストの本来の姿をより楽しめる音源」ということだ。つまり、これまでは切り捨てざるを得なかった細かな部分まで、余裕があるから拾い上げることができる。それにより、LiSAや楽器隊がスタジオで演奏した際の音に近づくという寸法だ。野村氏によれば、実際に会話した際のLiSAの声と、ハイレゾで収録されたタイトルの歌声が一致している、とのこと。
ここまでの解説を受けて、いよいよ1曲目の試聴となった。曲目は「Rising Hope」。まずは圧縮音源(mp3)で、そして次にハイレゾで最初のサビが終わるまでを聴いていく。また挙手でアンケートを取ると、はっきり違うと分かった、という問いには15人くらいが手を上げた。それを受けて、圧縮音源とハイレゾの違いについて野村氏より解説が入る。先ほどの情報量が多くなる、という部分は音の数や細かさ、解像度といったものであるということ。そして、1つのマイクの前でまずはヴォーカル、次にギター、といったように代わる代わる音を出しているような圧縮音源に対し、ハイレゾではメンバーがそれぞれのポジションで音を出していることが感じられる、という違いがあるということ。それにより、音楽のノリが良くなり、グルーヴ感が出てくるのだ。この解説を、全員が真剣に聞いていて、まさに受講といった様相を呈していた。その成果は、後に結果として表れることとなる。
そしてついに、LiSA本人が登場。「こんなに静かに聴かれるRising Hopeは初めて! リスニングテストみたい、皆固いよ!笑」と、全員が机に座って耳を澄ませていた不思議な光景にコメント。LiSAの明るいキャラクターもあって、ファンにも笑顔が広がる。ニューアルバム、そして今回の試聴会については「新しいアルバムは凄いカッコイイんです。このカッコイイという気持ちをお伝えしたいし、自分がリアルに思っていることを伝える場が与えられたことが嬉しい。誰よりも早く聴けるなんてラッキーじゃない?笑 こんな広い場所で、こんないい機材で、こんな大勢で聴く機会は滅多にないので楽しんでください!」と語った。続いて楽曲制作時の進行・まとめ役、アニプレックス サウンドディレクター岡村 弦氏も登場し、ここから一気に試聴が進んでいく。その様子を、それぞれのコメントを抜粋してお伝えしたい。
●「Mr.Launcher」
LiSA「とにかく言いたいのは、カッコイイから1曲めにしました! 今回どんなアルバムにしたいか、何を歌っていたいかを、武道館での2daysライブのあと考えたんです。最初の武道館での悔しい思い、それがあっての武道館2days。これを乗り越えたあとは、無敵になれる!って思ったんです。もう、なんだってぶっ放せるような。そんな勢いのある曲として、こういう形になった。歌詞の”そう、僕に間違いない!”という部分、これは皆で言って欲しい。ライブで最強のピースをみんなでしたいです。今からライブ楽しみにしてます!笑 楽器それぞれが引き立って、空間のなかに楽器のメンバーの姿が見えるのがハイレゾなんじゃないかな」
岡村氏「Mr.LauncherはイントロにSEが入ってカウントダウンがある演出なんですけど、それはアルバムの最初と最後の曲はインストの部分が長い曲にしたかったからなんです。本当はもっと長かったけど、プリプロを3回作って、何度もやり取りして、その結果として今の形に収まったんです」
野村氏「ベース、ドラムスがカッコイイ。グルーヴ感、ノリの良さが相当違うと思います」
●「rapid life シンドローム」
LiSA「先輩(UNISON SQUARE GARDEN 田淵智也氏)に凄いLiSAっぽい曲を作ってください、皆が元気になるような曲をくださいってお願いしました。そうしたら、さすが皆のことよくわかってるっていうか、やることの多い曲ができたんです。ライブで皆のやるとこいっぱいあるから覚えといてよ!笑」
岡村氏「アドリブとかは、スタジオの現場で生まれたのをそのまま使います。皆が凄く真面目にやったあとに、LiSAの真似をして「みんなーやれるかー!!」って盛り上げてます。笑 そうしたらワクワク感というか、楽しんでやってるテイクを作り出せて、結果としてそれを採用することも多いですね。そんな楽しさがある曲です」
野村氏「楽曲自体のノリが良い曲では、その良さをさらに高めてくれます。ハチャメチャなようで、それぞれの音をしっかりと聴き取れます」
●「蜜」
LiSA「エロい曲です。笑 この歌詞を書いたとき”マジでキタ!”と思った!」
岡村氏「朝9時に歌詞を見せられた時には、”うわー”と。笑 けど、ほぼ訂正なしで通しました。録音時にはブースの照明の色をピンク紫にして雰囲気を出しました。笑」
野村氏「声の調子を変えているのが、録音マイクを変えたのかと思うくらい分かりますね。女性らしさ、艶やかさといったものがとても感じられると思います」
●「アコガレ望遠鏡」
LiSA「作曲はebaさんなんですけど、アルバムを作る前からこのメロディがずっと好きで、いつか歌えたらと温めていた曲です。一歩が踏み出せない、誰かに声をかけられない、凄く勇気が欲しい。そんなときに皆が主人公になれる、そういう曲です」
岡村氏「この曲はたくさんの候補曲から、コンペを行って選ばせていただいたんです。こういったタイプの曲が欲しいです、というこちらの要望に色々なクリエイターの方がデモを送ってくださって、そこから選ぶわけです。その際には公平を期するために、誰の作った曲か、というのは隠すんです。いつかやろう、とは考えていましたが、先入観を無くして選ばれるべくして選ばれた曲です」
野村氏「ドラムスの非常に細かい技術が感じ取れるのが凄いですね。ロールの微妙なニュアンスでグルーヴ感を出している、そのテクニックもハイレゾではしっかり再生されています」
●「FRAGILE VAMPIRE」
LiSA「作詞はLiSAというアーティストが何を歌いたいかを分かってる、信頼している作家さんにお願いすることが多いんです。それで私の曲の作詞は自分か、田淵さん(UNISON SQUARE GARDEN)、そしてこの曲の古屋(真)さんが多いんです。武道館2daysではピンク(=POP)とブラック(=ROCK)で曲目を分けたんですけど、古屋さんの曲はピンクだけだったんですよ。そこでブラックの曲も本当は書きたいんだ、という古屋さんにお願いしました。笑」
岡村氏「実は俺は、ブラックもいけるんだぜ、みたいな。笑 アコガレ望遠鏡と同じ作詞、作曲のメンバーですけれど、まったく違う曲調に仕上がっています。曲としても難しいんですけど、これは基本ファースト・テイクの演奏で完成してますね。ミュージシャンの実力の高さも実感できる曲かもしれません」
野村氏「この早さでも、テクニックが潰れず感じられるのが凄いところですね。また、こんな激しい曲でも、何回聴いても聴き疲れしないのもハイレゾのメリットだと思います。100回でも200回でも聴きたいですね」
●「ANTIHERO」
LiSA「いろんな人のいろんな感情があって、自分が正しいと思って喋っていても、他の人にとっては正解じゃない。けど、多くの人がそれが正解だって言うと、それが正解に見えてしまう。何が正解かなんて分からないなって思って書いた曲です。じゃあ、ヒーローって何って考えた時に、本当のヒーローはヒーローじゃないんじゃないかな、と。誰かから見たヒーローであって、一方ではそうではないとか。そんな色んな想いや感情をたくさん考えた上で、”なんなんだよーっ!”て気持ちを書いてますね。笑」
岡村氏「セリフが入っているところは驚かれるんじゃないかなと。笑 オケが止まった時に、”うざい”、”うっとうしい”というセリフが入っているんです。これはLiSAのアイデアだったんですけど、収録は面白かったですね。静かなスタジオでLiSAが悪態をついて、それをスピーカーで聴く、という。笑」
野村氏「ある方面の方はすごく好きなんじゃないかな、と。笑 それだけはっきり聴こえるので、ゾクッとするくらいです。笑」
●「Bad Sweet Trap」
LiSA「ストレスが溜まっている人用の曲です。笑 作詞は田淵さんと共作で、”ちょっと黙ってて”という歌詞を固めたのは私で、そんなセリフを入れたいと考えたのが田淵さんです。自分が書きたいことを書いて、それを田淵さんや古屋さんが手を入れて、それを私がまた、というやり取りを通して共作の歌詞は出来上がるんです。自分1人じゃ書けない言葉、例えばこの曲の”ハートのエースがおでまし”という言葉は自分じゃ出ない、田淵さんらしい言葉だなと。そういうのが生まれるのが面白いです」
岡村氏「歌録りがとても早く進んだので、LiSAはこういう曲は得意だな、と思います。あとは、やっぱりセリフの部分はドキッとしますね。笑 普段仲良く仕事しているので、絶対言われることのない言葉だけにヒリヒリきます。笑 ドラムスも、もとはこんな激しくなかったんです。それがアドリブでこうなって、それがカッコイイ! となって採用されました」
野村氏「合いの手とかの部分が入っている楽曲は、それが聴き取りやすいメリットがありますね。その結果、キレが良くなってグルーヴも良くなるんです」
●「エレクトリリカル」
LiSA「途中で入る”アソ アソボウ ムチャシチャオウジャン”の部分はボーカロイドちっくな声を、機械じゃなくて自分でそれっぽく出してます。笑 デモ曲の歌部分を、ボーカロイドで入れてくださる方も結構いらっしゃるんです。それを聴いてるうちに段々歌い方の感じを覚えて、それを遊びで真似したりしていたのを、この曲で披露してます」
岡村氏「もともとは、ウサギを探すといったテーマで作曲家の渡辺さんが出してくれていた曲なんです。ある日、海外に行っていたLiSAから、動画サイトのURLが貼られたメールが夜中に届いたんです。何かと思ったら『コンピューターおばあちゃん』でした。笑 長く一緒にやっているとそれだけでも分かるもので、”ウサギか?”と。笑 それをヒントに、80年代ポップの匂いをつけたチップチューンな仕上がりになりました」
野村氏「ソフトシンセなどの16ビットCDスペックの音をあえてハイレゾで、というのは効果的な手法として用いられることがあります。そういう意味で面白い聴こえ方がすると思います」
