PR「Oracle MKIII」「Hype10」のクオリティもチェック
THIEAUDIO「Origin」は低音好き垂涎!骨伝導搭載・クアッドハイブリッド構成のイヤホンを聴く
■新世代技術とトラディショナルな作り込みが正しく融合
発足からわずか数年にしてイヤホンファンからの評価や信頼を勝ち取ったTHIEAUDIO(セーオーディオ)。その製品は静電型ドライバーの積極的な採用とその使いこなしの巧みさに象徴されるように、新世代の技術やセンスを感じさせるものだ。
しかし一方、オーソドックスでありつつ完成度の高いイヤーモニターシェイプのシェルや、ゴツゴツとした手応えのあるケーブル類などは、ハイエンドイヤホンブーム初期の名機にも通じる、トラディショナルな雰囲気も色濃く漂わせる。最新と伝統の正しき融合。THIEAUDIOが幅広いイヤホンファンに刺さっているのはそういった魅力からかもしれない。
ここではそのTHIEAUDIOの最新モデル「Origin」、そして直近のラインナップを代表する「Oracle MKIII」「Hype10」をピックアップ。それぞれに込められたTHIEAUDIOらしさ、現代最新のイヤホンとしての魅力を紐解いていこう
■骨伝導ドライバーを含むクアッドハイブリッド構成の「Origin」
Originは超低域にダイナミック型を1基、中低域にバランスド・アーマチュア(BA)型を2基、高域にもBA型を2基、超高域には静電型を2基、加えて骨伝導ドライバーという、大規模なクアッドハイブリッド(クアッドブリッド)構成を採用したモデルだ。
そこからもわかるように技術的にも同社の最先端が結集されたモデルだが、さらに注目してほしいのはそのチューニングコンセプト。これまでもさまざまな機種で魅力的な低音表現を聴かせてくれてきたTHIEAUDIOが、このモデルについては特に「ベース愛好家のために設計」「これまでで最も魅力的なベースシグネチャーのひとつ」と述べているのだ。一体どのような低音を響かせてくれるのか、楽しみにせずにはいられない。
そのワクワクを一旦抑えつつ技術要素から確認していこう。中低域と高域のBA型にはそれぞれの帯域に最適なSonion製とKnowles製をセレクト。超高域の静電型はSonion製。THIEAUDIOは同社の静電型ドライバーを早い時期から採用し使いこなしており、ここも安心感のあるセレクトだ。ダイナミック型は、このところ採用例が増えてきているバイオセルロース振動板のものを、超低域のみを担当するサブウーファーとして搭載。
■他のドライバーの発音に干渉しない骨伝導ドライバーの魅力
そこに加えて搭載されるのが骨伝導ドライバーとなる。こちらは特定の帯域の再生を担当するのではなく、中高域全体の質感表現や分離を高める役割を担っているとのことだ。骨伝導ドライバーは他方式のドライバーと音の伝え方が根本的に異なるため、他のドライバーの発音に干渉することなくその役割を果たせるのだという。
またシェル内部にはこの骨伝導ドライバーの設置スペースが半埋め込み式で用意されており、ドライバーとシェルの接触を確保。骨伝導の効率を高め、前述の効果を高める狙いだ。医療グレード樹脂によるシェル全体の設計も優秀。ダイナミック型と骨伝導型という大型ドライバーを含む大規模なハイブリッド構成をうまく配置し、大柄ではあるが無理のないサイズにまとめ上げている。装着時のフィット感も良好だ。
ほか、付属の「EliteNoir」ケーブルは、 THIEAUDIOケーブルの中でも特にかなりゴツい部類。だがそのゴツさのおかげで絡みにくいので、取り回しはむしろ悪くない。プラグは4.4mm/3.5mmのマルチプラグ。
■ベース愛好家のための設計その看板に偽りなし
ではお待たせのサウンドについて。何より最初にお伝えしたいのは「ベース愛好家のための設計」の看板に偽りなしだ。もちろん低音がバカスカ出されているわけではない。そんな低音表現だったらベース愛好家は納得しないだろう。
ローミッドには豊かな厚みや太さを持たせてベースラインを押し出しつつ、超低域側のローエンドは過剰に響かせすぎず適度な量感とタイトな感触にまとめ、低域の土台を強固なものとする。音楽的なバランスを考慮して的確に制御されているが、制御されていながらも量感や躍動感は損ねられておらず、音像の明瞭度も高い。それがOriginの低音表現だ。これにはベース愛好家も頷くしかないはず。というよりも開発陣の中にベース愛好家がいるに違いない。
アイザイア・シャーキー「Special Lady」は、楽器を演奏する側のベース愛好家には知られた存在であるベーシスト、シャレー・リードの名演も光る楽曲。ミュートを効かせてモコッとさせた音色によるベースラインのグルーヴは、そのミュートの具合も含めた絶妙な演奏ニュアンスによって生み出されている。
再生側でモコモコさせすぎてもバキッと音を立てすぎてもどちらにしても台無しだが、そこに対してのOriginの回答は満点。ウォームな音調とローミッドの豊かさでモコッと感をたっぷり出しつつ、ローエンドが膨らみすぎないので音色やフレーズがもたつくことはない。さらにはモコッとした音を明瞭に届けるという一番の難関も見事にクリア。これは骨伝導ドライバーのおかげか。
加えて特に低音表現重視というわけではない、ボーカル中心の普通のポップスとの相性も良好だ。田村ゆかり「雨のパンセ」では、ベースラインを妙に押し出したりはせず、歌を主役としたバランスを維持。声の特徴的なハスキーさはしっかり出しつつも嫌なシャープさは出さないというボーカル描写の巧みさ、心地よさもうれしい。ベース愛好家を大満足させつつ、そこに限定されない汎用性も備えたイヤホンだ。