新春トップインタビュー

(株)エイデン 代表取締役社長
岡嶋昇一 氏

売れる売れないではなく、
どうやって結果を出せたか
その中身が重要だ

初めての決算が予想を上回る数字となり、幸先のよいスタートを切ったエディオン。
販売の質が一層問われる時代に、得意とする地域密着をさらに強化し、流通の激戦に立ち向かう。
会長をつとめるNEBAのこれからの役割を含め、2003年へ向けての意気込みを聞く。

インタビュー ● 音元出版社長 和田光征

商品を一つひとつ売るのではなく
お客様が使うことを楽しめるよう
システムインテグレートしていく

幸先のよいスタートが
切れたエディオン

―― エディオンがスタートして初めての決算が先日発表されました。当初の予想を上回る結果で、順調なスタートを切られましたが、最初に、これに対する感想をお聞かせください。

エディオンの企業理念

お客様第一主義
Customer Oriented

地域密着型の事業展開
Region Focus

時代を先取りし続ける創造型企業
Creativity Focus

岡嶋 本当にほっとしたというのが実感です。エイデンとデオデオが事業統合して6カ月間でありますが、初めての決算ということで、たいへん緊張していましたが、当初の計画をクリアーできて良かったと思っています。事業統合を発表した時に、これによって経営が改善していくという道筋を対外的に発表させていただいていました。もし、それが計画通りうまくいかなければ、今回の事業統合が失敗したという見方をされてしまいますし、ひいては、われわれのような地域密着型の小売業に対する評価にも影響が出てしまいます。そういう意味で、何としてでも計画を達成しなければいけないという気持ちで、この半年間は非常に緊迫感がありました。

―― 通期の見通しはいかがですか。

岡嶋 第一期(6カ月)の決算発表と合わせて、第二期(6カ月)での見通しについても上方修正を発表させていただきました。一年を通して初めてひとつの結果になりますので、第二期についても対外的に発表した数字は必ず実現しなければいけません。今、エディオンとして、デオデオとエイデンの両事業会社に対して、ハッパをかけているところです。

―― エディオングループ専用のオリジナル商品が成功していますね。

岡嶋 オリジナル商品は、エディオングループ全体が一緒になって商品を開発して、各社で売っていきます。商品性を高めるという面ではお互いに知恵を出し合い、販売面でお互いに競い合うということで、グループ各社にとって、いい意味での刺激が出ています。

エディオンがスタートする前は、自分の会社が頑張っているかどうかを判断するための材料として、NEBAの統計資料や業界の統計資料しかありませんでした。でも、今は、グループ各社さんの数字と比較することによって、自分たちの販売力を客観的に比較できるようになりました。

また、単に売れているとか売れてないということだけではなくて、どうやってその結果を出しているのか、その中身は何なのか、営業のやるべきことや経営がやるべきことが十分できているかどうかについての比較もできるようになりました。オリジナル商品の販売を通じて、グループ各社の販売力や収益力を高めていくという点での相乗効果が表れてきて、エディオンの他社との競争力の向上にもつながっています。

業界再編下、原点となるのは
地域密着型のビジネス

―― エディオンが設立理念に掲げられている「お客様第一主義」は、非常にすばらしいですね。ユーザーと密着して、尖った商品、尖った情報、尖ったサービスを提供していく。今年はこういうことが特に求められていくように思います。ここでもう一度、エディオンの設立の経緯や目的をお話ください。

岡嶋 デオデオとエイデンの事業統合を発表した当時(一昨年の5月)は、まさに、業界の再編がいよいよ動き出してくる時期が迫っていた時期でした。そのような経営環境の中で、久保さんと私には、われわれのような地域密着型の大型家電販売店にとっての生き残りをかけた業界再編を、デオデオとエイデンがイニシアチブをとってやっていきたいという思いがありました。

事業統合にあたって、最初に検討したことは、どういう理念を掲げるかということでした。共通の理念もなく事業統合をしても意味がないからです。当時は、全国展開を狙うヤマダさんやコジマさんなどの価格志向の強い量販店がどんどん勢いを増していました。また、大都市圏ではポイント制と圧倒的な品揃えを武器にしたヨドバシさんやビックカメラさんなど都市型のカメラ店系も、たいへん元気でした。

