08年度の業績予想を下方修正
過去最大3,450億円規模の構造改革実施へ −パナソニックが3Q連結業績を発表
2008年度の業績予想を下方修正− 純利益は3,800億円の赤字に
次に2008年度の連結経営見通しについて説明が行われた。昨年11月27日に修正発表された2008年度の連結通気業績予想は、国内外における一層の市況悪化や販売減、加えて円高の進行を受けた為替レートの見直しによる収益悪化を見込み、さらに下方修正された。新たに示された予測数値は売上高がマイナス7,500億円となる7兆7,500億円、営業利益はマイナス2,800億円の600億円。営業利益については黒字を確保するものの、純利益については事業構造改革費用の追加計上により、3,800億円の赤字が見通された。営業利益の予測悪化要因については「景気減速・競争激化、為替の影響」が示された。
本年度の事業構造改革費用については、前回公表された金額に1,900億円を追加し、新たに3,450億円の見通しが示された。構造改革の内容には「国内外合計27の製造拠点等の統廃合」「事業の撤退と固定資産の減損」「人員の再配置・削減」などが含まれる。上野山氏は「これらの効果として2009年度には1,000億円のコスト削減効果を見込んでいるが、引き続き構造改革に取り組むとともに、緊急経営対策を実施して他社のどこよりも早く立ち直れるよう、経営体質強化を徹底する」と語った。
2009年度の経営体質強化に向けた「緊急経営施策」としては、「役員報酬の最大20%返上」「管理職報酬の5%返上」を今月よりすぐに実施することが発表された。またすべての事業場で管理可能経費の削減も行われる。
また来期の黒字化に向けた取り組みとして、既に1月に実施された年頭会見でも明らかにされた通り(関連ニュース)、薄型テレビやアプライアンスなど成長事業での収益基盤構築、不採算事業の改革と撤退、伸びる事業分野への仕込みと強化を加速していくことなどが改めて宣言された。
本日の記者会見で行われた質疑応答の主な内容をご紹介する。
Q:今回、過去最大規模の費用を投じた構造改革計画が示されたが、これまで行ってきたテレビ事業への投資について、今日の状況にあって、当時の判断に間違いはなかったと思うか。
A:テレビ事業が成長基盤確立におけるメインであることに変わりはない。ただ今日の状況が厳しいことは確かで、台数ベースで伸長してはいるものの、低価格化の影響を受けて金額ベースでは前年割れになってしまっている。しばらくはこの傾向が続くものと見ているが、いま当社がテレビ事業を撤退することは有り得ない。何としてもこの消耗戦を乗り越えるため、生産拠点の統廃合や調達、開発面、そして設備の減損などを含めて収益改善に徹底して取り組みたい。
Q:2001年に実施した構造改革との大きな違いはどこにあると考えているか。また、当時の改革のように「V字回復」を実現できると見込んでいるか。
A:当時との大きな違いは経済環境。100年に一度と言われている経済不況の中、金融・実体両方の経済環境が縮小しつつある。しかも、まだ底の見えない状況が1〜2年は続くだろう。この状況に打ち勝つために経営体質の強化が大事と考えている。今回はそのために厳しい構造改革プランを打ち出した。
Q:製造拠点の統廃合とあるが、国内のターゲットはどこに当たるのか。また不採算事業についてはどの部門とみているか。
A:統廃合の対象は既に発表した通りだ。海外もマレーシアの部品会社などが統廃合に向けて動いている。今回の計画については費用面以外にまだ具体的なことは言えない。
Q:人員の再配置と削減について詳細は決まっているのか。
A:まずは伸びる事業、撤退する事業をそれぞれきちんと整理して、拠点の見直しを進める。その対応の中で人員の課題に取り組むことになるだろう。雇用を守るという考え方は大事と考えているが、それでも不採算事業については再配置や削減がおこるのはやむお得ないと考えている。規模については今年度、来年度でグローバルに15,000人を検討しており、内訳は国内・海外で半分ずつ。国内の対象には非正規社員も含まれている。
Q:三洋電機の買収は計画通り行うのか。TOBの時期はいつ頃を計画しているのか。
A:三洋電機のTOBについては、いま諸条件をクリアにしているところ。今年の2月下旬までに、いったんTOBの進捗をご報告したいと考えている。三洋電機との協業ついては、まだコラボレーションを少し開始したばかり。具体的な内容についてはまだお知らせできないが、グループとしての成長事業の一つになるであろう電池事業を中心に、シナジーを生み出していくという考え方は変わっていない。
Q:年頭会見において撤退事業の基準を示していたが、成長事業での基盤構築を進めていくに当たって、一付の見直しは今後有りうるのか。
A:2006年度以降、3年連続して赤字となっている商品・事業は撤退するという決定は、年頭に大坪社長が発表した考え方の通りだ。海外撤退基準についても設けられており、これに従って断行していく。成長事業については「ABCDカルテット」を軸に進めていくことに変わりはない。その中にはテレビ事業も含まれており、来期に向けて新たな収益基盤を確立していく考えだ。
Q:このままの経済環境が続くようであれば、来期に突入しても数千億規模の営業赤字になると思うが、その上で黒字を確保していく見通しはあるのか。
A:今期も第4四半期は2,000億円近い赤字を見込んでいる。その大きな要因が販売減。6割がB to B関連での悪化だ。当社ではいま、来年もこの状況が続くとみて、収益をあげるための計画を練っているところだ。詳細は次の経営計画の発表時にお知らせしたい。
Q:薄型テレビの生産投資に関連して姫路工場、尼崎工場の稼働時期の延期は具体的に決まっているのか。
A:IPSα姫路工場は、2010年1月からの生産開始予定を同年7月に延期したことを既に発表している。同様に尼崎のPDP国内第5工場は今年の5月稼働を予定していたが、11月の試験運転開始、来年1月の量産開始で計画を進めている。
Q:いまの不況から回復する手だてはどこにあると考えているか。また現在の環境が続くことにより、生産を海外にシフトしていくこともあり得るのか。
A:いまの不況から回復したところで、人々の消費傾向が全く元に戻るとは考えていない。仮に景気は回復したとしても、消費の中心は低価格商品に移ってしまうのではないだろうかと思う。これからは普及商品を伸ばして行くことも大事であると実感している。生産体制の海外シフトについては、既にかなりの部分を完了しているので、今から何かを急激に変えていくことはないだろう。ただ、これまで日本で行ってきたがテレビの組み立てについて、モジュール部分の生産を海外に移すことも今後あり得るかもしれない。また成長領域として考えているアプライアンス商品は、グローバル展開を確立するために、海外生産を行うこともあるだろう。
Q:普及商品が大事と考えているのであれば、まずは30インチ台型がメインの姫路工場を先にスタートさせるべきではないのか。またテレビ事業にウェイトを置くのであれば、有機ELにもっと力を入れる必要があるのでは。
A:30インチ台の薄型テレビが普及を拡大しており、ウェイトが大きいことは確かだが、現在当社が備える生産体制で当面まかなえるものと考えており、姫路の新工場については現在の計画通りで問題ないと判断している。有機ELについてもまだ一気に市場が確立されるとは見ていない。今は他社に後れを取らないよう、市場が大きく変化した際に素早く対応できる体制を整えている段階だ。