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ビートルマニアの大橋伸太郎がレポート

最高の音質で蘇った ザ・ビートルズ の新デジタルリマスター盤を聴いた!

公開日 2009/08/25 00:19 大橋伸太郎
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ステレオ盤ボックスセット「The Stereo Albums」(35,800円)

初回生産限定の「The Beatles In Mono」(39,800円)
既報の通り、ザ・ビートルズのデジタル・リマスター盤CDが、いよいよ9月9日に全世界で発売される。1987年以来の新リマスター盤となるこれらの作品のリマスター作業は、EMIのアビー・ロード・スタジオでエンジニアチームが4年がかりで行ったという。

ステレオ盤12タイトルに加え、1987年の初CD化に際し、ビートルズのコア・カタログに加えられた「マジカル・ミステリー・ツアー」、今回1タイトルにまとめられた編集盤の「パスト・マスターズvol.1/Vol.2」で構成された全14作がCD化されて分売されるほか、ミニドキュメンタリーをまとめたDVDを加えたステレオ盤ボックスセット「The Stereo Albums」(35,800円)も発売。さらにモノラルバージョンをボックスセットにした「The Beatles In Mono」(39,800円)も初回生産限定で販売される。

7月上旬にエンジニアが来日し、東京・恵比寿のマランツショールームでリマスター盤の試聴会が開催。一部楽曲の新旧盤を、B&W「802D」とクラッセのシステムで比較試聴することができた。アビー・ロード・スタジオで数多くのB&Wスピーカーが使われているため、エンジニアのリクエストによりマランツショールームが試聴会場に選ばれたのだ。

本稿では、この試聴会に参加したAV評論家きってのビートルマニアである大橋伸太郎氏が、新リマスター盤の魅力をレポートする。(編集部)



「時間がありますので、リストにある14曲以外に3曲だけ、ご希望の曲を新リマスターで再生しますので、聴きたい曲はありますか?」

9月9日に全世界でリリースされるザ・ビートルズのデジタル・リマスター盤CDの試聴会を始めるにあたって、EMIの担当者が会場に詰めかけた報道陣に訊ねたので、手を挙げて「『エリナー・リグビー』を」とお願いした。

「ツイスト&シャウト」(『プリーズ・プリーズ・ミー』)から「カム・トゥゲザー」(『アビイ・ロード』)まで、現行CDと今回のステレオ音源リマスターの聴き比べが進行。最後に私のリクエスト「エリナー・リグビー」がプレイバックされた。

ご存じの方は多いと思うが、この曲のステレオバージョンは、ポールの歌い出しの最初の“Elenor”の“Ele”だけがL,R両チャンネルから聞こえ、すぐに右チャンネルだけの再生になる。わざとそうしたのでなく、1966年にジョージ・マーティンがステレオミックスを作った時のミスである。

緊張しながら耳を済ませたが、新リマスターのポールはやはり最初“Ele”で両チャンネルに現れ、その後は右チャンネルに移って最後まで歌い続けた。ノイズによる高域の荒さが改善され、くっきりと立体的になった端正な音を聴きながら、ホッと安堵に胸を撫ぜ下ろし、次にやや拍子抜けした思いを味わった。

私に限らず、ザ・ビートルズのファンは神聖なビートルズの音源を「いじってほしくない。発表当時にあったあるがままの音で聴きたい」気持ちと、「新しい何かが出てきて欲しい」気持ちのアンビバレンツを抱えている。ご承知の通り、ビートルズのオリジナルアルバム全13作(1987年のCD化の時点で、当初アメリカ編集盤として発売された『マジカル・ミステリー・ツアー』をオリジナルアルバムに昇格させている)の現行CDに、ボーナストラックは1曲も追加されていない。

ロックとポップミュージックの新約聖書であるビートルズのアルバムと音源は、足したり引いたりしてはならない聖典だった。今回初めて最新テクノロジーを使って、そのすべてにノイズ除去を始めデジタルリマスターの手が施されたのである。デジタルリマスターには『レット・イット・ビー・ネイキッド』『LOVE』という先例はあるが、それらはオリジナルアルバムとは別の外伝的作品である。今回のステレオ/モノによる新リマスター全集が、レコード史上の一つの事件である所以である。

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