HOME > レビュー > ソニーが発売する「進化するテレビ」の内容を予想してみた

ソニーが発売する「進化するテレビ」の内容を予想してみた

公開日 2009/12/10 19:03 Phile-web編集部・風間雄介
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
このところ、販売面で海外メーカーに押されがちな印象が強い国内AVメーカーのテレビ事業だが、ソニーが11月に開催した新経営戦略発表会(関連ニュース)では、テレビ事業の復権に向け、二つの注目すべき方針が発表された。「ネットワーク経由で新たなアプリケーションを提供する『進化していく新しいテレビ』の導入」と、「独自ディスプレイデバイスを用いた次世代ディスプレイの開発継続」である。久々のポジティブな話題に、大きな期待を寄せているAVファンも多いことだろう。

このうち後者の次世代ディスプレイについては、「有機EL以外にもいくつか進めている。非常にエキサイティングなデバイスを開発している」(ソニー(株)SVP コンスーマープロダクツ&デバイスグループ ホームエンタテインメント事業部長の石田佳久氏)と述べるにとどまり、具体的な内容については明らかにされなかった。

本格的に新しいデバイスを搭載したテレビを市場投入するためには生産ラインの整備が欠かせず、それを行うためには一定の時間が必要になる。秘密裏に準備を進めている可能性もなくはないが、大規模な投資を行ったという発表はまだ無い。デバイス自体の開発が順調に進んだとしても、我々が実際の商品を目にするまでには、まだしばらく時間がかかりそうだ。

■「進化するテレビ」に関する情報を整理する

一方の「進化していく新しいテレビ」については、断片的ではあるが、いくつか情報が公開されている。発表会時に投写されたパワーポイントには、実際の画面と思われるGUIも映っていたことから、商品化は間近に迫っているものと予想される。今回はこれらの情報をもとに、ソニーが「これまでのテレビとはまったく概念が異なる商品」と自信を見せるテレビの内容を予想してみよう。

まず、「進化していく新しいテレビ」に関する、現時点で明らかにされている情報を順不同に挙げてみる。

・これまでのテレビとはまったく概念が異なる
・これまでの概念を覆す視聴スタイル
・ネットワーク経由で新たなアプリケーションを提供する『進化するテレビ』
・快適な操作性
・QWERTYキー付きインプットデバイス
・マルチタスク
・放送やパッケージメディア、インターネットなどを一元的に管理

経営方針説明会で示された「進化するテレビ」の特徴

上記のいくつかの項目から共通して読み取れるのは、テレビの「視聴体験」を革新しようという意志である。特に、視聴スタイルや操作性、マルチタスク、複数メディアの一元管理といった事柄は、大雑把に括ってしまえば、ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンスを改善する試みと捉えて良いだろう。これまで以上にスムーズかつ高速なインターフェースやマルチタスクを実現するため、処理能力が大幅に増強されることもほぼ間違いない。ただしこれだけでは「これまでのテレビとはまったく概念が異なる商品」というには、根拠がやや薄弱だ。

■「進化する」というキーワードの意味とは

次に「進化」という言葉について考えてみよう。これまでのAV機器/ゲーム機では、「進化」はファームウェアのアップデートによってもたらされることが多かった。同じソニーグループのPS3がその典型例で、これまで数え切れないほどのファームアップを繰り返し、機能面だけではなく、画質や音質面でも大きな進化を果たしてきた。

テレビはかなり長い期間使う商品であるだけに、同じようなことができたら良いのに、と考える方も多いだろう。ただし、PS3と同じようなことをテレビで実現するためには、ハードウェア、おもに計算能力やメモリーのリソースをあらかじめ潤沢に用意しておく必要がある。圧倒的な計算能力を持つ「CELL」を搭載することで、この方向に進んだのが東芝のCELL REGZAであり、今後、CELL REGZAはファームアップで進化を繰り返していくことだろう。

もちろんソニーの「進化するテレビ」も、これまでのBRAVIA以上の処理能力を備えるだろうし、ファームアップもされていくことだろうが、その「進化」の方向性は、強大な処理能力を拠り所にするCELL REGZAとは異なるようだ。同社のプレスリリースには「ネットワーク経由で新たなアプリケーションを提供する『進化するテレビ』」と書かれており、アプリケーションが「進化」の重要な要素であることを示しているのだ。

■アプリダウンロードは既に実現、今後は他社機でも一般的に

では、ネットワーク経由で新たなアプリケーションを提供することは、それほど画期的なことなのだろうか。ご承知の通り、すでに国内のBRAVIAでは「アプリキャスト」と呼ばれるサービスをすでに提供しているし、北米でも同種の機能を展開している。いずれもJavaをベースとしたスクリプトで作ることができ、開発ツールなども提供されている。一定の基準を満たせば、サードパーティーがアプリを作って配布する仕組みが既に整っているのだ。

さらに他社を含めた動向を見渡してみると、米Yahoo!が開発したテレビ向けネットサービス「TV Widgets」が国内でも展開される予定で、テレビでアプリをダウンロードして活用することは、今後より一般的になっていくだろう。

つまり、ただ単にテレビでアプリケーションをダウンロードできるというだけでは、あえてその付加価値を強調するねらいを理解しにくい。もちろん今ある機能を増強し、再度スポットライトを当て直すという戦略も考えられなくはない。だが、ソニーが「これまでのテレビの概念を覆す」というからには、何らかの“隠し球”が用意されているものと期待したくなる。

次ページ「QWERTYキー」がカギを握る?

1 2 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク