あの“世界初”モデルが更なる進化を遂げて登場
【速攻レビュー】オーディオテクニカ「ATH-CKR90」:攻めの姿勢が生んだ新時代のイヤホンサウンド
2つのドライバーを対向配置する“世界初”機構「DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS」を搭載したCKRがデビューしたのは2014年。これまでのイヤホンを一新するようなサウンドは、リスナーに鮮烈な驚きを与えた。それから約2年。さらなる進化を遂げ、ハイレゾ対応も果たした“Sound Reality”シリーズとして6月17日に登場する(関連ニュース)。今回Phile-webでは「ATH-CKR100」「ATH-CKR90」をいちはやく入手。岩井喬氏、高橋敦氏によるレビューをお届けする。
■岩井 喬氏による「ATH-CKR100」レビューはこちら
異口径の振動板を対向配置した新ドライバーを搭載
2014年4月発売の「CKR」の登場は衝撃的だった。CKR自体はもちろん、ATH-CKS1100等の新世代「SOLID BASS」や「ATH-CK330」など、それ以後に登場した製品の展開や完成度から遡って考えると、オーディオテクニカ新時代の幕開けはCKRだったようにも思える。
今回紹介する「ATH-CKR90」は、その最新作だ。
まずCKR90は、初代モデル「CKR9」とは立ち位置が少し異なる。かつての「CKR9」は、トップエンド「CKR10」の構成要素の中で筐体の素材をアルミに変更するなどしてコストパフォーマンスを高めたモデルだった。
対して今回の「CKR90」はトップエンド「CKR100」と心臓部から大きく異なる完全別モデル。このモデルのみがシリーズハイエンドの中核技術「DUAL PHASE PUSH-PULL〈Hi-Res Audio〉DRIVERS」において新たな試みを行っている。対向配置されるデュアルドライバーの口径を、耳から遠い側は13mm、近い側は10.4mmと、あえて不揃いにしたのだ。
そもそもの「対向配置プッシュプル」の狙いを考えれば、同口径で完全に対称に動作することが理想と思える。それをあえて変えてきた理由とは何なのだろうか?
ひとつは「高域特性の改善」。「あえてずらすことで特性を調整する」という手法は他の分野でも時に用いられる。弦の振動による磁界の変化をコイルで拾って電気信号に変換して出力する、エレクトリックギターのピックアップ。ハムバッキング型ピックアップはそのコイルをふたつ搭載しているが、ふたつの巻数等を不揃いにすることでピックアップの特性、すなわち音色を作る設計は、今ではよく知られている。
しかし音楽的にも電気設計的にも何でもありが当たり前なロックの世界ではなく、比較的常識的なオーディオの世界の大手メーカーが「対向配置なのに異口径」という発想を実際に形にしてきた、その柔軟性には驚かされた。なお、マグネットサイズはどちらも同じのため、振動板の大きさは違ってもプッシュプル動作は対称に行われるのだという。
ふたつめは「装着感の改善」。こちらは単純な話で、耳に近い側の口径を小さくしたことで、耳に当たる側全体が従来よりコンパクトになった。外形も従来の「DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS」モデルとは異なり普通のイヤホンっぽい。そして実はここは音質面においてもポイントかも知れない。
カナル型として普通の形になったことでイヤーピースが従来モデルよりも深めに耳に入り、耳の穴の中の空間は小さくなり、密閉度も高まっている。後述の音の変化にはこの要素も関わっていておかしくない。
ほか、初代はリケーブル非対応だったところ、今回は同社独自のA2DCコネクターで対応。現時点では採用が同社に限られているが、MMCX並みの小型さでありつつ付け外し時の確実なスナップ感やぐらつきのなさなど、この端子自体はむしろこれから普及を願いたいくらいの出来栄えだ。
■岩井 喬氏による「ATH-CKR100」レビューはこちら
異口径の振動板を対向配置した新ドライバーを搭載
2014年4月発売の「CKR」の登場は衝撃的だった。CKR自体はもちろん、ATH-CKS1100等の新世代「SOLID BASS」や「ATH-CK330」など、それ以後に登場した製品の展開や完成度から遡って考えると、オーディオテクニカ新時代の幕開けはCKRだったようにも思える。
今回紹介する「ATH-CKR90」は、その最新作だ。
まずCKR90は、初代モデル「CKR9」とは立ち位置が少し異なる。かつての「CKR9」は、トップエンド「CKR10」の構成要素の中で筐体の素材をアルミに変更するなどしてコストパフォーマンスを高めたモデルだった。
対して今回の「CKR90」はトップエンド「CKR100」と心臓部から大きく異なる完全別モデル。このモデルのみがシリーズハイエンドの中核技術「DUAL PHASE PUSH-PULL〈Hi-Res Audio〉DRIVERS」において新たな試みを行っている。対向配置されるデュアルドライバーの口径を、耳から遠い側は13mm、近い側は10.4mmと、あえて不揃いにしたのだ。
そもそもの「対向配置プッシュプル」の狙いを考えれば、同口径で完全に対称に動作することが理想と思える。それをあえて変えてきた理由とは何なのだろうか?
ひとつは「高域特性の改善」。「あえてずらすことで特性を調整する」という手法は他の分野でも時に用いられる。弦の振動による磁界の変化をコイルで拾って電気信号に変換して出力する、エレクトリックギターのピックアップ。ハムバッキング型ピックアップはそのコイルをふたつ搭載しているが、ふたつの巻数等を不揃いにすることでピックアップの特性、すなわち音色を作る設計は、今ではよく知られている。
しかし音楽的にも電気設計的にも何でもありが当たり前なロックの世界ではなく、比較的常識的なオーディオの世界の大手メーカーが「対向配置なのに異口径」という発想を実際に形にしてきた、その柔軟性には驚かされた。なお、マグネットサイズはどちらも同じのため、振動板の大きさは違ってもプッシュプル動作は対称に行われるのだという。
ふたつめは「装着感の改善」。こちらは単純な話で、耳に近い側の口径を小さくしたことで、耳に当たる側全体が従来よりコンパクトになった。外形も従来の「DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS」モデルとは異なり普通のイヤホンっぽい。そして実はここは音質面においてもポイントかも知れない。
カナル型として普通の形になったことでイヤーピースが従来モデルよりも深めに耳に入り、耳の穴の中の空間は小さくなり、密閉度も高まっている。後述の音の変化にはこの要素も関わっていておかしくない。
ほか、初代はリケーブル非対応だったところ、今回は同社独自のA2DCコネクターで対応。現時点では採用が同社に限られているが、MMCX並みの小型さでありつつ付け外し時の確実なスナップ感やぐらつきのなさなど、この端子自体はむしろこれから普及を願いたいくらいの出来栄えだ。