BT.709を100%カバー
緑や青をより美しく。“ワンランク上”のDLP入門機・オプトマ「HD37」レビュー
■BT.709を100%カバーする、DLPプロジェクター入門機の新スタンダード
DLP方式のプロジェクターを展開するオプトマの製品ラインナップに、この春スタンダードモデルの「HD37」が追加された(関連ニュース)。
HD37の最大の特徴は、1080pの0.65型単板DLPデバイス採用という基本を押さえたスペックに加えて、Blu-rayやテレビ放送といった現在の映像フォーマットの標準である“BT.709”の色情報を100%カバーすること。DLPデバイスの映像表示で必須となるカラーホイールを、従来の「RGB+CY+ホワイト」から「RGB+RGB:6セグメントタイプ」へと変更し、ホイール回転時にRGBそれぞれのセグメントに2度光を通することで色純度を向上させている。
色表現のポイントとしては、DLPデバイスの色再現の要である「BrilliantColor」を搭載し、コントラスト比20,000対1の表示スペック、2,600ルーメンの輝度を確保したことだ。ランプの最大輝度こそエントリーモデルの「HD26」に譲るが、HD37は映像体験を重視したホームシアター向けの位置づけであるスペックになる。
入門モデルながら1.5倍ズームレンズを搭載しており、100型の投写距離は最短3.08m、最長4.63mで表示できる。入門機としては貴重なレンズシフトも用意し、垂直方向上9%、下5%と動かせる設置性の良さも確保。また、設置の際のフォーカスを確認するために、パターン表示機能があることもありがたい。
入力端子はHDMI(1.4a)、VGA、コンポジット。本体には10Wのモノラルスピーカーも内蔵する。入門モデルでも定番となった3D対応は、DLPリンク方式とRF(電波)方式の両方を利用できる。
■DLPらしいナチュラルさと、BT.709を100%カバーする純度の高い発色
音元出版の視聴室でHD37をセットし、BD『キングスマン』で画質の検証を開始。まずは「シネマ」「リファレンス」「VIVID」「ゲーム」「ユーザー」の映像モードが用意されたカラーモードの選択からスタートした。
モードを切り替えながら映像をチェックしてみる。「シネマ」モードは、色温度を落としたマットな色彩にしながらも輝度を引き上げており、リビングシアター向けのセッティングのようだ。シアター室など暗室で視聴する際のモード選択に筆者がオススメしたいのは、その名も「リファレンス」。こちらはまさにBT.709の色空間の再現に適したチューニングを見せる。特に色純度の高さがわかり、20万円を切る入門機向けモデルである本機の高い映像ポテンシャルが発揮された。
あえて課題も挙げておくと、漆黒の表現については、入門クラスらしく若干浮いた部分も感じることがある。DLPプロジェクターを採用した映画館のようなイメージに近いかもしれない。また、アクションシーンなど画面内が激しく動くシーンでは、DLPデバイス固有の問題であるカラーブレイキングが目に飛び込む箇所もあった。
なお画質関連のカスタマイズで面白いのは、「リファレンス」の設定で色温度を「D50」「D65」(デフォルト値)、「D75」「D93」「Native」から選べること。BD映画向けのソースとしては、やはり「D65」(色温度6500k)が扱いやすいが、英国が舞台の『キングスマン』でフィルムらしい質感を求めるなら「D50」も選択肢に入る。放送番組やビデオ映像、また明るい室内での視聴では「D75」など、よりブルーを強調した表現に設定するのも良いだろう。
邦画のBDタイトル『海街diary』の視聴では、その爽やかに透き通る色彩がナチュラルに表現されて気持ち良い。DLPデバイスによるHDクオリティの解像感は、シーンに応じて様々な表情を見せた。全体的にソフトタッチに描きながらも、その描写にマッチするシーンではフルHDクオリティが克明に引き出される。
本機は実売価格16万円前後と入門クラスの製品だが、オプトマ製プロジェクターとしては実売価格約9万円のエントリー機 HD26の一つ上に位置づけられる。基本的な画質傾向は近いが、HD37の最大のメリットはBT.709を100%カバーする色再現だ。より正確な映像表現を求めるなら、予算を追加してHD37を選ぶべきだろう。またHD37は、HD26にはないレンズシフト機能も備えている。
HD37は「DLPプロジェクターらしい画質表現」を突き詰めた上で、DLPデバイスで設置の自由度も確保した“ワンランク上の入門モデル”だ。画質のリファレンスとして、映画館のような質感を求める人にとって、HD37は貴重なスタンダードモデルと呼ぶべき存在と言えよう。
