トップインタビュー

潟fオデオ
代表取締役社長

友則和寿 氏
Kazutoshi Tomonori

営業政策の柱の一つとして
社長自らが先頭に立って
ホームシアターを推進



徹底した顧客管理とサポート体制の充実で中四国地区を中心にお客様から高い信頼を得ているデオデオ。同社はオーディオに強いという歴史的な経緯を持っている。昨年7月に社長に就任し、営業政策の柱の一本としてAVシステムのセット販売に取り組む友則和寿氏。そして「カジュアルスクリーン革命」を提唱する小社社長の和田光征。ホームシアターに意欲的に取り組む2人が市場の爆発に向けて語り合う。

インタビュー ● 音元出版社長 和田光征

商品を売ろうとするから
なかなかうまくいかないのです。
われわれが売るのは夢です

ホームシアターは高嶺の花と
思っているお客様がほとんど

―― 御社ではホームシアターに積極的に取り組まれていますが、最近の販売状況はいかがですか。

友則 当社では数年前から映像製品を販売する時に、オーディオ機器とシステムで売るようにという方針で進めてきました。当初はなかなか実績があがりませんでしたが、最近になってようやく販売セット数が増えてきました。

―― 友則社長は当社刊行の「ホームシアターファイル」の創刊号にもご登場されましたが、ご自宅でもホームシアターを楽しまれていますね。

友則 自宅にちょっとしたAVルームを持っていますので、友達が遊びにくるたびにそれを見せて薦めています。その時につくづく思うことは、お客様が持たれているイメージと実際とのギャップが大きいことです。 一般の方はAVシステムやシアターというと、ものすごく高価で広いスペースが必要だと思われています。ところが説明をして店で実際に商品を見ていただくと、そんな安い価格で買えるのかとか、そんな狭いスペースでもできるのかということに驚かれます。

―― 実際に手が届かない商品ではないことが、お客様に十分伝わっていないのですね。

友則 先日、友人にそろそろホームシアターを買ったらどうかと話をしましたところ、奥さんがうるさいからというわけです。そこで、奥さんと一緒に本店にご来店いただいてご説明をしました。その時にわかったことは、AVシステムと聞いて、かなり高価で大掛かりなものを想像されていたことでした。 われわれはホームシアターを手軽に考えていますが、ほとんどのお客様はそう思っていません。最初から高嶺の花だと思っていますから販売員に質問しませんし、くわしい説明も求めないわけです。特にカジュアルスクリーンのターゲット層ではそうです。メーカーさんも含めて業界全体で、いかにしてこれを一人でも多くのお客様に伝えていくかということに、取り組んでいかなければいけません。

―― ホームシアターと一口に言ってもお客様はさまざまですからね。

友則 2つの山がありますからね。和田社長が誌面でもおっしゃっているように、カジュアルスクリーンはセットスクリーンの下に来る商品ではありません。まったく別の山としてとらえないと判断を誤ってしまうことになります。

団塊ジュニア層の呼び込みが
ホームシアター普及の鍵

―― ホームシアターでは売り手の方でも、ついつい富裕層に向けた提案になりがちですからね。

友則 お客様が自分には手が届かないものだとイメージしてしまうのは、われわれの責任です。ホームシアターが身近なものであることを十分訴求できていないので、大がかりで高価なものというイメージしか持たれていないということです。 私はホームシアターやAVシステムという言葉が大がかりな印象を与えてしまっているような気がしますが、これは商品が解決してくれるものでしょうか。

―― 地上デジタル放送の開始にあわせて、NHKがホームシアターを紹介しています。ようやくそういう流れになってきている時に、それを断ち切ってはいけません。要は使い分けを上手にやればいいということです。

友則 そこにカジュアルという言葉を加えることで気軽さを表に出せば、高価で大掛かりというイメージを崩すこともできますね。

―― 富裕層はプラズマの購入や、専用のホームシアタールームを持つことができます。しかし、プラズマや液晶大型画面テレビはまだ高いので、カジュアルスクリーンユーザーの中心となる団塊ジュニア層にはなかなか手が出ません。でもスクリーンとプロジェクターなら買えます。昨年開催されたA&Vフェスタの来場者のアンケートを見ると、彼らはホームシアターに大変大きな関心を持っています。この団塊ジュニア層をいかにして動かすかを、業界として考えなければいけません。

