トップインタビュー
(株)デノン
代表取締役社長
坂本 光成 氏
Mitsushige Sakamoto
ものづくりを中心軸に据え
攻めて攻めて攻めまくる
グローバルな会社で、しかも
動きは大変素早くなり、考え方も
大きく構造改革できています
私が理想として考えているのは
親子三世代にわたる
“デノン党”を育てることです
昨年10月1日に発進した新生デノンが丸1年を迎えた。坂本社長以下の新体制のもと、身軽でスピーディーな社内体質へと変換。外部とのアライアンスも積極的に進め、アピール度の高い商品を次々と市場に送り込んでいる。元気なデノンの強さの秘密がどこにあるのか。坂本社長に聞いた。
インタビュー ●音元出版社長 和田光征
攻めの経営に主眼を置き
営業利益も黒字を実現
―― 昨年10月1日に新会社「デノン」が発足し、坂本社長による新体制がスタートしてから1年が経過しました。この1年を振り返りいかがですか。
坂本 新会社の発足においては、財務体質が大きく改善され、大変いい形でスタートを切ることができました。そしてこの一年は、攻めの経営に主眼を置いて取り組んでいます。とにかく元気を出して、攻めて攻めて攻めまくろうということです。世の中の流れは大変スピーディーですが、その流れに対して先手をとっていけるくらいに、スピードをあげていかなければならないと考えています。それを実践していくために、社内の風通しも大変よくなったと思います。
世の中にさらに幅広くデノンを認知していただくためにも、守りの経営を行っていたのでは非常にむずかしい環境にあると思います。これからも、攻めの経営を続けていきますが、そこで主体となるのがものづくり≠ナす。何よりもここに、より一層の力を入れていきます。
数字の面では、01/下期、02/上期と変則の年間比較となりますが、税引前損益は、日本コロムビア時代の負の財産の整理により赤字を発生させてますが、営業利益では前年比110%を確保し、過去にない数字を達成しています。この勢いをもって下期に突入しましたが、かなりシビアな予算組みながら、売上げでは対前年110%を実現できる手応えを掴んでいますし、赤字はこの下期に消す計画としています。
―― ものづくりの基本にあるのは、音への追求ですか。
坂本 デノンのベースとなるのはピュアオーディオです。音を非常に大事にしてきましたし、この姿勢はこれからも変わることはありません。商品企画や販売戦略も、ここがベースとなります。
商品ジャンル別に見た場合には、確かに、ピュアオーディオは前年比90〜95%と、前年を確保することができませんでしたが、ピュアオーディオに対する取り組みを縮小する会社もある中で、当社にとっては、フォローウインドとなっております。一方、大きく伸長しているのがホームシアターですが、こちらは下期の予算も入れて、前年の7倍近い伸びを見込んでいます。主な商品はAVアンプとスピーカーになりますが、高額の商品しか扱っていないDVDでも、前年比3倍という数字になります。大変好調に推移していると言えますね。
攻めの経営において、今後はさらに、情報発信に対して、もっと傾注していきたいと考えています。ブランドイメージのアップを実現していくと同時に、世界統一基準で色々な宣伝戦略を行っていこうと思います。
―― 具体的にはどのようなことをお考えですか。
坂本 例えば、ホームページでは多言語対応として、より多くの国の方々に情報を提供していきたいと考えています。また、広告塔の拡充や、雑誌や新聞広告にも従来以上に力を入れていかなければならないと考えています。モノ系雑誌や女性誌、インテリア雑誌など、これまで以上に幅を広げていきたいと思います。それから変わったところでは、都バスに今年5月から広告を打っていますが、これをさらに広げ大阪でも11月からスタートしました。商品を体験していただける場としての視聴室もきちんと整えていきたいですし、この第一弾として、今国内の東京エリアと、海外では中国・上海の2つの地域において、具体的に話しを進めているところです。
総体的に、デノン≠フブランドイメージアップを図っていきます。商品はもちろん、その一方で、こうした宣伝活動により、「デノンはこういう会社なのだ」と、ひとりでも多くの方に知っていただける機会を創出していきたいと思います。
―― 店頭レベルでの宣伝面の活動は何かお考えですか。
