HD DVD普及拡大の牽引車 − “新VARDIA”の魅力を東芝・片岡氏に聞く<後編>
東芝のHD DVDレコーダー“VARDIA”「RD-A600」と「RD-A300」の発売もいよいよ近づいてきた。今回はその新製品の魅力を開発担当者である(株)東芝 デジタルメディアネットワーク社 デジタルAV事業部 DAV商品企画 商品企画担当 グループ長 片岡秀夫氏にうかがった。
前回のレポートでは基本的な操作性について改善されたポイントを中心に、片岡氏へのインタビューを交えながらご報告した。筆者の印象としては何となくもっさりとしたイメージを持っていた、RDシリーズのインターフェースの動作が、一転してキビキビと動くようになったのは衝撃的だった。
前回は「インタビュー後編では新しい“VARDIAシリーズ”がHD DVDレコーダーとしての魅力を最大限に発揮するであろう、機能の詳細をご紹介しよう」と、思わせぶりに締めくくったのだが、まずはその筆者が注目している、新しいRD-A600が搭載した「RD間 i.LinkダビングHD」の機能からご紹介しよう。
(インタビュー/鈴木桂水)
片岡氏:「RD間 i.LinkダビングHD」は、i.Link搭載のVARDIA・RDシリーズで録画したハイビジョン番組をRD-A600/A300に移動(ムーブ)して、HD DVDメディアに残せるという機能です。注目していただきたいのは、2005年に発売されたi.LINK搭載機「RD-X6」にまで対応しますので、いまVARDIAやRDシリーズをお使いいただいている方も、HD DVD環境へ移行しやすくなります。
HD DVDは、デジタル放送だけでなく、ビデオ画質(VRモード)で録画した番組もHD DVDに無劣化で記録できるので、将来HD DVDメディアが安くなったときに、DVDよりも多くの番組を1枚のティスクに記録でき、コンパクトなライブライリーを作ることができます。DVDフォーラムが次世代DVDとして承認するHD DVDだからこそ、こういった使い方ができるのです。
「RD間 i.LinkダビングHD」機能に対応する製品を上に列挙した。この機能の搭載により、上記製品に録画したデジタル放送の番組を無劣化でHD DVDにアーカイブできるようになった。考え様によっては、これらの製品をRD-A600/A300用のチューナー付きHDDレコーダーとして活用できそうだ。また「RD間 i.LinkダビングHD」は今後もHD DVDレコーダーで継承される機能だと推測できるので、RD-A600/A300に手が届かないユーザーでも、HD DVD規格が存続される限り、今後発売される後継機を待ってHD DVDに移行してもいいだろう。
今回、東芝の広報に「RD間 i.LinkダビングHD」に対応する製品の出荷台数を問い合わせたところ、残念ながら非公開とのことだった。ただ現在HDD&DVDレコーダーのRD-S600が一部店舗で品薄になるほどの売れ行きを示している。これら“隠れHD DVD対応機”の数を含めれば、すでに録画市場でリードしているBlu-ray Disc陣営とのシェアのギャップを少しでも縮められるのではないだろうか。
ちなみにi.Linkを使った録画機器間のダビング機能は、Blu-ray Disc陣営では松下電器産業のDMR-BW200、シャープのBD-HP1、BD-HD100も対応している。どちらもBDレコーダー側のi.Link入力を使えば対応するHDD&DVDレコーダーに保存したデジタル放送の番組をBDメディアに無劣化で保存可能だ。
RD-A600/A300は付属するリモコンが大幅に変更されている。ここにも片岡氏のこだわりが満載されているという。今まではきちんと紹介されてこなかったUSBキーボードによる操作の使いこなし方についても、あらためて聞いみた。
片岡氏;新デザインのリモコンは手元を見なくても直感的な操作ができるようなレイアウトにしています。たとえば、「再生」「一時停止」「停止」は他のボタンよりも一段高い構造になっています。「戻る」と「終了」ボタンを近くに配置することで、各種操作画面から抜けやすくしました。また新たに「番組表」ボタンを備えたことで、番組ナビを経由しなくても番組表が表示できるようにしました。リモコンのサイドにはスライドスイッチを配したので、10キーによるダイレクトなチャンネル切り替えを実現しています。これによりRD-A600/A300をデジタルチューナーとして使う場合でも快適に操作していただけると思います。
USBキーボードを接続すればリモコンを使うよりも快適な操作ができるようになります。「番組ナビ」、「編集ナビ」もキーボード操作でダイレクトに表示します。ワイヤレス方式のキーボードを使えば本体から離れたところからも操作ができます。