●「君にピエロ」
LiSA「この曲は作詞・作曲の両方を担当しています。例えるなら、プロのシェフが作った料理ばかりのなかに、愛妻弁当が入っていることで、私自身の愛情の表現が出来ればな、と思って入れた曲です。笑 武道館2daysが終わったあとに、皆に届ける手紙として作りました。仮題としてピエロとつけていたのが、そのまま形として残ったタイトルですね」
岡村氏「LiSAが自分で作った曲をデモとして持ってくるとき、どういった感じか、ちょっと言葉では伝えづらいですね」
ここで特別にLiSAが曲を聴いてもらうためのデモとして録音した音源が会場で流された。自身でギターを弾いて、iPadの録音機能を使って録られたという音源に、会場は大いに盛り上がるも、LiSAは悲鳴を上げる。
LiSA「ちょっと、やめてー! 恥ずかしいー!笑」
岡村氏「これ、アコースティックギターの曲なのに、デモはエレキギターで、しかもアンプも通さずに弾いてるんですよ。笑 最初にガチャっていう、カセットテープのボタンを押して録音する、という演出が入っているのは、このデモにインスパイアされてます。歌詞も誰かに届ける、というような内容でしたので」
野村氏「エフェクトの音と、生の音の違いはハイレゾだと分かりやすいです。そういった演出の部分だったり、またアコースティックギターの生楽器の響きなんかも楽しめると思います」
これで試聴はひとまず終了。「Rising Hope」以外は全てフルで試聴、そしてトークも盛り上がったこともあり、気づけば結構な時間が過ぎていたが、来場者に疲れた様子はない。野村氏の言うように聴き疲れのしないハイレゾ音源と、それを再生する優れた機器、そして岡村氏とLiSAの他では聞けない裏話を心底楽しんでいたからだろう。締めとして、壇上の3人が感想を述べていく。
LiSA「最後に恥ずかしい思いをしました。笑 デビューから3年半が過ぎて、LiSAがやりたいことを怖がらずにさらけ出した、これまでの集大成とも言えるアルバムです。このカッコイイアルバムを引っさげて、またライブをしますので、ぜひ楽しみにしてください!」
岡村氏「若い頃に好きなアーティストのイベントとかに行ったときに何が楽しかったかを考えたんですが、表に見えてこない話を知ることが出来たことでした。だから今日は、そういったことが出せたらと思って話をしていました。LiSAが本当に真剣に音楽に向かい合って完成したこのアルバムを、皆さんに聴いてもらえたら嬉しいです」
野村氏「ハイレゾだからとしかめっ面して聴くということではなく、ただ楽しむためにハイレゾという媒体を利用して貰えればと思います。ロックって、ハイレゾと合うんです。もちろん、それ以外の曲も楽しめますし。このアルバムも、ハイレゾならではの音が楽しめる作品となっていると思います」
会場が拍手で包まれる。こうしてハイレゾ試聴会は大盛況のうちに終了……、というところでサプライズ企画が始まった。「ハイレゾ人格付けチェック」、名前から分かるように、2つの音源を聴いてどちらがハイレゾかを当てるというゲームだ。まずそこでふるいをかけて、最終的にはLiSAとじゃんけんをして勝者を決めるというルール。プレゼントはLiSAのサイン付きハイレゾウォークマン「NW-A16」。1名にのみ用意された、非常に狭き門だ。記事の最初でお伝えしたとおり、「Rising Hope」でハイレゾの違いを感じたと手を上げたのは僅かな人数。「そんなの分からないよ」という不安な声が漏れる会場で、果たしてどれだけの人がじゃんけん勝負に進めるのだろうか?
ここで流されたのは、壮大なバラード曲「シルシ」。誰もが、今日イチの集中力を発揮している。1回目、2回目と流されると、頷くようなリアクションを取る姿もあった。さて、試聴会でハイレゾを聴き込んだ参加者の答えは? ……ほぼ全員が正解。あまりの正解者数に、じゃんけん大会がメインになってしまったほどだ。広い会場だったので、リスニングポジションによる差が生じたのは否めない。もし、より適切な場所であれば、100%の正解率も実現しただろう。
それだけハイレゾの音楽は、違いがあると同時に、心に響くものがある。1曲1曲に込められた想いを、強く感じられるのだ。この試聴会で分かったのは、ハイレゾの良さと、作品に関わる多くの人が最高の音楽のために力を注ぎ込んでいるということ。聴けば今日もいい日と絶対に感じられるアルバム「Launcher」、3月4日の発売日が待ちきれない。
なお、今回の試聴で使われたのはソニーのオーディオ機器。ハイレゾの持つ情報量を明確に描き出した、かなりの実力機達だ。ソニーでは小型のモデルなどもラインアップされているので、ハイレゾ再生環境がまだ整っていない、という方にもお薦めしたい。
・HDDオーディオプレーヤー「HAP-Z1ES」
・プリメインアンプ「TA-A1ES」
・スピーカーシステム「SS-AR1」
※VOCALOIDならびにボーカロイドはヤマハ株式会社の登録商標です。
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