内蔵アンプも「S-Master HX」に進化
【レビュー】ハイレゾウォークマン「F880」の音質を検証 − 「PHA-2」デジタル接続も試す
■ソニーのポタアン「PHA-2」をつないで聴いてみた
昨年10月に登場した同社初のポータブルヘッドホンアンプ「PHA-1」の上位モデルとして、この秋に発売される新機種「PHA-2(関連ニュース)」につないで音を聴いてみた。
PHA-1はUSB入力が最大96kHz/24bitまでだったが、本機では最大192kHz/24bit対応となったことが大きな変更点だ。
本体背面にはPCとの接続に使うmicro USB端子と、iOSデバイスとのデジタル接続に使うUSB A端子が搭載されているのはPHA-1と同じだが、新しいモデルのPHA-2には、このほかにウォークマンとのデジタル接続に使うmini USB端子が搭載されている。PHA-1ではウォークマンとの接続がアナログ接続に限定されていたが、PHA-2ではハイレゾを含む様々な音楽ファイルをデジタルで入力し、高品位なDACで変換して再生することが可能になった。
アンプに付属する、専用のmini USBーWMポート端子変換ケーブルでウォークマンにつなぎ、背面のソースセレクターをウォークマンの位置に合わせて、演奏をスタートする。
低域の音がギュッと引き締まり、シャープさが格段に高まる。演奏全体のキレやスピード感が一変して、果てしなく深い奥行き感の広がりにゾクっとさせられる。ボーカルの表情にもナチュラルさとリアリティが加わり、緊張感が高まってくる。
ハイレゾのノラ・ジョーンズは、先ほどと同じ楽曲を聴いているのに、ハイスクールの女子生徒から大人の女性へ、ボーカリストがバトンタッチしてしまったかのような錯覚をおぼえるほど、色艶のある声に惹きつけられてしまう。細やかなブレスのテクニックが見え、コーラスがとても穏やかにメインボーカルの旋律にレイヤーを重ねてくる。楽器の音色は主張しすぎることがなく、演奏全体の絶妙なバランスが非常に心地良い。
ビル・エヴァンスの演奏も力強さを保ちながら、スピード感がぐんと高まる。ピアノやドラムスの高域はクリアに伸び切って、ベースの低域も驚くほど深く沈み込む。S/Nが極めて良く、ライブ演奏ならではの空間の広がりが自然、かつリアルに再現される。
本機はウォークマンのデジタル接続だけでなく、PCと接続することでDSDネイティブ再生も楽しめる。方式はDoPとASIOともに対応しており、さらに5.6MHz/2.8MHzのDSDネイティブ再生もMac/Windowsの両方で行える。本体には高精度クロックジェネレーターのほか、192kHz/24bitやDSDに対応するTI製のDACチップ「PCM1795」も搭載する。iOSデバイスのデジタル再生機能も備え、この多機能ぶりと音質を考えたら、コストパフォーマンスは非常に高い。
■まとめ
Androidスマートフォンの新製品があふれている今、“Android搭載ウォークマン”が登場した当初の目新しさは薄れたものの、ハイレゾに対応したことがウォークマンシリーズの存在価値を際立たせるのに十分な要素であることを、そのサウンドの高い完成度によって実感させられた。
とはいえ、ハイレゾコンテンツの絶対数はまだまだ少ない。ハイレゾ対応の補間技術「DSEE HX」の仕上がりも大きなポイントとなるはずだが、残念ながら今回はまだその効果を試すことができなかった。いずれ機会があれば、あらためて報告したいと思う。
軽快な本体のハンドリングやポータビリティの良さにより、スマホとの2台持ちも無理なく行える。ただしiPhoneのユーザーはさておき、Androidスマートフォンを持っているユーザーからしたら、機能面の新味は乏しい。こういったユーザーも納得させる「ウォークマンならではの魅力」を、今後ソニーはさらにアピールしていく必要があるだろう。