片岡氏へのインタビューを通じて、RD-A600/A300の機能から最も興味深い部分もののいくつかを、発売前に先取りしてご紹介できたと思う。筆者の感想としては、普及価格帯のHD DVDレコーダーというよりも、録画機のRDシリーズの集大成といった印象を受けた。と言うのも現時点ではHD DVDメディアの価格は高く、現実味を感じないのが原因だと思っている。たとえば、筆者の調査では25GBのBD-Rメディアは、パック購入なら1枚あたり1,200円程度で手に入るほど価格がこなれてきている。激安セールの際には1枚1,000円まで値下がりしたこともあった。一方のHD DVDメディアは15GBで、25GBのBDメディアとほぼ同程度の価格になっている。
片岡氏は「メディアの価格は今回のRD-A600/A300の登場で、徐々に下がるのではないか」との観測を持っている。たしかに現在のHD DVDの価格は数少ないRD-A1ユーザーが使用するためのものであり、店頭での流通もほとんどなかった言われている。それが普及価格帯のRD-A600/A300の登場で、HD DVDのメディアの価格にも大きな影響を及ぼしてくることが予測される。HD DVD陣営のアナウンスでは、「HD DVDメディアは従来のDVDメディアの製造ラインを利用できるのでコストダウンしやすいのがメリット」と言われ続けてきた。今後メディアの価格が下がれば、次世代の記録ディスクとして注目度はさらに上がるだろう。
また、現時点ではあまり公に話題とされていないが、RD-A600/A300からデジタル放送のデータ記録が廃止になった。RD-A1では片面1層のHD DVDメディアへの録画時間は地上デジタルのハイビジョン放送(TSモード・HD品質、音声AAC5.1ch時)で1時間55分しか録画できず、あと一歩のところで2時間の映画を丸ごと保存できなかった。しかし今回の機種では、データ放送部分を記録しないことで地上デジタル放送のハイビジョン番組を2時間以上、録画することが可能になった。ただし録画時間については番組の内容により増減するので、現時点では明確にできない。こちらは実機が届きしだい検証し、本サイトでご報告する予定だ。
RD-A600/A300が搭載した、RD間 i.LinkダビングHD機能、データ放送の記録廃止による長時間録画の実現に加え、HD DVDメディアの低価格化が実現すれば、HD DVD規格はかなり身近な存在になりそうだ。HD DVD規格の可能性への認識を新たにしたインタビューだった。
鈴木桂水(Keisui Suzuki)
元産業用ロボットメーカーの開発、設計担当を経て、現在はAV機器とパソコン周辺機器を主に扱うフリーライター。テレビ番組表を日夜分析している自称「テレビ番組表アナリスト」でもある。ユーザーの視点と元エンジニアの直感を頼りに、日経BP社デジタルARENAにて「使って元取れ! ケースイのAV機器<極限>酷使生活」、徳間書店「GoodsPress」など、AV機器を使いこなすコラムを執筆中。
>>鈴木桂水氏のブログはこちら
前回のレポートでは基本的な操作性について改善されたポイントを中心に、片岡氏へのインタビューを交えながらご報告した。筆者の印象としては何となくもっさりとしたイメージを持っていた、RDシリーズのインターフェースの動作が、一転してキビキビと動くようになったのは衝撃的だった。
前回は「インタビュー後編では新しい“VARDIAシリーズ”がHD DVDレコーダーとしての魅力を最大限に発揮するであろう、機能の詳細をご紹介しよう」と、思わせぶりに締めくくったのだが、まずはその筆者が注目している、新しいRD-A600が搭載した「RD間 i.LinkダビングHD」の機能からご紹介しよう。
(インタビュー/鈴木桂水)
片岡氏:「RD間 i.LinkダビングHD」は、i.Link搭載のVARDIA・RDシリーズで録画したハイビジョン番組をRD-A600/A300に移動(ムーブ)して、HD DVDメディアに残せるという機能です。注目していただきたいのは、2005年に発売されたi.LINK搭載機「RD-X6」にまで対応しますので、いまVARDIAやRDシリーズをお使いいただいている方も、HD DVD環境へ移行しやすくなります。
HD DVDは、デジタル放送だけでなく、ビデオ画質(VRモード)で録画した番組もHD DVDに無劣化で記録できるので、将来HD DVDメディアが安くなったときに、DVDよりも多くの番組を1枚のティスクに記録でき、コンパクトなライブライリーを作ることができます。DVDフォーラムが次世代DVDとして承認するHD DVDだからこそ、こういった使い方ができるのです。
「RD間 i.LinkダビングHD」機能に対応する製品を上に列挙した。この機能の搭載により、上記製品に録画したデジタル放送の番組を無劣化でHD DVDにアーカイブできるようになった。考え様によっては、これらの製品をRD-A600/A300用のチューナー付きHDDレコーダーとして活用できそうだ。また「RD間 i.LinkダビングHD」は今後もHD DVDレコーダーで継承される機能だと推測できるので、RD-A600/A300に手が届かないユーザーでも、HD DVD規格が存続される限り、今後発売される後継機を待ってHD DVDに移行してもいいだろう。
