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PRブランド8周年の節目となる8BAモデルの実力とは

qdcの原点は“BAマルチ”にこそアリ!3つのプロサウンドが詰まったIEM「8Pro」を聴く

公開日 2024/03/11 06:30 高橋敦
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まずは我々音楽ファン向けの「Hifi」サウンドの印象。“何のためにBAマルチが発展したのか?”を改めてわからせられる音だ。帯域を広げるため低域側と高域側のドライバーを独立させ、歪みを抑えるためドライバー数を増やすという、その歴史の最先端。リスニング向けといっても強調や演出は感じられず、BAマルチに期待されるワイド&フラットそのもののようなモードだ。

なので音楽ジャンル等への得手不得手もない。総合的に難曲と言えるYOASOBI「アイドル」を聴き込んでも不満なし。どの帯域の楽器もBAらしい弾けるようなアタックと音像のクリアさを備えており、そのおかげで楽曲全体のスピード感、リズムチェンジを伴う場面転換のキレも際立つ。

ここはベースに注目!という場面になればそのベースが前に抜けて来てくれるのもポイント。ベース単体でどうこうではなく、全体の明瞭度やバランスによって楽曲全体のアレンジが正しく機能しているおかげだろう。

“これぞBAマルチの強み”と主張するかのような、ワイドレンジでバランスよく、明瞭な「Hifi」サウンド

「Studio」サウンドについては低域抑制型と感じる方が多いかと思う。低域を抑えることで帯域と空間にスペースを確保し、制作時にダイナミクスや空間表現を把握しやすくしてある印象。

その特性からアコースティック楽曲との相性は特に良好だった。アコースティックギターとウッドベースのデュオ曲、Julian Lage「Double Southpaw」を聴くと、エレキのそれとは違うアコギならではのダイナミクスを活かした演奏に、より深く引き込まれる。

ベースの低音も、量感的にはタイトになることで、響きの見え方がよりクリアに。エレクトリックサウンドの曲でも、例えばMidnight Grand Orchestra「ソリロキー」では、楽曲の豊かな低音が少し抑えられるおかげでエレクトリックな空間表現の方にフォーカスした聴き込み方をできた。

一方「Live」サウンドは低域充実型で、相対的に高域側はやや穏やかに。Robert Glasper Experiment「Cherish The Day」に含まれる多様な要素のうち、ヒップホップな抜け感よりも、クラブ的な重みやソウル的なメロウさの方を強めに引き出してくれるチューニングだ。また「Studio」モードでは声のドライな質感や鋭さが強まりすぎる曲、例えば田村ゆかり「雨のパンセ」に、そこを適度に落ち着かせる狙いで使うのも効果的。

さて最後に、同社のリスニング向けモデルの中で8Proと価格帯が近い、低域BA2基/中域BA2基/高域BA2基/超高域EST2基の「TIGER」と、本機8Proの「Hifi」モードを聴き比べてみた。

価格帯は近いが、プロ向けの8Proとはコンセプトが異なる「TIGER」(269980円/税込)とも聴き比べてみた

特に大きな違いはやはり高域側の感触。TIGERは静電型らしい滑らかさ、8ProはBAらしい明確さが持ち味だ。そして全体の見せ方も、空間に気配を満たすTIGER、空間をすっきりさせて音像をくっきり見せる8Proと対照的。「Hifi」モードでもモニター的なカッチリ感を出してくれる点が8Proの個性と言えるだろう。


BAマルチは今や、大きな進化は見込みにくい、枯れた技術なのかもしれない。しかしだからこそ、本機のように明らかな進化を見せつける新製品の価値はさらに高まっている。BAマルチの最新到達点として、8Proの3つのサウンドをぜひ体感してほしい。

ちなみに、本機のカスタムIEMモデル「8Pro-C」も先んじて受注が開始されている。耳型を採取するなど追加の作業が必要となるものの、自分の耳の形にあわせて作られるオーダーメイドのフィット感や、シェルとフェイスプレートのデザインを選べるカスタマイズ性は、カスタムモデルならではの魅力。qdcのイヤモニ技術が込められた選択肢のひとつとして、こちらも注目だ。

デザインやフィット感にこだわるなら、耳型を採ってから制作するカスタムIEMモデル「8Pro-C」も発売中だ(275000円/税込、耳型採取費別)


(企画協力:アユート)

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