新CMOSセンサー「Exmor R」搭載
“一眼画質”は伊達じゃない − ソニー新“Cyber-shot”「DSC-WX1」驚異の実力
●「人物ブレ軽減モード」の驚くべき威力
室内での静物と夜景の撮影にすっかり満足したので、次は動いている写真を撮ってみることにした。翌日、起きてみると曇天で、室内はやはり薄暗い。この状態で、落ち着きなく動き回る3歳の息子を撮ってみたら、やはりシャッタースピードが追いつかず、「おまかせオート」のままではさすがにブレてしまう。ならばと、モードダイヤルを「人物ブレ軽減モード」に設定してシャッターを押してみた。これは「手持ち夜景モード」と同様、6枚の高速連写を行い、1枚の画像を合成するというもの。この効果はてきめんで、被写体ブレが著しく改善され、「こんなにキレイに撮れちゃっていいの?」と思わずカメラに問いかけたくなるほど鮮明な写真が撮れた。ノイズの少なさについては、もう改めて説明するまでもないだろう。
子供を撮るときは何かと焦っているシチュエーションが多いので、複雑な設定を、時間をかけて行うのは至難の業。モードダイヤルを回すだけで一発で設定できるのはありがたい。これまで撮りたくても撮れなかった写真が、かんたんな操作で撮影できることに感動すら覚えた。
「すごいだろ」と撮影した画像を家族に見せびらかした後、屋外でも撮影してみようと公園に出かけてみた。まず木々の葉や草の表現を見てみると、ここまで細密に映るのか、と驚かされるほどの解像感。スナップ撮りにも十分な性能を備えていることが実感できた。なお本機は、シャッターボタンを押してから本体を移動させることで、最大256度のパノラマ画像が撮影できる「スイングパノラマ」機能も備えているので、迫力のある写真を手軽に撮影することができる。
屋外で撮る人物の肌の色合いも実に自然な印象だ。オートフォーカスの合焦速度も俊敏なので、動き回る子供の表情も逃さず捉えることができる。また連写ボタンを押し込めば秒間10コマの連写が可能で、しかも本体で再生する際は、連写画像が自動的にグループ表示される。このとき、被写体が人物の際は、カメラが連写画像を解析し、一番よく撮れた映像を代表画像として見せる機能まで搭載している。
被写体にレンズを近づけると、自動的にマクロモードに移行するのも便利だ。公称値ではワイド端で約5cmまで寄ることができ、ギリギリまで接近するとボケ味を活かした撮影も楽しめる。
最近はデジカメの動画撮影機能向上が著しいが、本機も720p/30fpsのMPEG4 ハイビジョン動画を撮影できる。試してみたところ、動画については過度な期待はできないと感じた。ビデオカメラのようにズーミングが滑らかに動作しないのは仕方がないとして、レンズを動かすモーター音が大きく記録されてしまう。また、音声はモノラルのみというのも残念だ。動画サンプルを掲載するので、レンズ音などを確認してみて欲しい。
さらに言えば、本機はHDMI端子を備えていないので、ハイビジョン出力はアナログ接続のみとなる。言わずもがなだが、最近のテレビはHDMI端子の数が増え、逆にアナログ端子は削減される傾向にある。本機は音楽つきスライドショー「音フォト」機能など、テレビでの表示機能を充実させているだけに、HDMI端子が搭載されていないのは残念だ。ただし基本的な画質性能は高いので、あまりズームを使用しないようにして撮影すれば、十分に活用できるだろう。
●キャッチコピー「一眼画質」は大げさではない
本機を一通り使った後、さっそく家電量販店に価格をチェックしに行ったら、本機に付けられた「一眼画質」というキャッチコピーが目にとまった。本機では一眼のようなボケ味は期待できないし、もちろんレンズを換えられるわけでもない。全面的に同意はできないものの、Exmor RとBIONZの合わせ技が実現する暗所/低照度下でのノイズの少なさについては、このキャッチコピーは決して大げさではないと感じた。
高度な機能を備えながら、ほとんど自動で綺麗な画像が撮影できる点も特筆できる。カメラ売り場にはよく撮影サンプルが置いてあるが、これまでは一瞥した後に「どうせ三脚を使って、設定を色々といじらないと撮れないんでしょ」と自分の腕のなさを棚に上げて僻むことが常だった。だが本機については「本当にこんな写真が撮れそうだ」と素直に思える。数年前のコンパクトデジカメを使っている方なら、本機の性能に目を瞠ることうけあいだ。
なお本機には、同じセンサーを搭載し、ほぼ同等の撮影機能を備えながら、スリムなボディやタッチパネルディスプレイを実現した兄弟機「DSC-TX1」も存在する。ライフスタイルや用途に応じて選択したい。