ソニービジュアルプロダクツ 桝賢吾氏に訊く
【CES】ソニー新4Kブラビアの実力は? 「ハイレゾ」「HDR」「Android TV」をキーマンが語る
なお、同機種の狙いは壁掛け設置で、米国やドイツではテレビ購入者の約3割が実際に壁にかけて設置しているという。そこで本機では、排熱口が上向きの構造を採用し、壁にぴったり付けられるようにした。壁掛けの場合でも、40ミリ程度の奥行きで設置できるようになっているという。
なお、75インチのみ若干厚く、型番も「X910C」と異なっている。さらにエントリー向け4Kブラビアとして「X850C」も展開し、こちらは43/49/55/65インチをラインナップする。
■Androidをテレビに搭載するメリットとは?他社との差異化ポイントは?
2015年の同社製テレビで大きく注目されたのが、4Kブラビア全機種へのAndroidプラットフォームの採用だ。同プラットフォームの採用理由については筆者も取材に参加したこちらのインタビュー記事が詳しいが、商品企画のレベルでも改めて紹介していこう。
まず、なぜソニーがスマートTVのプラットフォームにAndroidを採用したのだろうか。この点について桝氏は「Android TVのメリットは大きく3つあります。一つは、まずアメリカだとGoogle Castに対応しているということです。アメリカではGoogle Castを受けるスティック(Chrome Cast)が30ドル程度で売られています。言うなれば、その製品がテレビに内蔵されているようなものでして、スマートフォンやタブレットと連携して動作できます。現在、Android版のアプリはかなりの数がGoogle Castに対応していまして、例えばNetFlixもタブレットで検索をしてテレビで再生させるという操作ができます。YouTubeなど一部のコンテンツではiOSの端末でも可能です」と説明する。
日本では考えられないほどの水準でNetFlixが普及している米国、およびグローバル市場では、Android TV採用による使い勝手の向上が想像以上に大きいようだ。会場ではタブレットとTVを連動させて番組を観るデモを行っており、その機能の有用さはすぐに確認できた。
2つめの売りとなっている機能はアプリ対応という点。会場のデモでは特にゲームを強調していた。
「今、Android TV対応アプリは100くらい公開されていて、スマートフォンと同じくGoogle Playでダウンロードできるのですが、いろんな方の興味を引いているのがゲームです。テレビ用とスマホ用のアプリの差は解像度との違いくらいしかなく、ソースコードも同じものが利用できるため、タッチ操作の問題さえクリアできればタブレット用のアプリは移植性が高いとみています」という。
そして同社が3つ目の売りとして見てるのはサーチ、特に音声検索だ。
「薄型テレビでコンテンツを検索をする際、リモコンでのキーワード入力が煩わしいという話が出ていましたので、リモコンから音声検索ができるようになっています。標準でGoogleの音声認識エンジンを使えて、42か国の言語に対応しています」
聞く限りでは、これらのはブラビア独自のものではなくAndroid TVの特徴そのものであるように思える。だが「我々が『ワンフリックエンターテイメント』と呼んでいるバーの操作はソニーの独自仕様を受け継いでいますし、PlayStation NowのゲームやVideoUnlimitedなど、ソニーのユニークなサービスもそのまま継承しています」と、他社との差異化ポイントも盛り込んでいるという。
なお、ソニーは台湾のMediaTek社とソニーの独自仕様を組み込んだLSIの共同開発、SoCの実装設計で協業を行っている。これは高画質エンジンの「X1」とは別のアプリケーションを動かすためのチップとなっており、多機能なAndroid TVとして高速に動作するよう開発したものだ。ちなみに、デジタル放送のデコードもこちらの担当だ。
2015年のブラビアの製品ラインナップは、4KにHDR対応、さらにハイレゾオーディオにAndroid TV採用と、高画質、高音質、そしてスマートTVとして徹底的に機能を差別化したことが印象的だ。ソニーから分社化したソニービジュアルプロダクツが魂を込めたテレビとして、期待したい2015年注目モデルといえるだろう。