【特別企画】シリーズを超えた組み合わせテストも
オーディオテクニカの新VMカートリッジ、「針交換」できる魅力とその活用法を徹底解説
オーディオテクニカがVMカートリッジのラインナップを刷新し、新たに9モデルが登場した。新モデルの特長のひとつが「針交換に対応」した点で、ステレオカートリッジ全モデルで針とボディが互換性を持っている。この「針交換」はいかに活用すればいいのか。炭山アキラ氏が徹底レポートした。
■ラインナップの全ての「ボディ」と「針」が互換性を持っている
2016年後半のアナログ業界で、何といってもセンセーションだったのはオーディオテクニカのVMカートリッジの新製品だ。何と一気に9モデルの発売がアナウンスされたのである。コンパクトディスクが登場して本格的なデジタル時代を迎えて30余年、21世紀にこれほどのカートリッジの新製品を目にできるとは、筋金入りのアナログファンを自認する私も想像すらしていなかった。
もっとも、アナログ最大手の同社ですら、全盛期の70〜80年代にも「これだけの数のカートリッジを一度に発表したことはなかった」(同社開発陣)というのだから、それも当然というべきか。私自身も、新製品発表会場で「ああ、今まさに歴史の1ページが作られる瞬間に立ち会っているのだな」と胸が熱くなった。
しかもモデルの数以上に、今回のシリーズはもっと大きな可能性を秘めている。なんと全てのカートリッジ・ボディと交換針が共通の形状とされ、さらに発電機構の内部抵抗から巻き線のターン数まで厳密にそろえてあるのだ。これは「どのボディにどの交換針を取り付けても完全に問題なく動作する」ということだ。
■純正組み合わせを試した上で、“針交換”の音の変化を検証する
実は同社のVMカートリッジは、比較的最近発売された「AT100E」から往年の高級機「AT160ML」まで、ボディと交換針の形はある程度の共通性が保たれていて、相互流通させて遊ぶのが「マニアの秘かな楽しみ」となっていた。しかし、厳密にいえば各モデルで発電回路の設計は違い、同社技術陣によると「相互に流用はできるけれどお薦めするものではなかった」とか。しかし、今作はそれをオフィシャルに「できます!」と断言してくれているのだから実にうれしい。
こうやってボディと交換針を複数用意し、相互に付け替えることで音質のバリエーションを楽しもうという考え方は、1970年頃から80年代にかけて順次登場してきたグレース品川無線の「F-8」および「LEVELII」シリーズ以来なのではないか。「アナログ再ブーム」の声も聞かれる昨今だが、それでも全盛期に比べればごくささやかな規模である。そんなご時世にこういう野心的な製品開発を提起してきたオーディオテクニカには、個人的に惜しみない拍手を捧げたいと思う。
こうなったら興味の赴くところは一つ。まず全種類の「純正サウンド」を聴き、その音を踏まえて、シリーズを跨ぐボディと交換針の組み合わせを試してみることだ。針交換を紹介する上で、各モデルの音質傾向をお伝えする必要を感じ、まずはそちらのレポートを詳細に行ったが、針交換の組み合わせのテスト結果とお薦めする組み合わせについて知りたいと言う方は、当サイトで後日その結果が報告されるそうだ。
まずはステレオVMカートリッジ 7機種のサウンドを試聴
■「VM510CB」 ¥14,500(税抜)
接合丸針「VMN10CB」搭載/交換針単体価格:¥9,500(税抜)
まず「純正組み合わせ」の音を、価格の安い方から順に聴く。VM510CBは接合丸針を持つラインナップで最も廉価な製品だが、貧相な音がするというわけではない。クラシックの残響感はやや浅めになるが、弦は艶やかさを保つ。高低両端ともレンジが特段広くはないのだが、バランスが良く十分に聴かせてくれる。
ジャズは質感はそこそこだが、しかし鳴りっぷりの良さは大いに買える。ポップスは懐かしい吉田美奈子を聴いたが、声のスケール感がやや小さめに感じたものの、ドラムスのビートやベースラインは実にマッシブでどっしりとしたピラミッドバランスを聴かせる。シンバルの質感があと少しほしいと感じたのは、接合丸針ゆえか。