坂本 実は、「全世界ホームシアター一色」という展開を行っていこうと考えています。ショップ・イン・ショップのようなスタイルで、デノンコーナーを全世界統一のデザイン、統一の基準のもとに展開していくものです。現在、ホームシアターではヨーロッパがやや遅れていますが、日米欧を対象にして進めています。
中国エリアでは、「デノンショップ」というデノンの専売ショップを展開しています。当初、広州を中心に5店舗からスタートしましたが、現在では76店舗にまで拡大しました。中国では高額な商品だけを扱っていく戦略をとっており、現在は主に、ピュアオーディオを中心に展示・販売しています。しかし中国でも、ホームシアターが広がってきていますので、ここにもそうしたスペースをつくっていきたいと思います。すぐにでもできますからね。
―― 商品はもちろん、さらに、トータルな意味から、デノンの総合力をアップさせていくということですね。
坂本 会社の内部留保は、必ずしもお金だけとは限りません。現在、当社は幸いにも無借金会社となり、財務体質が改善されていますから、今、先行投資をしておいて、将来、その見返りがくるという内部留保の仕方もあると思います。現在、D&Mとして、マランツと共同で中国に工場を建設する話を進めています。先進的な機械を導入し、減価償却をしながら進めていく。これもひとつの内部留保です。しかし、それとはまた別に、優秀な人材を確保して将来へ向けての人材を育成したり、さきほど説明した宣伝活動なども、立派な内部留保のひとつであると考えています。目に見えない利益を確保することができる内部留保に力を入れていきたいと思います。
デノンらしさを訴えられる
プレミアム商品へ特化する
―― それでは、デノンの営業戦略についてお聞かせください。
坂本 ホームシアターを中心に、そこへデノンのピュアオーディオの技術をいかに活かしていくかという戦略が、当社のベースとなります。
具体的には今、インストーラー事業に対する取り組みを強化しており、他業界との連携の話しを進めているところです。本格的なホームシアターシステムを導入するケースでは、いまだに非常に高額なイメージを抱いているお客様が少なくないのが実情です。ところが、これが家の新築・改築時ですと、数千万円の住宅ローンの中に、オプションで100万円、200万円と積み上がる形になりますから、思ったほど負担に感じないし、また、家を建てる時から行えば、スピーカーの配線などを埋め込み型にするなど、見た目に非常に美しく、かっこのよいものができあがります。現在、専門のセクションを設けて、動きはじめているところです。
それから、当社の場合には、ビデオ関係の商品を持っていません。トータルでの提案力を高めていくという意味からも、ビデオを持ったメーカーとのアライアンスの実現へ向けて現在検討しているところです。
また、この11月からは、スーパーオーディオCDへの取り組みをスタートします。いままでアナログに親しんでいた音にこだわりのある人たちが、スーパーオーディオCDに興味を持ち始めている。また、CDの音を追求していくと、自ずとこの世界に突入していきます。これまではソフトのタイトル数が少ないために市場参入を控えていましたが、年内には600タイトルが揃うということで、当社も満を持して、11月から商品の発売を開始することを決定しました。
デノンでは、お客様に真の価値を伝えていくことができるプレミアム商品に、特化していきたいと考えています。そこで商品の保証期間も、これまでは1年でしたが、プレミアム商品に限っては、それを1年延長して2年とし、お客様にもより安心して商品をお買い求めいただける環境を構築していきます。
販売エリア戦略では、欧米はもとより、拡大が見込める中国、ロシア、韓国、東南アジアなどをさらに強化していきます。タイアップ戦略を含め、宣伝費も相当に投入していくつもりです。
商品戦略はデザインに次ぐ
第2フェーズへ突入した
―― デノンの商品は、個々のコンセプトが非常に明確だと思います。また、先頃セカンドエディションが搭載されたデノンリンクも、その先に何があるのか、何が起ころうとしているのか大変気になるところですね。
坂本 当社の商品戦略として、まず、米国の有名なデザイン会社IDEO(※1)と提携し、商品デザインの方向付けを行っていくという第1フェーズを終了しました。その成果も存分に活かして、第2フェーズでは、デノンのブランドイメージを一気に高めていきたいと考えています。
