【特別企画】連続レポート第3回
藤岡誠、マークレビンソンの新インテグレーテッドアンプ「No585」をとことん語る
マークレビンソンのUSB-DAC内蔵インテグレーテッドアンプ「No585」の連続レポート第三回目は、オーディオ銘機賞の審査員長でもある藤岡誠氏が、ハーマンインターナショナルで長年マークレビンソンを担当してきた藤田裕人氏と対談。マークレビンソンの歴史をひもときながらNo585の魅力を語り尽くす。
■アナログ再生の黄金時代に登場したマークレビンソン
藤岡 今日のテーマはマークレビンソン最新のインテグレーテッド(プリメイン)アンプ「No585」ですが、まずは私がマークレビンソンについてどのような思い入れを持っているのか、お話させてください。
ーー よろしくお願いします。
藤岡 マークレビンソンというと、昔からオーディオに取り組んでいる私たちのような世代にとっては、アナログ再生の全盛期に登場してきたブランドなのです。はじめてマークレビンソンの製品を目にしたとき、「世界にはこんなにもマニアックな人間がいたのか」と驚きました。それは製品を見ればすぐにわかるのですが、完璧主義者だということです。左右チャンネルを完全に独立させた構成のプリアンプは、聴くとものすごくナイーブな音でした。
マークレビンソンが登場した1972年当時、オーディオにおいてはアナログ再生が最先端であり全盛期でした。CDが出るちょうど10年前ということですね。この時代はマッキントッシュやマランツが素晴らしいコンポーネントをたくさん手がけていましたが、そのアナログ最前線に突然として登場したのがマークレビンソンでした。セパレーションを追求するあまりボリュームをL/R独立とした点など、その凝りように驚いたのは私だけではないはずです。当時のオーディオファンは、こうした製品の登場を非常に歓迎していました。
藤田 ちょうどMC方式のカートリッジが全盛の頃ですよね。マークレビンソンはMCヘッドアンプも製品化していました。
藤岡 当時、マークレビンソンのネームバリューは一気に高まりました。当時アメリカのアンプといえば、マッキントッシュとマランツが2大ブランドでしたが、そこにマークレビンソンが彗星のごとく現れたわけです。
藤田 初期マークレビンソンは、完璧主義に基づいて魅力的な製品をラインナップしましたが、人気が世界規模になったことで、マーク・レビンソン氏自身のやりたいことと市場が求めるものにギャップがでてきます。彼自信、ワンマンなところがありますので、組織の中で仕事をすることは得意ではなかったのかもしれません。1984年にマーク・レビンソンは会社を離れますが、残ったメンバーたちがマドリガル・オーディオ・ラボラトリーズという会社を設立して、引き続きマークレビンソン・ブランドとして製品を作るようになりました。
藤岡 マークレビンソンというブランドには、創業者であるマーク・レビンソン氏の血はほとんど残っていないと言えるかもしれません。しかし、マドリガル体制になってからも創業当時のエンジニアが開発を続けたことで、その開発思想は現在まで引き継がれてきたと言えます。
■USB-DACを搭載した最新インテグレーテッドアンプ「No585」
藤岡 それでは、本題であるNo585に話題を移しますが、あえて最初に、USB-DAC内蔵の話に触れましょう。マークレビンソンの最新インテグレーテッドアンプがUSB-DAC搭載と初めて聞いたとき、私は愕然としました。マークレビンソンは1972年の創業からずっと、アナログ回路にこだわってきたブランドです。デジタルとは無縁ということではありませんが、プリアンプやインテグレーテッドアンプに、D/Aコンバーターのようなデジタル回路を内蔵することは想像できませんでした。
藤田 マークレビンソンは1990年代にデジタル部門も立ち上げ、CDプレーヤーやD/Aコンバーター、トランスポートなども手がけてきました。しかし、アナログ・コンポーネントとデジタル・コンポーネントは一貫して区別していました。ですから、D/Aコンバーター内蔵型のアナログ製品を作るのは今回が初めてになりますね。
藤岡 まさに、マークレビンソンの設計思想の特徴のひとつが、アナログとデジタルを明確に分離するというものです。マーク・レビンソン氏による創業から時代を経て今日に至っていますが、一貫してセパレートアンプを手がけてきましたよね。
藤田 そういう意味では、マークレビンソンにとっては、D/Aコンバーターを内蔵するどころか、インテグレーテッドアンプ自体が希有な存在です。
藤岡 私個人の意見を言えば、オーディオにおいて異なる要素を一緒にするのは嫌いです。例えるならば、長屋に趣味の違う人間が同居しているようなものでしょう。たとえ理想的な形で融合することができたとしても、内部構造や電源回路などで余計なコストがかかります。お金をかけて同居させるくらいならばセパレートしてやればいいというのが、私の昔からの考えなのですね。大電流を扱うアナログ回路と、フォノイコライザー回路を同居させるのも個人的にはあまり好きではありません。大電流を扱う側に束縛されてしまいますからね。そういう考え方だからこそマークレビンソンに共感を抱いていたので、No585のUSB-DAC搭載には「まさか!」という印象でした。
