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公開日 2024/03/22 06:30
最上位機に匹敵するサラウンド表現

通常サイズで“モンスター超え”!「AVC-X6800H」がデノンAVアンプ「第二章」を告げる

大橋伸太郎

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2016年に発売された「AVC-X6300H」は画期的な一体型サラウンドアンプだった。3000/4000番台と同じレギュラーサイズの筐体に11台のパワーアンプを内蔵。多くのユーザーが本機の登場でドルビーアトモスへの対応を実現した。

7chや9chでもアトモスは可能だ。しかしサラウンド再生において、センターから背後へ音場の中央を貫くラインは重要である。頭上にハイトチャンネルが加わり重要の度がさらに深まった。サラウンドバックを犠牲にすることはできず、7.1.4chのスピーカー構成は堅守したい。そうなると、いきおい11chアンプの内蔵が求められる。

筆者もAVC-X6300Hでアトモスを実現した一人だ。レギュラーサイズのAVC-X6300Hは従来のアンプと置き換えが容易だ。セッティング変更で「AVC-X8500H」を導入するまで、6年間アトモスソフトの音質評価の大役を担ってくれた。

X6300Hは、パワーICの熱対策に配慮したカード状のパワーアンプ基板を11ch分独立して直立させる離れ業「モノリスコンストラクション」で11ch内蔵を実現したが、当初はチューニングがこなれておらず、音質の硬さが耳に付いた。

その後「AVC-X6400H」「AVC-X6500H」「AVC-X6700H」と世代交代を経て音の完成度を高め、昨年はモノリスコンストラクションがミドル機の「AVR-X4800H」にまで拡張。そして今年、「AVC-X6800H」が登場した。

11.4ch AVアンプ「AVC-X6800H」:528,000円(税込)

■「モンスターを超える」デノンプレミアムコンパクトAVアンプの第二章「AVC-X6800H」



本機の開発に与えられたテーマは、モンスターを超えるプレミアムコンパクトAVアンプ。ここでいうモンスターとは、一回り大きな筐体を持ったかつてのトップモデルAVC-X8500Hを指す。X6300Hに始まるプレミアムコンパクト4世代は、聴き劣りしない性能と機能のレギュラーサイズモデルをめざしたが、第5世代は超えようというのだ。つまり第二章が開幕したわけだ。

現在X8500HAをリファレンスとして常用し、110周年記念モデル「AVC-A110」、さらにフラグシップ「AVC-A1H」を預った経験のある筆者は、この新展開に多いに興味をそそられた。

結論をさきに言ってしまおう。AVC-X6800Hは上級機X8500H、さらにアドバンスモデルA110に追いつき、多くの面で追い越した。両機より端的に優れているのがサラウンドの動的解像度。ハイファイでいう静特性に対する動特性でなく、ドルビーアトモスのオブジェクトの描出力である。

広々とした音場空間に現れ動いていく音(オブジェクト)が明瞭でリアルな質感がそなわり、移動速度が早く動線は胸がすくほどくっきりと明瞭。AVC-A1Hに比肩するといっていい。これについてはあとで詳しく紹介することとして、AVC-X6800Hがどのような改良を経てこの音を掌中にしたか確かめていこう。

■最上位「AVC-A1H」で培った経験、ノウハウで小型&高品質を実現



パワーアンプはデノン伝統のAB級リニアパワーアンプ回路だが、A1Hで使った差動一段を採用した。段数が少ないとシンプルで音が良いが、設計が難しい。そこにA1Hのノウハウが役立った。パワーアンプブロックのサイズが6700から横幅にして約1cm、奥行きにして5mm、高さにして14mm、質量は1.4kgから2.2kgと大きくなっている。

11ch分のパワーアンプを全て独立したディスクリート回路で搭載する「モノリスコンストラクション」を採用。アンプとヒートシンクの間に銅板を挟み込むなど、細部にわたるまで高音質化が行われている

心臓部のパワートランジスタに部品メーカーと4年をかけて共同開発した新型のカスタム品を搭載した。地味だが、ヒートシンクとパワーアンプの間にX6700Hの時になかった銅板が入った。電源部がしっかりしていないとそうした改良の意味がなく、トランス、ブロックコンデンサーは部品メーカーと共同開発したカスタム品である。

こうなると、どこかダウンサイジングしないと収まらない。天板を開けてX6700Hと比較すると、ビデオ基板を含むプリアンプ部がぐんとコンパクトになっている。

AVC-X6800Hの内部構造

X6700HではDSPを2個使ったが、今回はA1H同様に「Griffin Lite XP」の1個使い。15chまで処理可能で、信号経路の最短化が図れる。

プリとパワー間の接続にはシールドケーブルを使った。X4800Hは基板を使ったプリント配線だった。手はかかるが、ケーブル繋線のメリットに、各ch間の距離を等長にでき、クロストークも減ることがある。白河工場で内製する強みがこういうところに現れる。ボリューム回路はX6700Hから一歩押し進め、信号経路をより短くするため、DAC回路の直下に基板がある理想的なレイアウトになった。

最大の変更はサラウンドアンプの心臓部、デジタル処理部にある。DAC回路が一新され、A1Hの設計を踏襲するが、A1Hは2chDACを8個ずらっと並べて使ったのに対し、X6800AはESSの最新型マルチchDACを2個使う。このDACデバイスはA1Hと同じ電流出力型、ちなみにX8500H/6700Hは電圧出力型である。

先述の通り、DSPにはA1Hと同じGriffin Lite XPを採用した。デジタル処理がX6700HからA1Hへ一気に近づいたのである。

AVC-X6800Hの背面図。11chのアンプ出力に加え、13chのプリアウトにも対応。Dolby AtmosやDTS:Xはもちろん、360 Reality Audioなどの最新フォーマットや8K映像、HDMI 2.1などの最新規格を網羅している

AVC-X6800Hを大橋氏宅で試聴評価

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