特集

営業部長の年末商戦
39人のキーマンが語る「展望と勝算」

松下電器産業

すべてのジャンルにヒット商品を

生みだし市場をけん引する

松下電器産業(株)
パナソニック
マーケティング本部
商品グループ
グループマネージャー

坂口雅久氏

 この4月、松下電器の中村社長は、「2002年度決算説明会」の席上、「2002年度から、『破壊と創造』のスローガンの創造≠ノ軸足を置いた事業を実行していきたい。また、主戦場で勝つことができるV商品≠中心に積極的に展開、従来より付加価値をあげた88品目のV商品で、売上げの2割にあたる1兆円の売上を目指す」と宣言している。今、約6ヵ月が経過し、2002年の上半期の動向について、パナソニックマーケティング本部の坂口氏は「パナソニックマーケティング本部のオーディオビジュアル関連商品の売上げは、前年同期比金額ベースで130%以上となっています」と語る。業界全体としては、前年比102%という実績からみると、かなり高水準の実績を上げることができたといえる。

 その要因を次のように解説する。「業界では5月、6月にかけてサッカーのワールドカップというビッグイベントがあったことによる特需が外的要因として挙げられます。その中でも当社は、プラズマテレビ、BSデジタルチューナー内蔵のハイビジョンテレビ、DVDビデオレコーダーなど、平均単価を押し上げる商品が好調で、これらが大きく貢献したと考えています」。さらに同社は、ワールドカップの特需関連のみならず、ミニコンポ、ビデオムービー、ポータブルMDプレーヤーなど、マスマーケットの民生用AV機器の各ジャンルにヒット商品を連発したことが、前年を大きく上回る結果になった。

 特に、最も金額的な貢献度が高いプラズマテレビは、ワールドカップ後も7月から8月にかけて新製品を4モデル発売、現状月間6000台以上のペースで売れている。中でも42インチの売れ行きが好調で、プラズマテレビ全体の60%から70%を42インチで占めている。2002年度には、業界全体で15万台から20万台と予測されているが、ほぼ30%前後のシェアをとっていることになる。

 もうひとつの成長分野として注目されているDVDビデオレコーダーは、DMR―E20の後継機E30をワールドカップ前の3月に発売、さらにHS1の後継機HS2が8月に発売され、いずれもマーケットを席捲している。これも、ハードディスク内蔵のHS2の方が台数ベースで全体の6割を占め、単価アップに貢献した。

 さて、2002年の下期の大きなヤマ場である年末商戦に対し、どう展望しているのか。その点については、必ずしも楽観視はしていない。今までの前年比130%アップを維持することは、可能かという問いに対し、「ワールドカップのような特需はないわけですから、前半と同じような伸びを維持するのはそう簡単ではないでしょう。また、株価の下落など、経済環境が不透明で予測が難しい。あまり、楽観しないで厳しいことを前提に取り組むほうがいいと考えています。ただし、当社としては二桁アップは必須課題になりますね」。

 2002年下期、年末商戦以降の主要ジャンルの取り組みは以下の通りだ。

 主力商品の第一にあげられるのは、プラズマテレビ、CRTのハイビジョンテレビ、そして液晶テレビである。プラズマテレビは、世界初、BS・110度CSデジタルチューナー一体型TH―42PX10を始めとするプラズマタウ。年末商戦も42インチを中心に拡販していく。ハイビジョンテレビは新開発ブラウン管を採用し、画面中央だけでなく周辺までクリアに再生する110度CS対応のTH―36D30である。同社では、ハイビジョンテレビとプラズマテレビの好調に支えられ、テレビの平均単価は125%アップしたという。液晶テレビは、9月10日に20V型TH―20TA3を発売した。最速の動画表示(応答速度16msec)の実現により、液晶テレビ特有の動画の残像感を低減するとともに、新開発の「新液晶AI」技術による、高水準の高輝度・ハイコントラストを実現している。液晶テレビに関しては、正にこれからが正念場を迎えるジャンルで「当社は液晶テレビ特有の動画の残像感を緩和する技術を商品化しましたし、また、マレーシアの工場が、11月から本格的に稼動することによって全ラインナップが11月末に出揃います。液晶テレビは国内・海外各社参入してきているので、総需要は拡大すると予測されます。返って多くのメーカーが参入し、メーカー間の競争がある時こそビジネスチャンスと考えています」と意欲を見せる。

 第二に力を入れていくジャンルはデジタル録画機。特にその中でも、DVDレコーダーは、HS2とE30の2モデルを主力としていく方針である。特にハードディスク内蔵モデルは、各社が製品を発売することによって、ユーザーのハードディスクに対する抵抗がなくなってきていること、使い勝手の良さなどにより、年末も大いに期待している。また、DVDビデオプレーヤーは、同社を含めDVD―RAMが再生できるモデルが増えていくことが予想される。さらに、PCの動向も視野に入れ、海外の+RWの攻勢などの動きを承知した上で、RAMでのシェアアップを図っていく構えだ。

