海上忍のラズパイ・オーディオ通信(2)
Raspberry Pi で自作する「ラズパイオーディオ」。音質をあのメーカーに聴いてもらった!
■ベテラン技術者、「ラズパイ・オーディオ」をかく語りき
そうそう、肝心なことを。今回クリプトンを訪ねた理由は、これから「ラズパイ・オーディオ」をどのように磨いていけばその底力を引き出せるか、オーディオ機器としての魅力が増すか、アドバイスをいただきたかったからだ。当面の目標はケースづくりと定めたものの、一体何から手をつけるべきか右往左往している状態であり、オーディオ機器のアコースティックな側面に通じたベテラン技術者のアドバイスはまさに金言なのだ。
まず、全体の印象は「PCとして大変シンプルで、シャーシの材質次第でここまで音が変わったのは驚き。それだけ"素質のよさ"を感じた」(渡邉氏)とのこと。ハイレゾ音源からAirPlayまで幅広いソースを扱えるCPの高さも響いたようで、「この小ささ、安さでここまでできてしまうとは」(前島氏)と評価していただけた。
ネオフェード・カーボンマトリックス3層材で挟むだけで音に大きな変化が生じた理由については、「おそらく、パルス・ノイズでしょうね」(渡邉氏)とのこと。Raspberry Pi 2に搭載のCPU(ARM Cortex-A7 900MHz/クアッドコア)は、PCのCPUと比較すれば熱・ノイズともに少ないはずだが、今回試聴に使用したシステムはノイズに関してまったくノーケア、しかもボードがほぼ剥き出しの状態。PCオーディオに比べ"効き目"がより鮮明に現れるのも宜なるかな、というところだ。
ただ、いくつか注文もいただいた。必要な一式を入手しにくい(どこで購入すればわからない)こと。Wi-Fiやテザリングの設定など、多少手を加えないことにはデモで披露したような使い方が難しいこと。システムがLinuxなだけに、設定に行き詰まったとき相談する相手がいないこと。このオーディオシステムを推すことについて、責任めいたものを痛感した次第だ。
丁寧に説明すれば、ベテランにも「ラズパイ・オーディオ」のよさを理解していただけることはわかった。オーディオ機器としての体裁を整えていくにあたり、外見もさることながら、ノイズ・振動の抑制という基礎的なアプローチが欠かせないこともわかった。ただ推すだけではなく、能動的に関わっていかねばならない覚悟もできた。さて、次なる行く先は……なにやら「わらしべ長者」のような展開となりつつあるが、どうか暖かい目で見守っていただきたい。
(海上忍)