しかし、例えばシンバルの伸びがもうひとつと思われたら、プレーヤー側でアームを少し尻下がりに調整してやると、一気に高域方向の量感と抜けが向上するはずだ。お使いのプレーヤーで調整が可能なら、一度試してみる価値はある。
■ラインナップの全ての「ボディ」と「針」が互換性を持っている
2016年後半のアナログ業界で、何といってもセンセーションだったのはオーディオテクニカのVMカートリッジの新製品だ。何と一気に9モデルの発売がアナウンスされたのである。コンパクトディスクが登場して本格的なデジタル時代を迎えて30余年、21世紀にこれほどのカートリッジの新製品を目にできるとは、筋金入りのアナログファンを自認する私も想像すらしていなかった。
もっとも、アナログ最大手の同社ですら、全盛期の70〜80年代にも「これだけの数のカートリッジを一度に発表したことはなかった」(同社開発陣)というのだから、それも当然というべきか。私自身も、新製品発表会場で「ああ、今まさに歴史の1ページが作られる瞬間に立ち会っているのだな」と胸が熱くなった。
しかもモデルの数以上に、今回のシリーズはもっと大きな可能性を秘めている。なんと全てのカートリッジ・ボディと交換針が共通の形状とされ、さらに発電機構の内部抵抗から巻き線のターン数まで厳密にそろえてあるのだ。これは「どのボディにどの交換針を取り付けても完全に問題なく動作する」ということだ。
■純正組み合わせを試した上で、“針交換”の音の変化を検証する
実は同社のVMカートリッジは、比較的最近発売された「AT100E」から往年の高級機「AT160ML」まで、ボディと交換針の形はある程度の共通性が保たれていて、相互流通させて遊ぶのが「マニアの秘かな楽しみ」となっていた。しかし、厳密にいえば各モデルで発電回路の設計は違い、同社技術陣によると「相互に流用はできるけれどお薦めするものではなかった」とか。しかし、今作はそれをオフィシャルに「できます!」と断言してくれているのだから実にうれしい。
こうやってボディと交換針を複数用意し、相互に付け替えることで音質のバリエーションを楽しもうという考え方は、1970年頃から80年代にかけて順次登場してきたグレース品川無線の「F-8」および「LEVELII」シリーズ以来なのではないか。「アナログ再ブーム」の声も聞かれる昨今だが、それでも全盛期に比べればごくささやかな規模である。そんなご時世にこういう野心的な製品開発を提起してきたオーディオテクニカには、個人的に惜しみない拍手を捧げたいと思う。
こうなったら興味の赴くところは一つ。まず全種類の「純正サウンド」を聴き、その音を踏まえて、シリーズを跨ぐボディと交換針の組み合わせを試してみることだ。針交換を紹介する上で、各モデルの音質傾向をお伝えする必要を感じ、まずはそちらのレポートを詳細に行ったが、針交換の組み合わせのテスト結果とお薦めする組み合わせについて知りたいと言う方は、当サイトで後日その結果が報告されるそうだ。
まずはステレオVMカートリッジ 7機種のサウンドを試聴
■「VM510CB」 ¥14,500(税抜)
接合丸針「VMN10CB」搭載/交換針単体価格:¥9,500(税抜)
まず「純正組み合わせ」の音を、価格の安い方から順に聴く。VM510CBは接合丸針を持つラインナップで最も廉価な製品だが、貧相な音がするというわけではない。クラシックの残響感はやや浅めになるが、弦は艶やかさを保つ。高低両端ともレンジが特段広くはないのだが、バランスが良く十分に聴かせてくれる。
ジャズは質感はそこそこだが、しかし鳴りっぷりの良さは大いに買える。ポップスは懐かしい吉田美奈子を聴いたが、声のスケール感がやや小さめに感じたものの、ドラムスのビートやベースラインは実にマッシブでどっしりとしたピラミッドバランスを聴かせる。シンバルの質感があと少しほしいと感じたのは、接合丸針ゆえか。
しかし、例えばシンバルの伸びがもうひとつと思われたら、プレーヤー側でアームを少し尻下がりに調整してやると、一気に高域方向の量感と抜けが向上するはずだ。お使いのプレーヤーで調整が可能なら、一度試してみる価値はある。