エディオンの根底にあるものは、地域に根ざして、そして、地域の中にネットワークを構築して、アフターサービスも含めたさまざまな付帯サービスを提供していくという地域密着型の商売です。そこで、われわれが育ってきた基本的な商売のありかたとしての「お客様第一主義」を理念として、競合企業と差別化していくための対抗軸として定めたということです。

お客様に最も近いところで商売をする企業は必ず残っていけます。ただ、地域密着型の考え方は、必然的にローカルチェーンとしての展開が中心になって、全国展開をすすめている競合企業とは売上面で対抗しきれません。でも、デオデオとエイデンが水平アライアンスの形態で手を組めば、全体で4000億円を超える年商を実現することができて、全国展開を目指している競合と対抗できる規模になります。将来、同じ理念を共有できる仲間を吸合して、エディオンを中核に全国横断的な地密着型の量販店の集合体を作っていきたいという思いもありました。平成14年2月4日、エイデン、デオデオ、上新電機、ミドリ電化プラス、ベスト電器の5社連合でスタートし、その後、再編を経ながら今日まできましたが、私は当時の決断は正しかったと思っています。 

今、市場では急速に上位企業への寡占化が進んでいます。私は、トップ5に食い込んでいかないと生き残っていけないと思っていましたが、デオデオと組むことによって、トップ4になりました。エディオンは地域密着型の家電小売業がナショナルチェーンに対抗して、生き残っていくためのひとつの方向性を示せたように思います。

―― 自分たちの強みを核に、他との差別化を徹底していくという戦い方ですね。

岡嶋 競争相手が強いフィールドと自分たちが強いフィールドがあるにもかかわらず、相手の強いフィールドで真っ向対決をかけるというのはありえない話です。たとえば、ポイント競争では、ひとつの店舗で何百億円も売るような効率の高い巨艦店にとって有利な販売手法です。そういうところとコスト構造が違う事業体が同じテーブルで戦うことは極めて危険です。われわれのようなNEBA系の販売店は、できるだけお客様に近い場所に、ある程度の規模できちんとした店を作って、地域に密着したサービスを提供していくということが、差別化のポイントです。

―― エディオンの単体は、エイデンとデオデオの2社で固定されるのでしょうか?

岡嶋 そうは考えていません。持ち株会社を通じた地域密着型の事業会社の集合体ということが、エディオンを設立したときに考えた会社の基本的な形です。ただ、事業統合だけに絞ってしまうと広がりが難しくなります。現在の新5社連合のように、オリジナル商品を通じて仲間作りを進めながら、その中でご縁があればエディオンの本体に入っていただければということが基本的なスタンスです。

―― 5年後の売上規模は、どの程度を目指されていますか。

岡嶋 エディオン単体で一兆円を目指しています。昨今の厳しい環境を考えると、5年きっかりで一兆円を達成するのは厳しいかもしれません。目標に到達するのに、もう少し時間がかかるかもしれませんが、時間を厳密に区切るのではなくて、収益を重視しながら着実にやっていこうということで久保さんと話をしています。

NEBAの果たす役割は
今後も小さくなることはない

―― 岡嶋さんはNEBAの会長も務められていますが、NEBAに対してはどのようなご指導をされていますか?

岡嶋 NEBAは家電小売業界を代表する団体として行政やメーカーなどとの対応窓口としての役割を担っています。現時点では、NEBAは国内家電小売業界におけるメインチャネルとしての発言力を持っていることから、さまざまな面で大きな役割を果たしています。

例えば、不当表示やポイント制の問題について、NEBAと商組という業界を代表する2つの団体が、問題提起をしたことで、ようやく公正取引委員会が動き出し、ガイドラインが出されました。家電リサイクル関連でも、NEBAの問題提起によってPCリサイクル法が制定されました。国内家電小売業界の全体が関わる分野で、その代表としてのNEBAが果たす役割は、今後も小さくならないと思います。

