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PR3000シリーズ待望の新作

デノン新フラグシップSACDプレーヤー「DCD-3000NE」を聴く。ベテラン評論家も「信念とあくなき探究心を実感」

公開日 2024/12/29 07:00 大橋伸太郎
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デノン創立110周年記念モデル「DCD-A110」をベースに、さらなる低ノイズ化、シグナルパスの最短化、そして同社の最高グレードパーツを贅沢に使用したサウンドマスター山内慎一氏による徹底的なサウンドチューニングにより登場した新たなフラグシップSACDプレーヤーの「DCD-3000NE」。

独自に開発した制振性に優れる「Advanced S.V.H.(Suppress Vibration Hybrid)Mechanism」やデノンのアナログ波形再生技術の最上位バージョンである「Ultra AL32 Processing」を搭載するなど、同社の誇る技術を結集させたモデルとなる。


DENON SACDプレーヤー「DCD-3000NE」(462,000円/税込)

■ベースモデルA110から基板やパーツを大幅に変更


デノンは1972年に世界初の業務用PCMレコーダー「DN-023R」を開発し、レコードのデジタル録音の扉を開いた。1981年には業務用CDプレーヤー「DN-3000F」を開発、翌年に民生機「DCD-2000」を発売。光学ディスクの実用化と普及に大きな役割を果たした。

21世紀になりストリーミングとファイル再生、アナログリバイバルを迎えているが、CDには確立された再生互換性や、通信環境やサーバートラフィックに左右されない安定性等々、数々の優れた特徴がある。ディスクメディアをオーディオにどう位置づけるかが問われている今、デノンは性能に優れたディスクプレーヤーを出していくことが自社の使命と考えた。

そうして、DCD-3000NEを送り出した。本機がUSB入力を持たないディスク専用機であることにデノンのメッセージ、ディスク再生への思いを受け取れる。


DCD-3000NEの各部をみていこう。ベースモデルとなるDCD-A110で2層だったオーディオ基板を、先行で発売されたプリメインアンプPMA-3000NE同様に4層基板にした。アナロググラウンドを強化し、デジタル基板やメカからのノイズへの耐性を高めた。

デノンの設計手法の一つミニマムシグナルパスをディスクプレーヤーの本機にも貫き、ワイヤーレス化を進めた。デジタル電源基板、デジタル基板、アナログ基板同士間で飛び込みノイズのアンテナとなりうるケーブルを廃止し、ボードトゥボードと呼ばれる基板で基板同士の連結構造とした。ワイヤーレス化でワイヤーの位置等による製品同士の音質のばらつきがなくなったほか、電気的干渉も低減。SYコンデンサー等のカスタムコンデンサーを音楽信号の通らない電源部にも投入した。

内部の基板は2層から4層にグレードアップし、グラウンドの強化やデジタル回路からのノイズの影響を抑制している。また放熱効果も向上しており、DACから発生する熱を効率的に拡散することで、回路の安定動作とデバイスの長寿命化も実現。L/Rの回路はシンメトリーにレイアウトし、音質の左右差を排除している

本機の最大の変更点がDAコンバーター部である。DCD-A110はDACにTIの2回路構成のチップPCM1795をモノモードで1chあたり2個、合計4基使用する4構成としたが、本機ではデバイスをESSテクノロジー ES9018K2Mに変更したうえでクアッド構成は踏襲。デノンは並列化の利点に、チップや回路の微細な差が平均化されて、LとRのレベル差や歪み率が是正されて音空間が歪みなく精密に現れることを挙げる。

384kHz/32bitに対応するDACを左右チャンネルにそれぞれ2基(4ch)ずつ使用したQuad-DAC構成を採用。Ultra AL32 Processingによりアップサンプリングされた1.536MHzの信号を768kHzに分割し、2基(4ch)の差動電流出力型DACに入力。4倍の電流出力と6dBに及ぶS/N向上を実現した

汎用オペアンプを使わずDAC後段の出力回路をフルディスクリートにした。ディスクリート構成では、I/V変換とポストフィルターの差動合成に関してオペアンプではできない、性能や動作に特化した回路構成が組める。

デノンの看板技術が、デジタルソースの音質をアナログ波形にかぎりなく近づけるAL32だが、DCD-A110で採用されたULTRA AL32 Processingを引き継ぎつつ、ES9018K2MにあわせDAコンバーター部のアナログ部をアップデートした。同様にポストフィルターの部品点数を新デバイスの特性にあわせ削減している。

デノンのアナログ波形再生技術の最上位バージョン「Ultra AL32 Processing」を搭載。PCMデジタル入力信号に対して、前世代の2倍となる1.536 MHzへのアップサンプリングと32bitへのビット拡張処理を行う

本機はデノンサウンドマスター山内慎一氏が総監修した。2019年に発売された銘機、「DCD-SX1 Limited」開発が生んだパーツを大量に投入して音を磨き上げた。山内氏は本機について「DCD-A110の分解能の高さとDCD-SX1 Limitedのシャープさやプレゼンスを融合させたかった」と語る。

