いまだに語り継がれる、VHSとベータマックスのフォーマット戦争。結局はVHSの完全勝利に終わったわけだが、その帰趨を決める要因の一つに、アダルトビデオの存在があったというのは有名な話だ。
VHSには豊富にアダルトビデオが用意されていたのに対し、ソニーがアダルトビデオ製造に消極的だったことから、VHSでのアダルトビデオ販売量が急増。一般ユーザーがVHSに流れていったという説が、真偽のほどはともかくとして、まことしやかに囁かれている。
これと相似形を為すようなできごとが、いま起きつつある。1月19日に「InfoWorld」が
報じた内容によると、ソニーは、同社子会社のソニーDADCでアダルトBDソフト製造を行わない方針を示したという。また、あるアダルトメーカーの担当者は、ソニーがディスク製造メーカーに対し、「アダルトソフトを製造したらライセンスを失う」と警告したとも述べているようだ。
これらの対応を受けて、米アダルトビデオメーカーはHD DVDでのタイトルリリースに力を入れ始めている。「2007 International CES」で、多くのカンファレンスが開かれたSands Expoでは、同時期にアダルト関連の総合展示会「AVN Adult Entertainment Expo 2007」が開催されていた。実際に会場を見て回ったが、Digital PlaygroundやVIVID Videoなど多くの大手アダルトビデオメーカーが、HD DVDでのタイトルリリースを告知。タイトル数ではBDを完全に圧倒していた。
HD DVDでのアダルトソフトのリリースが増えることで、BDが劣勢になるのではないかと報じるメディアもあるが、それは早計ではないか。アダルトソフトを個人で所有することがほとんどなかったVHSとベータマックスの時代と今とでは、状況が全く違う。すでにアダルトビデオ産業は、DVDという非常に人気のあるメディアでの販売経路を確立しているからだ。
また、そもそも個人ユーザーがハイデフのアダルトビデオにどれほど関心を示すか、まだ不透明であることも指摘せざるを得ない。たとえハイデフ・アダルトビデオに注目が集まったとしても、それが一部マニアの趣味にとどまるのか、それともハードの販売を大きく牽引し、フォーマットの普及を伸ばすだけの力があるのか、現時点では誰も回答を持ち合わせていない。これはアダルトビデオに限った話ではないだろうが。
(Phile-web編集部・風間)