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【特別企画】3モデルの効果と音質をチェック

USB端子に挿すだけ。パイオニア「DRESSING」でオーディオの音質はどれだけ変わるのか?

公開日 2017/06/20 10:00 岩井 喬
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APS-DR001:音像が引き締まり奥行き感が掴みやすくなる

まずはMacへAPS-DR001のみ挿した状態でのサウンドを確認してみる。

APS-DR001

変化の度合いとしては穏やかな傾向であるが、音像の引き締め効果や音場のS/Nの良さも十分高い。オーケストラも音像の輪郭がより明確となり、音場もすっきりとして奥行きも掴みやすくなった。余韻の音伸びもクリアにまとめ、ハーモニーの響きも粒立ち良くスムーズだ。

ジャズにおいても個々の楽器の質感をより滑らかに表現し、有機的な音質に変化。ウッドベースの胴鳴りもリッチでハリ良く響かせ、ピアノやホーンセクションも爽やか。アコギのアタックもカラッとしてヌケが良い。低域方向の引き締めも強く、ロック音源のクリアさも際立っている。

ボーカルは肉付き良くすっきりとしており、口元の潤いも自然に描く。誇張のない自然な解像感が印象的だ。このボーカルに付加されるリヴァーブの表現も高く、余韻の伸びの深さも明確で、収録現場のリアルな残響感との描き分けも鮮明である。


APS-DR002:ゆったりとした伸び良く落ち着いた傾向

続いてAPS-DR002をMacに挿入し、USB-DACに至るUSBケーブルをAPS-DR002に繋いだ。

APS-DR002

APS-DR001と比べ、ゆったりとした伸び良く落ち着いた傾向で、音場の自然さも際立っている。ボーカルの艶感も増し、ウェットでハキハキとしたサウンドだ。オーケストラの響きは適度な弾力を伴った、躍動豊かでキレある演奏を聴かせ、艶やかな弦楽器の潤い良い質感が耳当たり良く感じられる。ストリングスの旋律もしなやかで、クリアに澄んだ余韻が一際爽やかだ。S/NもAPS-DR001よりワンランク向上しているような印象で、力強さと歯切れの良さが伴うロック音源も、密度を持たせつつ音像を引き締め、ナチュラルでハリの良いサウンドを聴かせてくれた。

女性ボーカルは肉付き良くスムーズな質感で描かれており、ディティールを柔らかくまとめ、耳当たりも良い。ジャズピアノはアタックの切れも良く、朗らかな響きに満ちる。ウッドベースはむっちりとして存在感豊かに描かれ、ボディの響きも制動良く表現。階調の細やかな、丁寧な音色である。


APS-DR003:高S/N、高分解能でキレ良い清涼サウンド

そしてAPS-DR002と同じ構成ながら、大きく価格が異なる最上位モデルAPS-DR003を聴く。接続条件はAPS-DR002試聴の際と同じ状態だ。


まず驚くのは、APS-DR002よりも遥かに解像度が高く、キレ良く鮮やかで清涼なサウンドとなったことである。高域にかけブライトで硬質なテイストが強まるものの、音像は引き締まり、定位はフォーカス良くまとめ、実に爽快。音場はクリアでS/Nもこれまでで一番高い。

ただし、APS-DR002との価格差ほどの音質変化があるかといわれると、明言しにくいのが正直なところだ。効果の大小は使用環境にも左右されるところだろう。基本的な音質傾向のベクトルもグレードアップ軸にあるものの、音色としてはAPS-DR002と違いクールな傾向である。このAPS-DR003は環境を選ばず、どんな状況でも解像感良く鮮明なサウンドを味わえる印象であり、『DRESSING』シリーズで最も効果がわかりやすいともいえるだろう。

オーケストラは分解能高く、管弦楽器の旋律をキレ良く表現。低域の制動も見事で、余韻のクリアさ、ホールの広さも明確に掴めるような残響感のリアルさが際立つ。ジャズのホーンセクションもシームレスでキレ良く先鋭なタッチ。ピアノやシンバルの響きも涼やかでシャープに描かれる。ボーカルもハリ良くクールな口元を滑らかにまとめ、流麗で凛とした存在として表現。落ち着きもあり、無機質な傾向ではないが、基本的には付帯感のないドライで硬質なサウンド傾向といえるだろう。


DR003とDR001のダブル使い:それぞれの良さを活かし合うバランスの取れたサウンド


最後にAPS-DR003とAPS-DR001を組み合わせた状態でのサウンドチェックでは、幾分冷たい印象を持ったAPS-DR003の音色がほぐれ良くしなやかな方向にシフトし、穏やかで適度なウォームさを伴ったバランスの良いサウンドになった。S/Nの高さは維持しつつ、落ち着き良く爽やかで、広がりよくリッチな響きを持った音場が展開。ボーカルも厚みがあり、低域も弾力豊か。ノイズとは無縁な高いサウンド水準を確保しつつも、耳馴染みの良い自然な音色も両立させた、万人向きの音質バランスといえるものである。



USB接続環境の音質改善を推進させる『DRESSING』シリーズは、いずれもノイズっぽさを抑えた滑らかで誇張のない自然な音質へとサウンド品質を向上することができる、オーディオアクセサリーとしては控えめな特性を持つモデルたちであるようだ。

しかしながらパッと聴いた瞬間に大きく音が変わるアイテムの中には、歪みを増やして音量感を稼ぐような派手な効果を与えたものも存在するため、慎重に試聴を行う必要がある。そうしたアイテムに比べれば『DRESSING』シリーズは入門層にとってかなり良心的といえるだろう。

今回はスピーカー環境で試聴を行ったが、ヘッドホン環境ではより如実にその音質向上を感じられるはずだ。USBオーディオ環境の品位改善に初めて臨むリスナーに入門として最適なAPS-DR001を筆頭に、『DRESSING』シリーズは素直な音質が特長のネットオーディオ関連アクセサリーのエントリーとして最適な製品群である。



■試聴音源
【クラシック】
・イ・ソリスティ・ディ・ペルージャ『ヴィヴァルディ:四季』〜春(192kHz/24bit)
・飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラコンサート2013『プロコフィエフ:古典交響曲』〜第一楽章(96kHz/24bit)

【ジャズ】
・『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』〜届かない恋(2.8MHz・DSD)

【ロック】
・デイヴ・メニケッティ『メニケッティ』〜メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ(CDリッピング・WAV)

【ポップス・その他】
・『Pure3 Feel Classics -Naoya Shimokawa-』〜Feeling Heart、closing(2.8MHz・DSD)
・Suara『うたわれるもの〜偽りの仮面/二人の白皇・歌集』〜不安定な神様(2.8MHz・DSD)
・長谷川友二『音展2009・ライブレコーディング』〜レディ・マドンナ(筆者自身によ2.8MHz・DSD録音)



特別企画 協力:パイオニア(株)

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