その結果、オーディオ基板やデジタル電源部に計100点は軽く超える音質パーツを投入。アナログ/デジタルすべてのブロックにカスタムコンデンサーを採用し、DCD-A110と比べカスタム品の占有率は大幅増となった。ワイヤーやビス、底板やトランスプレートも吟味、ケーブルのねじり具合も再調整された。メカを覆うトップカバーはDCD-A110の銅1mm厚からA6061航空グレードアルミ1.5mm厚に変更と、枚挙にいとまがない。

ディスクドライブには、独自開発した制振性に優れる「Advanced S.V.H.(Suppress Vibration Hybrid)Mechanism」を搭載。メカニズム全体の剛性を高めるためのメカカバーには、様々な素材と厚みで試作と試聴を行い、サウンドマスターが選び抜いた1.5mm厚のアルミニウム合金(A6061)を新たに採用する


電源トランスは、信号の性質の異なるデジタル回路とアナログ回路を独立させた2トランス構成を採用。また、DCD-2500NEに対して約5倍の出力を誇る高出力EIコアトランスによって一層の動作の安定化を実現している

アナログオーディオ回路専用の電源ユニットに、独自の大容量(3,300μF)ブロックコンデンサーを採用し、アナログオーディオ回路に最適化したフルディスクリート構成を実現。カスタムパーツもふんだんに用いている

■音場空間が端正で澄明であり輪郭が引き締まりにじみがない


デノンのプリメイン「PMA-3000NE」、スピーカーシステムにB&W「805D4 Signature」を組み合わせ試聴した。冒頭で紹介したように、本機はディスク再生に特化したプレーヤーである。このシンプルな合目的設計がてきめんに音質にあらわれている。加えて惜しみない高音質パーツ投入とサウンドマスターの時間を費やしてのヒアリングに磨き上げられ、じつに清々しい音質である。繊細さと剛性感を兼ね備えた鋭利な刃物にたとえればいいだろうか。あらわれる音場空間に歪みやくもりがなく端正で澄明、楽音に色付きが皆無で輪郭がきりっと引き締まってにじみがない。

パッパーノ『はげ山の一夜』(SACD)は、ダイナミズムとスピード感が豊か。混成合唱の音圧感、打楽器の立ち上がりと収束も小気味良い。金管の厚みと鈍い光沢も美しい。定位の鮮明さは3000コンビの長所で混声合唱、少年合唱、ソリストのステージ上の定位が明瞭。合唱やオケのクレッシェンドが淀みなくエネルギーに満ちていて大きな音のマッスが俊敏に動く。低弦のゴリゴリした野性味ある響きに溜飲。たくましさも忘れていない。

【SACD】
『シェヘラザード、はげ山の一夜』
パッパーノ指揮、サンタ・チェチーリア管
(ワーナー WPCS-13851)

ティーレマン/ウィーンフィルの『ブルックナー第7交響曲』(CD)は、今回の改良の中心DAC部の向上ぶりを強く印象づける。弦の表現が分解能豊かで倍音が乗りなめらかな質感で歌い聴き手を酔わせる。録音限界を乗り越えて演奏の息遣いを生々しく伝え最新のAL32の進歩を実感した瞬間。

【CD】
『ブルックナー:交響曲第7番ホ長調』
ティーレマン指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(Sony Classical SICC-30893)

デヴィッド・ギルモアの『邂逅』(CD)は空間が広く深い。楽音の生々しさはもちろん、楽音のない疎の部分に冷たい温度や湿度、色、匂いを感じさせるのが凄い。試聴室の空気を支配し一変させる豊かな情報量と浸透力がある。

【CD】
『邂逅』
デヴィッド・ギルモア
(Sony Records SICP-31722)

デジタルディスクプレーヤーという手慣れた製品のすみずみまで精査と検討を加え、再生の可能性に改めて挑戦したDCD-3000NEに、デノンの信念とあくなき探究心を実感する。しかし、デジタルオーディオのオリジネーター・デノンにとってDCD-3000NEは大きな通過点であって目的地ではない。探求の旅はこれからも続く。

SPEC


●再生周波数範囲:2Hz〜100kHz(SACD)、2Hz〜20kHz(CD) ●再生周波数特性:2Hz〜50kHz(-3dB/SACD)、2Hz〜20kHz(±0.5dB/CD) ●SN比:122dB ●ダイナミックレンジ:115dB(可聴帯域/SACD)、101dB(CD) ●高調波歪み率(1kHz):0.0005%(可聴帯域/SACD)、0.0015%(1kHz/CD) ●ワウ・フラッター:測定限界以下 ●出力レベル:2.2V(10kΩ) ●出力端子:RCA×1、光デジタル×1、同軸デジタル×1 ●外形寸法:434W×138H×405Dmm ●質量:16.8kg ●消費電力:35W(待機電力0.3W以下)

リアパネルの出力端子には、RCA、光デジタル、同軸デジタルをそれぞれ1系統ずつ装備する。端子部は真鍮削り出し金メッキが施されている。



(提供: ディーアンドエムホールディングス株式会社)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.195』からの転載です

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