(折原 一也)
DLP方式のプロジェクターを展開するオプトマの製品ラインナップに、この春スタンダードモデルの「HD37」が追加された(関連ニュース)。
HD37の最大の特徴は、1080pの0.65型単板DLPデバイス採用という基本を押さえたスペックに加えて、Blu-rayやテレビ放送といった現在の映像フォーマットの標準である“BT.709”の色情報を100%カバーすること。DLPデバイスの映像表示で必須となるカラーホイールを、従来の「RGB+CY+ホワイト」から「RGB+RGB:6セグメントタイプ」へと変更し、ホイール回転時にRGBそれぞれのセグメントに2度光を通することで色純度を向上させている。
色表現のポイントとしては、DLPデバイスの色再現の要である「BrilliantColor」を搭載し、コントラスト比20,000対1の表示スペック、2,600ルーメンの輝度を確保したことだ。ランプの最大輝度こそエントリーモデルの「HD26」に譲るが、HD37は映像体験を重視したホームシアター向けの位置づけであるスペックになる。
入門モデルながら1.5倍ズームレンズを搭載しており、100型の投写距離は最短3.08m、最長4.63mで表示できる。入門機としては貴重なレンズシフトも用意し、垂直方向上9%、下5%と動かせる設置性の良さも確保。また、設置の際のフォーカスを確認するために、パターン表示機能があることもありがたい。
入力端子はHDMI(1.4a)、VGA、コンポジット。本体には10Wのモノラルスピーカーも内蔵する。入門モデルでも定番となった3D対応は、DLPリンク方式とRF(電波)方式の両方を利用できる。
■DLPらしいナチュラルさと、BT.709を100%カバーする純度の高い発色
音元出版の視聴室でHD37をセットし、BD『キングスマン』で画質の検証を開始。まずは「シネマ」「リファレンス」「VIVID」「ゲーム」「ユーザー」の映像モードが用意されたカラーモードの選択からスタートした。
モードを切り替えながら映像をチェックしてみる。「シネマ」モードは、色温度を落としたマットな色彩にしながらも輝度を引き上げており、リビングシアター向けのセッティングのようだ。シアター室など暗室で視聴する際のモード選択に筆者がオススメしたいのは、その名も「リファレンス」。こちらはまさにBT.709の色空間の再現に適したチューニングを見せる。特に色純度の高さがわかり、20万円を切る入門機向けモデルである本機の高い映像ポテンシャルが発揮された。
あえて課題も挙げておくと、漆黒の表現については、入門クラスらしく若干浮いた部分も感じることがある。DLPプロジェクターを採用した映画館のようなイメージに近いかもしれない。また、アクションシーンなど画面内が激しく動くシーンでは、DLPデバイス固有の問題であるカラーブレイキングが目に飛び込む箇所もあった。
なお画質関連のカスタマイズで面白いのは、「リファレンス」の設定で色温度を「D50」「D65」(デフォルト値)、「D75」「D93」「Native」から選べること。BD映画向けのソースとしては、やはり「D65」(色温度6500k)が扱いやすいが、英国が舞台の『キングスマン』でフィルムらしい質感を求めるなら「D50」も選択肢に入る。放送番組やビデオ映像、また明るい室内での視聴では「D75」など、よりブルーを強調した表現に設定するのも良いだろう。
邦画のBDタイトル『海街diary』の視聴では、その爽やかに透き通る色彩がナチュラルに表現されて気持ち良い。DLPデバイスによるHDクオリティの解像感は、シーンに応じて様々な表情を見せた。全体的にソフトタッチに描きながらも、その描写にマッチするシーンではフルHDクオリティが克明に引き出される。
本機は実売価格16万円前後と入門クラスの製品だが、オプトマ製プロジェクターとしては実売価格約9万円のエントリー機 HD26の一つ上に位置づけられる。基本的な画質傾向は近いが、HD37の最大のメリットはBT.709を100%カバーする色再現だ。より正確な映像表現を求めるなら、予算を追加してHD37を選ぶべきだろう。またHD37は、HD26にはないレンズシフト機能も備えている。
HD37は「DLPプロジェクターらしい画質表現」を突き詰めた上で、DLPデバイスで設置の自由度も確保した“ワンランク上の入門モデル”だ。画質のリファレンスとして、映画館のような質感を求める人にとって、HD37は貴重なスタンダードモデルと呼ぶべき存在と言えよう。
(折原 一也)