音質強化を図ったウッドコーンオーディオシステムのフラグシップ

本機はビクターのウッドコーンオーディオシステムのラインナップにおいて、2wayのバイアンプ・バイワイヤリングによるダイレクトドライブ方式に対応した最新のフラグシップモデルとして加わる。

ウッドコーンスピーカーが、これまでウーファーの大口径化や異方性振動板の採用、さらにはボイスコイルやマグネットの大型化など、数々の高音質化に取り組んできたのはご存じの通りだ。また、トゥイーターユニットについても、強力ネオジウムマグネットやエッジ加工など得意の高音質化技術が傾注されている。もちろんエンクロージャーの内部には三層構造の竹響板、スプルース製の響棒など様々なパーツを用いて、オーディオでありながらまさに楽器と呼ぶべきユニークな製品に仕上げられている。そこからは一貫して、「スピーカーは楽器でありたい」という同社エンジニアたちの想いが溢れ伝わってくるようだ。

本機ではウッドコーンオーディオシリーズのフラグシップモデルとして、これまでの上位モデルのエッセンスをベースに、スピーカー/アンプ/プレーヤーの全ユニットにおいてさらなる高音質化チューニングを投入。ウーファーのエッジはブチルゴムの素材配合比を変更し、より伸びやかで広い音場表現力を追求。ボイスコイルから引き出す錦糸線にも4N OFCを採用している。マグネット背面の装着板材も、チェリーの四角板からメイプルの八角形状に変更されている。

アンプとプレーヤー部では堅牢なアークベースや3点支持の無垢真鍮インシュレーターに加え、共振分散のためにアルミ＋銅の異種金属ワッシャなどが採用されている。さらにK2回路の定数や音響コンデンサーをはじめとするパーツレベルの追い込みまでこだわりに余念がない。

4chダイレクトドライブならではの、澄んだ分離の良いサウンドに加え、A300ではもう一段、熟成の度が深まっていくような精密な表現力を実感させる。ただS/Nや分解能が高いだけでない。どのソースも立体的な音場の広がりが顕著なのだ。エッジの改良やマグネット背面へのメイプル材の装着が効を奏したためか、「佐渡裕/ベルリンフィル」は群を抜くほど透明で音色壮麗。ホールのすみずみまでエネルギーが行き渡り、遠近のコントラストがこれほど明瞭に聴こえるとは驚きである。DEUSアンプも鮮度感がアップして、管弦楽のぶ厚いハーモニーのうねりの中でも、指揮者の息使いや木管のキーの音までハッキリと届けてくる。

ウッドコーンではあまり聞かなかったオルガンがまた素晴らしい。「りゅーとぴあ 山本真希/グレイツィングオルガンの魅力」はホールの高さをしっかりととらえた滞空時間の長い演奏だ。天井から音楽が降り注ぐようで、空間の濁りが消え、スペインオルガンの特徴である水平トランペット管の力強い輝きとエコー効果が楽しめた。

また天然材コーンの持ち味である、女性ボーカルやヴァイオリンのみずみずしい艶やかさと併せ、A300ではピアノやパーカッション、ロック系のギターなどのアタック感やキレ、全域でのヌケの良さなども聴き逃せない。3年の熟成をたっぷりと味わわせる大人のオーディオコンポである。

（text：林正儀）