スペシャルレビュー
“音”が付加価値になる「動画配信時代」の到来 − DTSが実現する未来を山之内正が語る
スマートフォン/タブレット製品などの様々なエンターテイメントデバイスの登場により、「動画コンテンツを配信で楽しむ環境が急速に広がりつつあることを実感する」と語る山之内 正氏。今年のCESでは、これから訪れる動画配信時代を前に、DTSの高音質技術に対して大きな注目が集まっていた(関連ニュース)。
動画配信時代において、“音”は製品の差別化を図る重要なファクターとなる可能性が高い。CESのDTSブースを訪問した山之内正氏が、その注目度の高さを語る。
■“音”が製品・コンテンツの付加価値になる「動画配信時代」の到来
映像メディアはハードウェアとともに世界規模で大きな変革の波にさらされている。インターネット経由のオンデマンドサービスの台頭、スマートフォンやタブレットなどモバイル端末の普及、視聴スタイルの多様化など、変化を促進する要素は枚挙にいとまがない。日本でもキー局が参入するVODサービスがまもなくスタート予定で、映像配信時代の本格始動は秒読み段階に入った。
2012年1月に開催されたCESは、北米市場における映像メディアの進化と多様化を強く印象付けたが、その動きはそれほど大きな時間差なく他の地域にも広がっていくことになるだろう。
今年のCESで例年以上に存在感の大きさを示したブースの一つが、ひときわ賑わいのあるセンターホールに出展したDTSであった。注目を集めた背景には明確な理由がある。
動画配信が本格化すると、複数のサービス間で内容やクオリティを競い合う動きが加速することが予想される。そんなときに付加価値を高める役割を担うのが音声のクオリティだ。ステレオよりはサラウンドの方が臨場感豊かなサウンドを提供できるのは明らかだし、BDの高音質になじんだ聴き手はクオリティにも大きな関心を寄せる。
◇
動画コンテンツシーンやその楽しみ方が語られるとき、真っ先に来るのは“画質”についてのこだわりだ。しかし“音”はどうか。視聴者側の満足度を推し量るうえで、“音”の要素は非常に大きい。日本でも現在、アクトビラやTSUTAYA TVなど複数のVODサービスが登場しているが、音声はステレオがほとんどである。そこにDTSはビジネスチャンスを見出している。
◇
BDを中心にパッケージソフトで圧倒的な採用率を誇るDTSは、その技術の蓄積を生かし、動画配信などネットワークコンテンツの音質向上にも具体的なソリューションを提示した。同社のブースがCES会場で注目を集めた理由の一つが、そこにある。
ハリウッドのメジャースタジオが参加していることで注目を集めるUltra Violetは、パッケージメディアとの共存を視野に入れた新しい映像配信システムだが、そこにはDTSの基幹技術の一つである「DTS Express」が採用されている。
DTS Expressは5.1chサラウンドのストリームで192kbpsという低レートを実現していることに加え、通信速度の変化に合わせてビットレートをフレキシブルに変化させ、視聴者が音質劣化を気にせず鑑賞できるようにする仕掛けも組み込まれている。高いビットレートを安定して確保できるBDとは異なり、ネットワーク環境によっては速度が大きく変化することがある動画配信サービスを成功させるためには、そうした環境も視野に入れてシステムを構築することが重要な意味を持つのだ。
◇
「今後、コンテンツ供給側による DTS ExpressをはじめとしたDTS高音質技術の採用は、他社コンテンツとの差別化を図る大きなポイントの1つになってくるだろう」と山之内氏は語る。
デバイス側の話をするなら、例えばテレビである。地デジ移行後のテレビには、様々な「付加価値の創出」が図られている。ユーザーが製品に対してメリットを感じるポイントは様々だが、テレビで「映像を楽しむ」ということを考えたとき、やはり“音声のクオリティ”はユーザーの満足度を左右する大きなポイントであろう。例えばユーザーに対して、DTSデコーダーを投入したテレビ単体で高音質なサラウンドを提案することができる。
実際に、中国・韓国メーカーは、これから到来するであろう動画配信時代を見据えたようにDTSデコーダー搭載テレビを既に市場に投入している。“音への配慮”は結果として製品のクオリティを高め、ユーザーの選択を左右する大きな付加価値になっていくのではないか。
◇
CESのDTSブースが注目を集めたもう一つの理由は、新設計の試聴室に導入された11.1chシステムの圧倒的なパフォーマンスである。同社の技術はコンテンツ製作者からも大きな支持を集めているが、今回はエンジニアやミュージシャンが直接ブースを訪れてDTSの魅力を語り、実演を行ったことも話題を提供した。同試聴室で鳴っていたサウンドの完成度の高さは、多くの来場者の脳裏に刻まれているはずだ。
◇
ユーザーの満足度を高める“音”の実現には、何よりもまず音質自体のクオリティとパフォーマンスを確保する高い技術力が不可欠である。「DTSはCESにおいて、マルチデバイスによる動画配信時代を大きく動かす技術的なポテンシャルを提示した」と山之内氏は語る。
DTSは、「動画配信時代を見据えた技術で、多くのメーカーの製品クオリティを高めるサポートしたい」という姿勢の下、CESで発表された高音質技術を国内企業向けに改めて紹介するパートナーセミナー(DTS Partner Seminar 2012)を、2月より順次開催する。
「動画配信時代の5年先、10年先を見据えたとき、コンテンツプロバイダーやメーカーの皆さまには、今から“音”をきちんと提案していかなくてはいけない」とdts Japanの伊藤氏はコメントする。これから訪れる動画配信時代を“音”から牽引していくDTSの姿勢に大きな期待が掛かる。
< 山之内 正 プロフィール >