 また、DVDプレーヤーとビデオデッキの複合機が現在、台数ベースでは最も出荷が多い。10月から、どちらもプログレッシブ対応のDVDプレーヤーとS―VHSビデオの複合機NV―VP50S、ハイファイビデオの複合機NV―VP30の2モデルを用意、マーケットで現在各社から約20モデル登場している中、年末商戦でも主力になる強力商品だ。

 第三の注力ジャンルはビデオカメラだ。年間の出荷台数は150万台前後を推移してほぼ横ばいの状況にあるものの、NV―MX5000、NV―GS5Kの大ヒットで、シェア25%以上を確保。年末直前の9月、10月は、ビデオカメラの最需要期と位置付け取り組んでいるが、「MX5000は需要に応じきれず品不足になり、ディーラーの皆様にご迷惑をかけています」と、うれしい悲鳴をあげている。

 その他では、マーケットでの注目度も高い商品ジャンルであるミニコンでは、SC―PM57MDを年末商戦でも主力とする。MDLP機能に加え、最大5倍速録音に対応し、4月に発売、5月のマーケットから即立ち上がり、その後の人気も衰えを知らない。「単品でシェア15%以上を取っているモデルです。年末商戦には、ほぼ例月の2倍以上の出荷が予測されます」。

 また、DVDの登場でミニコンポにDVDを標準搭載するモデルを同社では発売している。坂口氏は「DVD搭載モデルは、当初2002年夏に全体の10%、秋に15%、年末には20%の構成比になると予測していましたが、予想は外れていますね。やはりDVDミニコンに割高感があること、DVDの音楽ソフトを聞く層がまだ若い層に限られていること、プライベートルームにテレビがない、あるいは、あっても小型テレビであるなどの理由から、DVD搭載モデルは思ったほど伸びていません。ただし、2003年にはCDとDVDが逆転するかもしれません」と、今後の市場背景が注目される。

 ゼネラルオーディオのジャンルでは、ロングヒットしているポータブルMDプレーヤーSJ―MJ50の後継機SJ―MJ55が11月1日から発売される。新製品は、リスニングスタイルの拡大を提案したインサイドホンでも、スピーカーでも使用可能なドッキングスタイルのコンセプトはそのままに、プラス、ワンタッチで本体とスピーカーの着脱が可能になった。MJ50は昨年12月に発売され、ほぼ一年売れ続けており、後継機MJ55にも大きな期待が集まる。

 デジタルカメラでは、昨秋に浜崎あゆみをイメージキャラクターに起用したLUMIX DMC―F7を発売したが、今年は320万画素コンパクトファッショナブルモデルDMC―F1、光学12倍ズーム・光学手ぶれ補正機能を搭載したDMC―Z1の2モデルで年末商戦を戦う。

 大画面シアターに必要な液晶プロジェクターでは、昨年11月1日にTH―AE100を発売し、ホームシアターマーケットに大きな衝撃を与え、「カジュアルシアター」のネーミングで一挙に市場導入を果たした。その後継機がラインナップを充実させて、TH―AE200、TH―AE300の2モデルとして10月1日、15日から発売された。そこでホームシアター液晶プロジェクターの動向が注目されている。

 大画面ホームシアターのマーケットは、スクリーン、DVDプレーヤー、AVアンプ、スピーカーなどコンポーネントを巻き込むこだわりのマーケットであり、大画面、高画質のプロジェクターの普及は、映像とバランスのとれたクオリティの高いオーディオ機器のニーズに結びつき販売単価を押し上げることができる。最近ではこの点に着目し、ホームシアターショップなどの専門店だけでなく、家電量販店も巻き込み市場拡大が予想されている。同社でもホームシアターシステムは、プラズマテレビ、液晶プロジェクターとのシステム提案を想定し、新製品を用意している。

 これら、パナソニックブランドの商品の中で、年末商戦に向け雑誌、交通媒体は当然としてテレビコマーシャルの対象になるのは、プラズマテレビTH―42PX10、DVDビデオレコーダーのE30、HS2である。「各社も年末商戦に向け集中的に宣伝することになると思います。弊社としては、継続的に主力商品を通じて、パナソニックブランドを認知していただくことを心がけております。最近では、いつどのモデルをどの媒体を通じて、どの程度宣伝するのか、といった問い合わせをしばしば流通の皆様にいただいており、それだけ当社の製品に関心を示していただいている証拠と感謝しております」。新製品が店頭に展示される機会を捉え、宣伝でバックアップするようにしているとのこと。

 年末商戦に向け、各商品ジャンルでの対応を見せる松下電器。商品ジャンルの中には、これから市場拡大が見込める成長商品、あるいは、注目される機会が少なくなっている成熟商品など多岐にわたるオーディオビジュアル市場だが、全てにヒット商品を生み出していこうとする意気込みが同社には感じられる。

三菱化学メディア
垣野元宏氏
ミノルタ
木村則夫氏

 

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