オンライン限定イヤホンの音質もチェック!
ヤマハ“30年ぶり”のヘッドホンを聴いた! − 「HPH-200」「EPH-100」を編集部5名がクロスレビュー
“高純度な音を聴覚へダイレクトに送り込むカナル型イヤホン”
EPH-100
¥OPEN(予想実売価格15,000円前後)
風間
まず驚いたのは筐体が非常に小さいこと。女性など、あまりイヤホンの存在を主張したくないという方にもオススメできる。アルミ削り出し筐体の質感も高く、さりげなくヤマハの音叉ロゴが配置されているのも心憎い。
イヤーピースは「ダブルフランジ」と言えばいいのだろうか、フィット感と遮音効果を高めるツイン構造を採用しており、適切なサイズのイヤーピースを選べば、快適な装着感を得られる。イヤーピースは5サイズが同梱されているので、たいていの場合は大丈夫だろう。
ひとつ気になったのはケーブルで、ケーブルが細いこともあってか、タッチノイズをかなり盛大に拾ってしまう。ただし、特許出願中の絡まり防止ホルダーでまとめるためには、ケーブルをあまり太くできないという事情があったのかもしれない。
さて肝心の音質だが、破綻なく、良くまとまっている印象だ。6mmのユニットとは思えないほど中低域はしっかりと彫りの深いサウンドを聴かせてくれる。高域はやや飽和気味になる部分もあるが、それでも水準は超えている。ダイナミック1発ならではの、まとまりのある音作りも魅力だ。
小型で質感が高く、音のバランスが良いカナル型イヤホンを探しているなら、候補に加えたい製品だ。
山本
中高域の存在感が印象的で、特にボーカルものの滑舌が驚くほど明瞭だった。低域もタイトで音像がしっかりとしている。聴きはじめの頃は響きがやや堅めで、広がり感に欠ける印象を受けたが、イヤーピースをMからSサイズに変えてみたところ、音の見晴らしが一気にクリアになって、先ほどのイメージが180度変わった。要は耳にイヤーピースが合っていなかったんだと思う。
「MISIA GREATEST HITS」からライブ録音のナンバー『果てなく続くストーリー』を聴く。中域を中心に密度がとても濃厚。ボーカルの息づかいも生々しく伝わってくる。観衆のザワつきがノイジーにならず、ホールの立体感を細やかに描く重要な効果音として浮き立ってくる。さすがパッケージに“コンサート・サウンド・クオリティ”を謳うイヤホンだけのことはあるなと納得させられた。伴奏のエレピの音がとてもリアルで心地良かったのは、ヤマハならではの音づくりだろうか。
ヘッドホン部がとてもコンパクトなので、違和感なく耳にフィットした。イヤーチップがダブル・フランジ形状のものだけなので、普通のシングルタイプもあればなお心強い。歩きながらのリスニング時に、僅かながらケーブルのタッチノイズが乗るように感じたが、音楽の邪魔になるレベルのものではない。
小澤
アルミニウム製ハウジングはスッキリしたデザインと素材の質感が相まって洗練された印象。5種類のイヤーピースが付属しているので、耳穴にぴったりフィットするものを見つけられるはず。
全体的な音づくりはHPH-200と同じと感じた。オープンエア型ならではのヌケ感・クリア感を持つHPH-200と比べると、密閉型の本機は音の輪郭がハッキリし、力強さが加わる印象。「You look good to me」のトライアングルの高域への伸びやブラシの粒立ちはHPH-200より再生力が高い。ベースの輪郭も締まって、弦をはじく手応えが一層力強い。ショパンは音の密度が高まり、鍵盤を叩くタッチをより生々しく感じることができた。
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余談ですが、本機を使って自分のオーケストラの練習録音(MP3)を聴いたら、なんだか普段使用しているイヤホン(ETYMOTIC RESEARCHの「hf5」)で聴くよりちょっと上手く聞こえた気がしました(笑)。良いホールはそれ自体の響きで楽器の音を綺麗にまとめてくれますが、EPH-100もそれと同じことをしてくれる感じでしょうか。響きは加わるけれども決して「色づけ」する感じではなく、自然な美しい音にまとめてくれる印象でした。
小野
オープンエアー型のHPH-200を先に聴いていたせいもあり、カナル型イヤホンだとさすがに中音域から低音域がもっとダイレクトに聴き取れる。ボーカルやサックスソロなど主旋律を担当するようなパートがHPH-200よりもしっかりと味わえる印象。
KAGERO『STAR WARS』も、ベースやピアノの激しい動きを楽しむならHPH-200よりもこちらのほうが良いと感じた。総じて、HPH-200はちょっとオシャレなバーでしっとり聴いてる感じで、本機は古くて狭いライブハウスで聴いているといったような印象だろうか。
杉浦
音質としては、HPH-200と似ていて色づけがない素直な印象。こちらもやはり『のはら』との相性の良さを感じた。しかし密閉型ということもあってか、本機の方が閉塞感があって全体的に太い。→Pia-no-jaC←はピアノがメインのユニットだが、最初に力強い中〜低音が描かれたカホンの音色に意識が持っていかれたほど。
なんとなく思うのは、打ち込み系やアイドル系の曲だと楽曲によってはバランスが悪くなり、好みで当たり外れが出るかもしれない。『ミライボウル』の場合は、電子音と歌声が絶妙にまとまらない印象で、Aメロのわざとらしいヘタウマ感・チープ感とマッチしてアリだったが。
なお、ドライバーが鼓膜に近い場所に位置するよう設計された本機の構造を活かすために、まずは自分の耳にフィットするイヤーピースを選ぶことから始めるのが大切だと感じた。自分の場合耳が小さいようで、大きいサイズをはめてしまうとそもそも耳にしっかり入れるのが難しかったので。
いかがだっただろうか。各編集部員とも好きな曲は元より評価ポイントも様々。読者の皆さまの好みや、それに近い楽曲についてのファーストインプレッションとして参考にして頂ければ幸いである。