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PR2024年内での生産終了を前に振り返る

4年経っても色褪せない価値がある。改めて識りたい、デノン周年機「A110シリーズ」の魅力

公開日 2024/07/17 06:30 山之内 正
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4年前にデノン創業110周年記念モデルとして発売された「DCD-A110」と「PMA-A110」が年内で生産終了になるという。どちらも “2500NEシリーズ” をベースにリファインを施し、事実上1つ上のクラスへの移行を果たしたモデルだ。

Ultra AL32 Processingや可変ゲイン型プリアンプなど、 “A110シリーズ” に投入された技術はその後に発売された製品群でも重要な役割を担っている。A110は4年を経た現在もデノンのハイファイコンポーネントを象徴する基軸モデルなのだ。今後は入手の機会が限られてしまうが、いま一度その価値を検証する意味はあると思う。

デノン110周年SACDプレーヤー「DCD-A110」(写真上:税込336,600円)/プリメインアンプ「PMA-A110」(写真下:税込393,800円)

■「周年モデルだからこそ」出来た業。本気の高音質技術を惜しみなく投入



DCD-A110とPMA-A110は、ステレオ仕様のPCM1795をLとRそれぞれに2チップ用いる4 DAC構成の「Quad-DAC」を採用し、優れたS/Nを確保している。一方、デジタル入力を装備するのはPMA-A110のみで、DCD-A110はディスク再生に特化した設計を貫いている。

アニバーサリーモデルとしてデノン最先端の高音質技術を投入。そのノウハウは現行モデルで活かされている

その設計思想は2500NEシリーズからそのまま受け継いだもので、デジタルも含めアンプの入力を充実させるアプローチは現代の高級オーディオの動向に従っている。ファイル再生に主軸を置くリスナー、ディスク再生にこだわるユーザーどちらにとっても合理的な選択肢を提供し、将来の拡張性も確保できるので、長期間使い続けたい人にはうってつけの存在と言えそうだ。

ちなみにネットワークプレーヤー「DNP-2000NE」のグラファイトシルバー(A110シリーズに仕上げを揃えた仕様)もA110と同時期に生産を終える予定なので、ネットワーク再生まで高級感あるカラーで統一したいならいまが最後のチャンスだ。

「中身はほぼDCD-A110」だというネットワークプレーヤー「DNP-2000NE」。A110シリーズと同じグラファイトシルバーモデルも、今回一緒に生産終了となる(もう一方のプレミアムシルバーモデルは販売継続)。A110と組み合わせてネットワークオーディオを楽しむなら、こちらも要チェックだ

PMA-A110でデジタルとアナログの回路が併存することの影響を懸念する人は少ないと思うが、もし心配ならデジタル回路を遮断する2種類のアナログモードを活用すれば良い。モード2を選べばディスプレイ表示も消え、実質的にアナログアンプと同等になるので、デジタル入力を使う機会が少ないのなら常用をお薦めする。

DCD-A110では、ノイズ源となるディスプレイを消灯させる高音質モード「ピュアダイレクト」を搭載

PMA-A110ではEQなどをバイパスする「ソースダイレクト」、デジタル回路を遮断する「アナログモード」を搭載。アナログモードは2段階から選択可能だ

USB端子を介してパソコンから伝わる有害なノイズを遮断するためにデジタルアイソレーターを導入したり、肉厚の鋼板3枚で輻射ノイズを遮蔽するなど、デジタル入力使用時のノイズ対策もきめが細かい。

機構面の作り込みもデノンが得意とする領域の一つだが、A110では質量や剛性の確保にとどまらず、開放的な空間再現など、あくまで音質最優先で素材や構造を吟味していることに注目すべきだろう。トップパネルとフットにアルミ素材を導入したことはその端的な例の一つだ。

さらにボリューム回路の設計変更も次世代を見据えた重要な変更点の一つと言える。ノブの回転角を検出して高精度な電子ボリュームを制御する方式に変更してスムーズな操作フィールを実現しつつ、信号経路の大幅な短縮にも成功したという。優れた操作感と音質を両立させる手法として注目に値する。

PMA-A110はデノンのそれまでのハイファイコンポーネントと異なり、高精度な電子ボリュームを採用したこともポイント。ギャングエラーの回避や信号経路の短縮などを実現した

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