そのためには、商品ジャンル別に、コアとなるビジネスとノンコアのビジネスとを分けて考えていく必要があります。そうしないと、ブランドイメージもなかなかついてきません。
さきほどプレミアム商品へ力を入れていくとお話しましたが、デノンの商品は、比較的高価なものが少なくありません。しかし、だからといって40歳位になり、生活もそろそろ安定してきたから、「さぁデノンを買うか」という方々ばかりではなく、やはり、購買へと結び付けていくためには、若年層のボリュウムの大きいセットステレオの市場でも、きちんと力を入れておくことが大切だと思います。
セットステレオの市場は現在、過当競争にあり、流通もメーカーも大変な状況にあります。その中で改めて、音質を重視したハイグレードなシステムへとシフトしていきたいと思います。文字通りプレミアムシステム≠ニして、デノンの入門編としての位置付けをきちんと計画してまいります。
一番重要なコアビジネスは
ハイファイとホームシアター
―― それでは、注目の商品にスポットライトをあてていきたいと思います。
坂本 まず、当社の原点であり、我々のブランドや音の源泉でもあるピュアオーディオですが、ここには常に惜しみなく力を入れています。この年末には、先ほど申し上げましたように、スーパーオーディオCDプレーヤーのDCD │SA10を満を持して投入します。
スーパーオーディオCDについては、デノンとしてやりたかったし、やらなければならないと思っていました。しかし、これまではいかんせんソフトのタイトル数が少な過ぎました。それでは、いいものを出したとしても、市場を創ることはできません。ところが、この年末には600タイトルを超えてくるということで、期が熟したと判断しました。DVDの場合もそうでしたが、ソフトのタイトルが600〜700を超えてくると、市場が急激に膨らんでいきます。やりたかったものが、ようやくできる環境になったということです。
そして、デノンがやるからには、「今までのスーパーオーディオCDは何だったんだろう」と言われるくらいに、内容や評価を勝ち取れる商品としたいですし、今回発売するDCD │SA10は、技術的にも工夫し、CDとスーパーオーディオCDを基板レベルから物理的に完全に分け、相互干渉をなくし、それぞれの回路についても、最新の高音質パーツを使用し、当社が得意とする構造的な設計を含め、自信を持った商品として完成しました。この冬の話題をさらう商品になると自負しています。
ここを核にして、もう一度、ピュアオーディオの市場を創っていきたいと思っております。どちらかというと、いまは市場全体がホームシアターの方向に向かっていますが、ピュアオーディオもまだまだ大きな潜在能力を秘めています。ファンの方々も非常に多いですし、もう一度市場を構築していきたいと思います。ここが、年末商戦での最大のポイントのひとつになると思います。
―― ホームシアターもさらにラインナップが充実しますね。
坂本 現在、ビジネス的なコアとなっているのはホームシアターです。市場をリードしていくトップメーカーとして、常に新しいものへもチャレンジしていきたいと考えています。デノンが新しく提案するデジタルインターフェースの「デノンリンク」も、新しいバージョンを入れたDVD-A1とAVC-A1SRが、この11月から発売されました。DVDフォーラムでは、デジタルで高性能の信号を出すこと自体が禁止されていましたが、デノンリンクは、プライベートなリンクであること、暗号処理により著作権保護等を行ったことで、この秋から商品に搭載していくことを実現しました。
この技術で注目されるのは、次の時代、次の商品へと結んでいくということなんです。ホームネットワークサーバーやPCサーバーなど、ネットワークの商品へと発展していきます。開発的な面白さもありますね。ホームシアターの次の時代は、ネットワークだと思います。
この、ネットワークについては、当社では、ソフトウエアに優れた技術を持つ米国のメディアボリック(※2)という会社と手を組み、デノンの持つハードウエアの技術をコラボレーションした形で、ホームネットワークサーバーをはじめとする商品を開発しており、来年には市場に投入したいと考えています。ここをやらないことには次の時代に進めません。もう単品だけやっていてもダメなんですね。今、われわれが手に入れようとしている新しいネットワーク対応型の機能が、近い将来、DVDやAVアンプなどに入ってくるはずです。家庭の中が1本のケーブルや無線で結ばれるようになります。当社では30〜40名のエンジニアをこの部門に投入し、3〜5年後を見据えたビジネスのネタを、今から積極的に仕込んでいます。
―― デノンリンクの今後の展開は大変注目されますね。
坂本 ホームシアターのラインナップの中では、昨年くらいまでは、スピーカーがもうひとつ弱かったのですが、現在では、ホームシアターニーズで人気を集めるトールボーイ型にも数タイプを揃え、ここも本当に強化されました。当社のシェアも20%(JEITA)まで伸びて、前年比倍増となっています。この年末にもSC-T11Rというトールボーイ型の新製品を市場に投入します。スピーカーが強くなることで、ホームシアターのシステム展開も大変幅が広がりました。
また、音のメーカーとして、スピーカーは大変重要な商品になります。アナログのスピーカーやアンプのことを本当に理解することができるエンジニアが、国内ではかなり減ってきているようです。当社でも、アンプ関係の技術については、これまで蓄積されてきたものもありますが、スピーカー関連は弱い部分がありましたが、現在は技術者を社内で再教育するとともに、アウトソーシングも積極的に行い、補強、強化をしています。技術者をきちんと確保していくことも、さきほど申し上げた、内部留保の一貫だと考えています。
ホームシアターではまた、DVD、AVレシーバー、5・1chスピーカーが一体になったパッケージシステムが、非常に大きな市場に成長しています。当社では、春先にDHT-300シリーズを投入して市場参入しましたが、予想以上の売れ行きで推移しています。参入こそ遅れはしたものの、かなり上位の人気を保てていると思います。
―― 将来のデノンファンを育てるセットステレオも話題が豊富なようですね。
坂本 セットステレオのジャンルも、インテリアデザイン感覚を重視した、DVDプレーヤー搭載の新製品D-MS5DVを9月に発売しました。夏に発売したD-MS3ともども大変好評で、当社のシェアも統計(JEITA)で、こちらもスピーカー同様に、ほぼ前年比倍増となっています。
MS3にはUSB端子を付けてPCとの連携を強化し、MS5DVにはDVDを搭載しています。DVDを搭載したタイプが各社から投入されていますが、その性能差には非常にバラツキがあります。当社では、信頼性の高い単品と同様のレベルのものを搭載しております。また、米国のESS社のチップを採用しています。チップの開発段階となる4年前くらいからコラボレーションしていますので、安定した高性能のチップを搭載することが可能となっています。
セットステレオのビジネスは、価格面で大変激しい競争が続いています。このため、コアのビジネスとしては非常に厳しい面がありますが、DENON入門としてご満足いただき、ご購入いただけるような商品を投入していきたいと思います。
また、現在ヨーロッパでは、ハイコンポが大変好調に推移しています。D-M30が、先頃英国のオーディオ雑誌「What's Hi-Fi誌」で賞をいただきました。また、EISAアワード(※3)では、プレスタ201SAがコンパクトシステム部門で賞を獲得しています。
デノン独自で、現在の
倍くらいの規模は狙える
―― この年末商戦は、商品のみならず、それをつくりあげる体制も含めて、準備万端整いつつあるという印象ですね。
坂本 この一年は、順調に推移したと思います。この勢いを来年へそのまま持っていって、次から次へと、技術的にも、音質的にも優れた話題性の高い商品を市場に送り込んでいきたいと思います。さきほどお話しした、米国のデザイン会社のIDEOとのアライアンスにより、商品のデザイン面を見直してきた成果も、来年発売を予定しているハイエンドのセパレートタイプのアンプから、「これがデノンの新しいデザインだ」という点を確立していけると思います。
会社が変わり、他社とのアライアンスも積極的に進めるなど、デノンもグローバルな会社となり、大きく変わってきていると実感しています。動きも大変素早くなりましたし、考え方も大きく構造改革できているのではないかと思います。