今回、東芝の広報に「RD間 i.LinkダビングHD」に対応する製品の出荷台数を問い合わせたところ、残念ながら非公開とのことだった。ただ現在HDD&DVDレコーダーのRD-S600が一部店舗で品薄になるほどの売れ行きを示している。これら“隠れHD DVD対応機”の数を含めれば、すでに録画市場でリードしているBlu-ray Disc陣営とのシェアのギャップを少しでも縮められるのではないだろうか。
ちなみにi.Linkを使った録画機器間のダビング機能は、Blu-ray Disc陣営では松下電器産業のDMR-BW200、シャープのBD-HP1、BD-HD100も対応している。どちらもBDレコーダー側のi.Link入力を使えば対応するHDD&DVDレコーダーに保存したデジタル放送の番組をBDメディアに無劣化で保存可能だ。
RD-A600/A300は付属するリモコンが大幅に変更されている。ここにも片岡氏のこだわりが満載されているという。今まではきちんと紹介されてこなかったUSBキーボードによる操作の使いこなし方についても、あらためて聞いみた。
片岡氏;新デザインのリモコンは手元を見なくても直感的な操作ができるようなレイアウトにしています。たとえば、「再生」「一時停止」「停止」は他のボタンよりも一段高い構造になっています。「戻る」と「終了」ボタンを近くに配置することで、各種操作画面から抜けやすくしました。また新たに「番組表」ボタンを備えたことで、番組ナビを経由しなくても番組表が表示できるようにしました。リモコンのサイドにはスライドスイッチを配したので、10キーによるダイレクトなチャンネル切り替えを実現しています。これによりRD-A600/A300をデジタルチューナーとして使う場合でも快適に操作していただけると思います。
USBキーボードを接続すればリモコンを使うよりも快適な操作ができるようになります。「番組ナビ」、「編集ナビ」もキーボード操作でダイレクトに表示します。ワイヤレス方式のキーボードを使えば本体から離れたところからも操作ができます。
片岡氏へのインタビューを通じて、RD-A600/A300の機能から最も興味深い部分もののいくつかを、発売前に先取りしてご紹介できたと思う。筆者の感想としては、普及価格帯のHD DVDレコーダーというよりも、録画機のRDシリーズの集大成といった印象を受けた。と言うのも現時点ではHD DVDメディアの価格は高く、現実味を感じないのが原因だと思っている。たとえば、筆者の調査では25GBのBD-Rメディアは、パック購入なら1枚あたり1,200円程度で手に入るほど価格がこなれてきている。激安セールの際には1枚1,000円まで値下がりしたこともあった。一方のHD DVDメディアは15GBで、25GBのBDメディアとほぼ同程度の価格になっている。
片岡氏は「メディアの価格は今回のRD-A600/A300の登場で、徐々に下がるのではないか」との観測を持っている。たしかに現在のHD DVDの価格は数少ないRD-A1ユーザーが使用するためのものであり、店頭での流通もほとんどなかった言われている。それが普及価格帯のRD-A600/A300の登場で、HD DVDのメディアの価格にも大きな影響を及ぼしてくることが予測される。HD DVD陣営のアナウンスでは、「HD DVDメディアは従来のDVDメディアの製造ラインを利用できるのでコストダウンしやすいのがメリット」と言われ続けてきた。今後メディアの価格が下がれば、次世代の記録ディスクとして注目度はさらに上がるだろう。
また、現時点ではあまり公に話題とされていないが、RD-A600/A300からデジタル放送のデータ記録が廃止になった。RD-A1では片面1層のHD DVDメディアへの録画時間は地上デジタルのハイビジョン放送(TSモード・HD品質、音声AAC5.1ch時)で1時間55分しか録画できず、あと一歩のところで2時間の映画を丸ごと保存できなかった。しかし今回の機種では、データ放送部分を記録しないことで地上デジタル放送のハイビジョン番組を2時間以上、録画することが可能になった。ただし録画時間については番組の内容により増減するので、現時点では明確にできない。こちらは実機が届きしだい検証し、本サイトでご報告する予定だ。
RD-A600/A300が搭載した、RD間 i.LinkダビングHD機能、データ放送の記録廃止による長時間録画の実現に加え、HD DVDメディアの低価格化が実現すれば、HD DVD規格はかなり身近な存在になりそうだ。HD DVD規格の可能性への認識を新たにしたインタビューだった。
元産業用ロボットメーカーの開発、設計担当を経て、現在はAV機器とパソコン周辺機器を主に扱うフリーライター。テレビ番組表を日夜分析している自称「テレビ番組表アナリスト」でもある。ユーザーの視点と元エンジニアの直感を頼りに、日経BP社デジタルARENAにて「使って元取れ! ケースイのAV機器<極限>酷使生活」、徳間書店「GoodsPress」など、AV機器を使いこなすコラムを執筆中。
>>鈴木桂水氏のブログはこちら