神奈川県横浜市出身。東京都立大学理学部卒。在学時は原子物理学を専攻する。出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。
(“「配信コンテンツ時代」を担う、DTSの最新高音質技術”に戻る)
動画配信時代において、“音”は製品の差別化を図る重要なファクターとなる可能性が高い。CESのDTSブースを訪問した山之内正氏が、その注目度の高さを語る。
■“音”が製品・コンテンツの付加価値になる「動画配信時代」の到来
映像メディアはハードウェアとともに世界規模で大きな変革の波にさらされている。インターネット経由のオンデマンドサービスの台頭、スマートフォンやタブレットなどモバイル端末の普及、視聴スタイルの多様化など、変化を促進する要素は枚挙にいとまがない。日本でもキー局が参入するVODサービスがまもなくスタート予定で、映像配信時代の本格始動は秒読み段階に入った。
2012年1月に開催されたCESは、北米市場における映像メディアの進化と多様化を強く印象付けたが、その動きはそれほど大きな時間差なく他の地域にも広がっていくことになるだろう。
今年のCESで例年以上に存在感の大きさを示したブースの一つが、ひときわ賑わいのあるセンターホールに出展したDTSであった。注目を集めた背景には明確な理由がある。
動画配信が本格化すると、複数のサービス間で内容やクオリティを競い合う動きが加速することが予想される。そんなときに付加価値を高める役割を担うのが音声のクオリティだ。ステレオよりはサラウンドの方が臨場感豊かなサウンドを提供できるのは明らかだし、BDの高音質になじんだ聴き手はクオリティにも大きな関心を寄せる。
動画コンテンツシーンやその楽しみ方が語られるとき、真っ先に来るのは“画質”についてのこだわりだ。しかし“音”はどうか。視聴者側の満足度を推し量るうえで、“音”の要素は非常に大きい。日本でも現在、アクトビラやTSUTAYA TVなど複数のVODサービスが登場しているが、音声はステレオがほとんどである。そこにDTSはビジネスチャンスを見出している。
BDを中心にパッケージソフトで圧倒的な採用率を誇るDTSは、その技術の蓄積を生かし、動画配信などネットワークコンテンツの音質向上にも具体的なソリューションを提示した。同社のブースがCES会場で注目を集めた理由の一つが、そこにある。
ハリウッドのメジャースタジオが参加していることで注目を集めるUltra Violetは、パッケージメディアとの共存を視野に入れた新しい映像配信システムだが、そこにはDTSの基幹技術の一つである「DTS Express」が採用されている。
DTS Expressは5.1chサラウンドのストリームで192kbpsという低レートを実現していることに加え、通信速度の変化に合わせてビットレートをフレキシブルに変化させ、視聴者が音質劣化を気にせず鑑賞できるようにする仕掛けも組み込まれている。高いビットレートを安定して確保できるBDとは異なり、ネットワーク環境によっては速度が大きく変化することがある動画配信サービスを成功させるためには、そうした環境も視野に入れてシステムを構築することが重要な意味を持つのだ。
「今後、コンテンツ供給側による DTS ExpressをはじめとしたDTS高音質技術の採用は、他社コンテンツとの差別化を図る大きなポイントの1つになってくるだろう」と山之内氏は語る。
デバイス側の話をするなら、例えばテレビである。地デジ移行後のテレビには、様々な「付加価値の創出」が図られている。ユーザーが製品に対してメリットを感じるポイントは様々だが、テレビで「映像を楽しむ」ということを考えたとき、やはり“音声のクオリティ”はユーザーの満足度を左右する大きなポイントであろう。例えばユーザーに対して、DTSデコーダーを投入したテレビ単体で高音質なサラウンドを提案することができる。
実際に、中国・韓国メーカーは、これから到来するであろう動画配信時代を見据えたようにDTSデコーダー搭載テレビを既に市場に投入している。“音への配慮”は結果として製品のクオリティを高め、ユーザーの選択を左右する大きな付加価値になっていくのではないか。
CESのDTSブースが注目を集めたもう一つの理由は、新設計の試聴室に導入された11.1chシステムの圧倒的なパフォーマンスである。同社の技術はコンテンツ製作者からも大きな支持を集めているが、今回はエンジニアやミュージシャンが直接ブースを訪れてDTSの魅力を語り、実演を行ったことも話題を提供した。同試聴室で鳴っていたサウンドの完成度の高さは、多くの来場者の脳裏に刻まれているはずだ。
ユーザーの満足度を高める“音”の実現には、何よりもまず音質自体のクオリティとパフォーマンスを確保する高い技術力が不可欠である。「DTSはCESにおいて、マルチデバイスによる動画配信時代を大きく動かす技術的なポテンシャルを提示した」と山之内氏は語る。
DTSは、「動画配信時代を見据えた技術で、多くのメーカーの製品クオリティを高めるサポートしたい」という姿勢の下、CESで発表された高音質技術を国内企業向けに改めて紹介するパートナーセミナー(DTS Partner Seminar 2012)を、2月より順次開催する。
「動画配信時代の5年先、10年先を見据えたとき、コンテンツプロバイダーやメーカーの皆さまには、今から“音”をきちんと提案していかなくてはいけない」とdts Japanの伊藤氏はコメントする。これから訪れる動画配信時代を“音”から牽引していくDTSの姿勢に大きな期待が掛かる。
< 山之内 正 プロフィール >
神奈川県横浜市出身。東京都立大学理学部卒。在学時は原子物理学を専攻する。出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。
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