山之内 正が「LC-70X5」の画質を検証
巨大画面で「世界が変わる」 − 液晶テレビ最大の70インチ “AQUOS” を徹底視聴
クローズアップ場面では顔が原寸大より大きくなり、映画の醍醐味がストレートに伝わってきた。『ラスト・ターゲット』には大胆なトリミングなどこだわりの構図が随所に出てくるが、画面サイズがここまで大きいとスクリーンに近い印象があり、撮影意図がはっきり浮かび上がってくるように思う。
THX映画モードから通常の映画モードに切り替えるとややコントラスト重視にシフトするが、作品によってはこちらもお薦めだ。また、詳細なプロ設定に入らなくてもフォトモードを選ぶとガンマが2.2に切り替わり、ディテール強調などもすべてキャンセルされて忠実な階調と落ち着いた輪郭描写を引き出せる。作品のトーンによってこれらのモードをうまく使い分けることが肝心だ。
ベルリンフィルのライヴ演奏をシンガポールで収録したBDを3Dモードで見ると、明るさとコントラストの余裕が立体感にリアリティを与え、ステージの間近で見ているような臨場感を体感できた。ステージ全景をとらえたカットでは書き割り的な前後感になるが、これはコンテンツ側の問題で、大半の3Dディスプレイで同様の傾向になってしまう。
■大画面の価値を改めて思い知らされた
本機は素材の良い部分を素直に引き出す半面、気になる要素がソース側にある場合は、それもそのまま再現してしまう面もある。画面が大きいから素材の特徴が目立つということもありそうだし、超解像などで映像を再構成するよりは元素材の質感を素直に引き出すという本機の設計思想も背景にある。地デジの受信画像はその典型で、番組によってはBDなど高品位素材との格差に驚くこともあった。
本体の左右には、なかば独立したハウジングを設けた4ウェイ構成のスピーカーを内蔵しているので、本機の再生音は明瞭度と周波数バランスが優れており、音量を上げても耳障りにならないという良さがある。ベルリンフィルの演奏では「Duo Bass」が威力を発揮し、テレビの再生音としては実在感の高い低音を味わうことができた。
画面の大きさが生む没入感は、実際に体験しないと実感がわきにくいものだ。70型の威力は店頭でもある程度実感できるはずだが、それを家庭で体験すると、さらに一段階上の臨場感に圧倒されるに違いない。今回の視聴で、大画面が生む価値の大きさをあらためて思い知らされた。
(山之内 正)
|