データベース型複数枚超解像など高画質化技術の実力はいかに!?
ソニー 新〈ブラビア〉に搭載の新高画質回路「X-Reality PRO」の真価とは − 貝山知弘・折原一也が見た次世代エンジンの実力
ソニーから液晶テレビ〈ブラビア〉の新モデルが発表された。なかでも、フラグシップ機「KDL-HX920」シリーズをはじめとする上位3モデルは、データベース型複数枚超解像を搭載した新高画質回路「X-Reality PRO」を搭載。高画質化の大きなカギを握る新高画質回路の魅力を、評論家の貝山知弘氏と折原一也氏が語り合った。
■テレビの役割は「映像ソースをより高画質に映す」ことにシフト
― 今回は、新〈ブラビア〉に搭載された新高画質回路「X-Reality PRO」がテーマです。前半は「X-Reality PRO」とは何かという詳しい解説、後半はお二人の画質インプレッションを語っていただきます。
本題に入る前に現状を見渡しますと、最近の薄型テレビでは、高画質回路の重要性がますます増してきているように思えます。この背景についてご説明いただけますか。
折原 はい。高画質な映像ソースといえばブルーレイが代表的ですが、実際のテレビの使い方はそれだけではありません。地デジをはじめとする放送波や、最近ではネット動画もあります。YouTubeTMなど画質がそれほど良くないネット動画を視聴できるテレビも増えていますし、映像の解像度もフォーマットも、ますます多様化しています。
こういったことを背景に、テレビに求められる役割が「入ってきたソースをそのまま映す」ことから「より高画質に映す」ことに移ってきていますよね。ですから、映像をより美しくするエンジンの性能が非常に重要になってきます。
貝山 私はとにかく毎日映画ばかり観ている人間なのですが、その中にはブルーレイなど高画質なものばかりでなく、DVDなどSD画質のものも多くあります。
そういった、今までのDVDの資産もきっちり再生したいとずっと思っていまして、レストアや高精細化を行うプロ用の技術にも強い興味を持っています。
こういったことを普通のテレビでできたら、という思いがあったのですが、「X-Reality PRO」が今回、まさにそこへアプローチしてくれたので、かなり感激しています。
― ソニーの映像処理エンジンの歴史を振り返ってみると、「DRC-MF」を2001年からテレビに搭載しはじめました。当時からメディア関係者の評価は非常に高かった印象があります。
貝山 ソニーが非常にうまい方向で技術を進化させていった結果が「DRC-MF」でした。ノイズと解像度、鮮鋭度の関連性を非常に高いレベルまで追い詰めていましたから。
今回の「X-Reality PRO」はかなり画期的なものだと思うのですが、そこに到達できたのは「DRC-MF」の下敷きがあったからこそだと思います。
「DRC-MF」は長年進化を繰り返して、最終的には「DRC-MF v3」になりましたが、その画質レベルは非常に高いものでした。こういった独自の研究をずっとやってきた技術の蓄積が、今回活きたのでしょう。
■時間軸上のデータも参照する複数枚超解像を実現
― その「DRC」の血統を受け継ぎながら、大きく生まれ変わった新たなエンジンとして、今回「X-Realty PRO」が登場しました。
折原 まず「X-Reality PRO」の構成ですが、「X-Reality」と「XCA7」の2チップ構成になっています。「X-Reality」はすでに1月に発表された〈ブラビア〉に搭載されていますね。これと「XCA7」が連動して動作することで、非常に強力な処理能力を実現しています。
― 「X-Realty PRO」は非常に特長が多いエンジンですね。
折原 そうですね。まず一つめのポイントは「超解像」です。とは言っても、「X-Realty PRO」の超解像は、ただの超解像ではありません。超解像の中でも、現時点で最も難易度が高いと言ってもいい「複数枚超解像」に対応しているのが大きな特長です。