―― ホームシアターはもちろん、オーディオを盛り上げていく上でも、デノンの商品は店頭でも欠かせない存在です
坂本 コンペティターが映像を手広く手掛け始めたり、また、オーディオからの縮小や撤退といった状況の中で、音におけるデノンの役割が大変大きくなってきていることはきちんと自覚しているつもりです。日本から音の専門メーカーがなくなってしまったら、大げさな話、日本から音がなくなってしまいますからね。それでは困ります。また、そこに当社が生きていく道があるのではないでしょうか。
メーカーとして、市場を荒らすようなやり方は、絶対にいけないし、また、地に足をつけていないと、長期的に会社を維持していくことはできませんからね。そのためにも、音の部分はまず、きちんと掴まえておきたいと思います。音を大事にしていくことが、基本路線となります。
今はたまたまホームシアターに風が吹いていますが、まだ、流行っているという感じで、地位を確保している段階にはないと思います。これが、本当に素晴らしい映像と音で地位を確保することができるようにするためには、メーカーの果たす役割は大きく、ホームシアターのトップブランドとして、デノンも大いに力を入れてやっていきたいですね。
―― デノンの商品は、販売店も売りやすい、ユーザーから見ても安心して購入できるイメージが確立されています。
坂本 当社が狙っているのは、ある程度高品位なグレードのゾーンですから、どんどん会社を大きくして、ボロ儲けしようなどとは考えていません。しかし、今のままではまだ小さ過ぎます。デノン独自で倍くらいの規模は狙いたいし、それくらいのマーケットは十分にあると思います。シェアをアップすることと、価値ある商品を提供して新しいユーザーを開拓していくこと。今の環境の中で、しっかりと利益を稼いでいくことが大事だと思います。
日本国内についていえば、流通と一緒になってやっていかなければならない。プレミアムブランドを浸透させるためには、売ってくれるところならどこでもいいというわけにはいきません。地場の有力店やオーディオ専門店をいかに育成していくかがひとつの課題であり、それが実現できれば、キャパはまだまだ広がっていくと考えています。
―― CSに関しては、どのようにお考えですか。
坂本 CSは、プレミアムブランドにとって欠くことができない大切な部分です。しかし、日頃社内を見ていますと、CSに対する関心や概念はわかっているのですが、いざその部門でどのように取り組み、また、将来どのように取り組んで行かねばならないかという意識や取り組み方については各々の部門の温度差を感じます。これらの温度差解消のためのプロジェクトチームを結成し、CSの向上を目指して行きます。そして、商品修理の短期化、ネットで寄せられた要望への素早い回答など、来年1、2月には専門のセクションをつくり、取り組みを強化していく予定です。
あと1年もすれば、相当に様変わりした形で、お客様や流通に対して応えることができると思いますので、是非、ご期待ください。こうした取り組みが、プレミアム商品を支えていくことになると思います。そしてこれも、会社がきちんと利益を出せるようになったからこそ実現できる話であり、社員の意識革命もどんどん進んでいます。何をやるにしても、昔と比べると各段と動きが早くなっていますね。
―― 今回、当社のオーディオ銘機賞、ビジュアルグランプリで、数多くの賞を受賞されました。
坂本 こうした賞をいただくと、もっとよくしたいという欲が出てきますね。我が社にとっては大変うれしい話です。受賞をただ喜ぶのではなく、そこでまた、本当に評価に値するものができているかという反省が生まれてきます。ここからまた、次の商品づくりがはじまるわけですね。
私が理想としているのは、親子三世代にわたるデノン党を育てることなんです。親父はデノンの大ファンだけど、気がついたら俺もデノンで楽しんでいる。恐らく息子もデノン党だよ…。そうした目に見えない価値観こそが、本当のブランド力ではないかと思いますね。
PROFILE
Mitsushige Sakamoto
1940年4月24日生まれ。64年中央大学商学部を卒業後、同年4月に日本コロムビア鰍ノ入社。経理、財務部門勤務を経て、89年財務部長、91年より電機事業本部海外営業本部長、99年取締役就任。01年常務取締役、01年10月1日会社分割により潟fノン代表取締役社長、現在に至る。趣味は音楽鑑賞とゴルフ。