しかし、あえてマークレビンソンがそういった決断をしたからには、技術面でのメリットや十分な対策が実現できたということだと思います。その辺りも含めてお話を伺いたいのですが、まずはNo585がマークレビンソンたる所以を、アンプの部分から説明していただきましょう。
■アナログ再生の黄金時代に登場したマークレビンソン
藤岡 今日のテーマはマークレビンソン最新のインテグレーテッド(プリメイン)アンプ「No585」ですが、まずは私がマークレビンソンについてどのような思い入れを持っているのか、お話させてください。
ーー よろしくお願いします。
藤岡 マークレビンソンというと、昔からオーディオに取り組んでいる私たちのような世代にとっては、アナログ再生の全盛期に登場してきたブランドなのです。はじめてマークレビンソンの製品を目にしたとき、「世界にはこんなにもマニアックな人間がいたのか」と驚きました。それは製品を見ればすぐにわかるのですが、完璧主義者だということです。左右チャンネルを完全に独立させた構成のプリアンプは、聴くとものすごくナイーブな音でした。
マークレビンソンが登場した1972年当時、オーディオにおいてはアナログ再生が最先端であり全盛期でした。CDが出るちょうど10年前ということですね。この時代はマッキントッシュやマランツが素晴らしいコンポーネントをたくさん手がけていましたが、そのアナログ最前線に突然として登場したのがマークレビンソンでした。セパレーションを追求するあまりボリュームをL/R独立とした点など、その凝りように驚いたのは私だけではないはずです。当時のオーディオファンは、こうした製品の登場を非常に歓迎していました。
藤田 ちょうどMC方式のカートリッジが全盛の頃ですよね。マークレビンソンはMCヘッドアンプも製品化していました。
藤岡 当時、マークレビンソンのネームバリューは一気に高まりました。当時アメリカのアンプといえば、マッキントッシュとマランツが2大ブランドでしたが、そこにマークレビンソンが彗星のごとく現れたわけです。
藤田 初期マークレビンソンは、完璧主義に基づいて魅力的な製品をラインナップしましたが、人気が世界規模になったことで、マーク・レビンソン氏自身のやりたいことと市場が求めるものにギャップがでてきます。彼自信、ワンマンなところがありますので、組織の中で仕事をすることは得意ではなかったのかもしれません。1984年にマーク・レビンソンは会社を離れますが、残ったメンバーたちがマドリガル・オーディオ・ラボラトリーズという会社を設立して、引き続きマークレビンソン・ブランドとして製品を作るようになりました。
藤岡 マークレビンソンというブランドには、創業者であるマーク・レビンソン氏の血はほとんど残っていないと言えるかもしれません。しかし、マドリガル体制になってからも創業当時のエンジニアが開発を続けたことで、その開発思想は現在まで引き継がれてきたと言えます。
■USB-DACを搭載した最新インテグレーテッドアンプ「No585」
藤岡 それでは、本題であるNo585に話題を移しますが、あえて最初に、USB-DAC内蔵の話に触れましょう。マークレビンソンの最新インテグレーテッドアンプがUSB-DAC搭載と初めて聞いたとき、私は愕然としました。マークレビンソンは1972年の創業からずっと、アナログ回路にこだわってきたブランドです。デジタルとは無縁ということではありませんが、プリアンプやインテグレーテッドアンプに、D/Aコンバーターのようなデジタル回路を内蔵することは想像できませんでした。
藤田 マークレビンソンは1990年代にデジタル部門も立ち上げ、CDプレーヤーやD/Aコンバーター、トランスポートなども手がけてきました。しかし、アナログ・コンポーネントとデジタル・コンポーネントは一貫して区別していました。ですから、D/Aコンバーター内蔵型のアナログ製品を作るのは今回が初めてになりますね。
藤岡 まさに、マークレビンソンの設計思想の特徴のひとつが、アナログとデジタルを明確に分離するというものです。マーク・レビンソン氏による創業から時代を経て今日に至っていますが、一貫してセパレートアンプを手がけてきましたよね。
藤田 そういう意味では、マークレビンソンにとっては、D/Aコンバーターを内蔵するどころか、インテグレーテッドアンプ自体が希有な存在です。
藤岡 私個人の意見を言えば、オーディオにおいて異なる要素を一緒にするのは嫌いです。例えるならば、長屋に趣味の違う人間が同居しているようなものでしょう。たとえ理想的な形で融合することができたとしても、内部構造や電源回路などで余計なコストがかかります。お金をかけて同居させるくらいならばセパレートしてやればいいというのが、私の昔からの考えなのですね。大電流を扱うアナログ回路と、フォノイコライザー回路を同居させるのも個人的にはあまり好きではありません。大電流を扱う側に束縛されてしまいますからね。そういう考え方だからこそマークレビンソンに共感を抱いていたので、No585のUSB-DAC搭載には「まさか!」という印象でした。
しかし、あえてマークレビンソンがそういった決断をしたからには、技術面でのメリットや十分な対策が実現できたということだと思います。その辺りも含めてお話を伺いたいのですが、まずはNo585がマークレビンソンたる所以を、アンプの部分から説明していただきましょう。