ただ、残念なことに、現在、NEBAグループ全体としての売上規模が多少縮小しています。一方で、その他の企業さんも頑張ってきています。もし、その関係が逆転すると、NEBAは国内家電小売業界の代表としての地位が崩れることになり、存続そのものが難しくなっていくと思います。NEBAの発言権を維持するには、会員企業の皆様に頑張っていただいて、国内家電流通のメインチャネルであり続けることが必要だと私は思っています。

―― 2003年から2005年の3年間は21世紀型商品の本格的な登場と普及が進む時期になりますが、その3年間の最後となる2005年をどのように見通されていますか。

岡嶋 2005年は、デジタル商品が本格的な普及期に入っていて、まさに、家電業界は成長期を迎えていることは間違いないでしょう。また、社会全体では、高齢化が進むとともに、日本の総人口がそろそろピークを迎えて、よりサービス重視型の社会になっていくように思います。また、世の中の動くスピードがどんどん速くなってきていることから、今のお客様は、時間に対する要求が高まってきています。

お買い求めいただいた商品の配達時間、不具合が起きた時の対応でも単に迅速なだけではなくて、お客様の生活の時間帯に合わせることが求められるようになってきています。このようなお客様の変化に対応するためには、物流やサービスなどといったさまざまな面でシステムを革新させていくことが、今後大切なポイントになっていくのではないかと思います。

―― 商品戦略面では、いかがでしょうか。

岡嶋 商品を単体で一つ一つ売るというのではなくて、システムインテグレートを提案していかないといけないと思います。お客様にとっては、システムインテグレートすればするほど、それらを「つなぐ」ことへのストレスが出てきます。そこで、今後、お客様にストレスを感じさせることなく商品群を繋げていくということが必要になってくるように思います。単に商品を使えるということではなくて、お客様が使うことを楽しめるような環境を作っていけるような商品をメーカーさんに作っていただきたいと思います。

プラズマは取り組み方ひとつで
商売が膨らんでくる

―― 商品の作り手としてのメーカーと売り手としての販売店の間に溝があった時期がありましたが、これからは、ユーザーの一番近くにいる販売店が媒介になって、ユーザーが本当に求めているものをメーカーに伝えて、一緒に市場を作り上げていくという時代になってきましたね。

岡嶋 アメリカと違って、日本の家電小売業ではメーカーさんに良い商品を作っていただいてはじめて、家電小売業が繁盛していくわけで、そこを絶対に崩してはいけないと思います。そのためには、メーカーさんに対して売ってやるからというような強圧的な考え方ではなく、共存共栄の関係で協力し合っていくことが必要です。

エディオングループでは、オリジナル商品の開発を中心に、メーカーさんと今まで以上に意見交換をしています。お客様の要望を販売現場から吸い上げて、より快適な生活ができるような商品の開発をしていく。そういう関係ができつつあるように思います。

―― PDPやDVDレコーダーなどに加えて、2005年に向けて、21世紀型の商品が続々と市場に投入されてきますが、エディオンさんやNEBAグループの会員社さんには、価格競争にはまりこまないようにしていただきたいと思います。

岡嶋 お客様は新しい商品を購入される時に、生活の利便性が上がりそうだとか、生活が楽しくなりそうだという夢を持たれています。それを実際に販売する時に、大根や卵を売るのと同じように、単なる生活必需品を売るような感覚で売るというのは、お客様にとっても販売する側にとっても楽しくないですよね。プラズマを買って大画面やホームシアターが家庭に入ってくることにイメージを膨らませているお客様に、価格の話だけをするというレベルではちょっと寂しいですね。もちろん、価格に関しての努力はしなければいけませんが、お客様に夢を提案できるような商売をしていかないと、一山いくらの商売では、夢のある業界にはなっていきません。商売は「信用第一」を永続することが大切と考えています。

 

PROFILE

Shouichi Okajima

1950年11月22日生まれ。74年成蹊大学法学部を卒業後、75年4月にエイデン入社。81年取締役、87年常務取締役、88年代表取締役、91年代表取締役副社長を経て、93年5月に代表取締役社長に就任。01年4月にはNEBA会長に就任。02年3月エディオン代表取締役社長。趣味はゴルフ。