NEC、地上波デジタルを受信可能な携帯電話を発表!(1)
<左>試作機の隣にあるのは家庭用のアンテナ。ここから微弱電波を送出、携帯電話でキャッチする <右>画面上部の映像がなめらかに動く |
試作機は、携帯電話に搭載可能なサイズのアンテナ、UHFチューナー、OFDM復調LSI(直交周波数分割多重)を開発し、W-CDMA方式の第三世代携帯電話に搭載したもの。OFDM復調LSIには、昨年11月にNECエレクトロニクス社が製品化した「μPD61530」を搭載し、低消費電力化と極小パッケージ化を実現した。
なお、今回の試作機はNECが単独で開発したもので、NTTドコモなど携帯電話キャリアは全く開発に関わっていないとのこと。
地上波デジタル放送は今年の12月から東名阪でサービスが開始される予定。地上波デジタル放送では、一般家庭で受信できる「固定受信」と自動車などで受信する「移動受信」、携帯電話などで受信する「携帯受信」の3つのサービスが行われる予定だが、このうち12月からスタートするのは固定受信のみで、携帯受信はまだ仕様が固まっていない段階。携帯受信の開始は数年後と予想される。今回の試作機は、固定受信には対応せず、携帯受信のみが行えるものとなっている。
携帯受信についてNECは、映像・音声のみならず、データ放送も同時に送出することで、たとえば視聴者がクイズやオークションに参加したり、番組関連の詳細情報を得られると説明。また、テレビショッピング番組などで商品の説明を見ながら、ダイレクトに購入申し込みや決済まで行うような用途が考えられるとした。
携帯受信の主な使い方として、NECでは通勤・通学時の視聴を想定。同社が行った調査でも通勤・通学時に使いたいとする意見が多かったという。今回の試作機では装備されていないが、録画機能を搭載することで、タイムシフト再生も行えるようにしたいと説明した。
試作機のバッテリーには、通常の携帯電話と同じリチウムイオンを採用。フル充電時で地上波デジタル放送の連続受信を行った場合、1時間強の視聴が可能とのことだ。同社では「これで十分とは全く考えていない。1時間の視聴が終わったとき、さらにあと1時間の連続通話ができるのが製品化の際の最低要件」とした上で、「燃料電池などを使わない限り、バッテリーの劇的な性能向上は望めない。むしろデバイスの低消費電力化や、ソフトウェアのアルゴリズムを最適化することで、長時間使用を実現したい」とした。
また、製品化の際の価格については同社は、「現行の携帯電話の2倍・3倍になるようなことはない。ラインナップの中にあって違和感のない価格を実現できる。ある雑誌で『放送受信機能が付加される際、6,000円から7,000円の価格アップなら許容できる』というユーザーの意識調査結果が紹介されていたが、このあたりが目安となると考えている」と説明した。
発表会の最後に、試作機を使ったデモが行われた。地上波デジタル放送の試験電波が送出されていないため、OFDM変調器から室内アンテナを使い、疑似的に放送環境を再現。前述したように放送の仕様が定まっていないが、本日は映像に160kbps程度のMPEG4、音声は48kbpsモノラルのMPEG2-AACが採用された。解像度は4対3時で160×120ピクセル、16対9時で160×90。ただし、この解像度は試作で使用した3G携帯電話のメディア処理性能の都合だといい、本放送が行われるときにはさらに高解像度化される可能性もある。
画面は2インチ程度の液晶モニターで、放送はその上半分程度のスペースに表示される。番組内の文字もしっかり読め、動きも滑らか。番組の大枠をつかむには十分な画質、といった印象だ。
なお、本発表会席上で行われた質疑応答の全問全答を、後ほど別項でご紹介する。
(Phile-web編集部)