友則 私もそこだと思います。この層をいかにとっていくかです。その時に、6畳で20万円がポイントだと思います。そして、価格別のシステムを具体的に提示して、より身近な商品として理解してもらえるような見せ方が必要です。 欲しいけど夢物語の世界ではパイをとれません。ホームシアターを実際に導入された方は皆さん大変喜んでいただいています。見込み客はいくらでもいるように思います。それを攻めあぐねているだけです。もったいない話だと思います。

―― 御社ではオーディオに大変熱心に取り組まれていました。趣味嗜好品でグレードアップに繋がるホームシアターは、オーディオのような商品ですね。

友則 当社は昔からオーディオに強かったという歴史的な経緯があります。その強みをまだ十分活かしきれていないように思います。オーディオではいったんグレードの高い音を聴いてしまうと、それより低いグレードの音を聴けなくなってしまいます。ホームシアターでも同じです。ホームシアターを導入されたお客様で、もういらないというお客様はいらっしゃいません。むしろ、どんどん要求レベルが上がってグレードアップしていきます。 私自身も好きだからわかりますが、40インチの画面を初めて見るとすごいと思います。でもいったん50インチを見てしまうと40インチには戻れません。次のビジネスの種を創り続けていけるという意味で、ホームシアターは大変魅力的なビジネスです。だからもっと真剣に取り組むようにと、いつも社員に話しています。

本格的に普及させる条件が
揃ってきたホームシアター

―― 富裕層とカジュアル層以外に余裕層への取り組みも必要です。富裕層は大金持ちです。これに対して余裕層はそこまでのお金を持ってはいませんが、時間的にも金銭的にも余裕がある人たちです。

友則 子供が独立して部屋が空いたとか、教育費もかからなくなったことで生活にゆとりが出てきた方たちもこの層に含まれるということですね。

―― その時に先ほどのセグメントにあわせて価格別に見せるということが必要です。御社では以前から顧客管理をしっかりされてきたました。これが大きな力になりますね。

友則 当社ではお客様の詳細な購入情報をデータベース化していますので、お客様がどういう商品をお持ちか判っています。これを有効活用して、昨年販売活動を展開した結果、販売台数が上がってきました。今後はこのデータベースをさらに活用して、団塊ジュニアの層を中心に攻めていこうと思っています。 カジュアル層の市場を攻めるための商品もようやく揃ってきましたね。メーカーが本気になってプロジェクターに取り組み始めていますので、大変素晴らしい商品が出てきています。画質もずいぶん向上してきましたし、明るい場所でも結構良く映るようになってきました。ホームシアターを本格的に普及させていくための条件が揃ってきました。

―― 昔、私はディーラーズシステムコンポ(販売店推奨システム)を提唱しました。ホームシアターが今まさにその段階にあります。ディスプレイとオーディオの両方が強いメーカーは、極めて限られています。デオデオの推奨ホームシアターシステムを作ったらいいと思います。

友則 当社では以前DAC(ダイイチオリジナルオーディオコンポ)と銘打ってやっていましたが、ホームシアターは第二世代のディーラーズシスコンですね。映像機器のメーカーとオーディオメーカーのそれぞれが単品ではなく、システム提案の形でやらないとうまくいきません。 映画館の雰囲気ってすごくいいじゃないですか。2800円ほどのDVDソフトでそういう雰囲気を家で楽しめる。これは非常に価値が高いことだと思います。そこをもう少し考えなければいけません。われわれが売らなければいけないのは夢です。それを商品を売ろうとするから、うまくいかないのです。先日、映画館で『ラストサムライ』を見ましたが、若い人がたくさん見にきていました。彼らが飛びつくようなホームシアターを提案することが必要なんです。その時に一番大切なことは価格帯です。

―― ホームシアターシステムは、大画面を含め、トータルで20万円ほどあれば手に入れることができるようになってきました。アテネオリンピックでは、プラズマを含めてホームシアター製品が爆発的に売れることは間違いないでしょう。そこにどう仕掛けるかということです。

友則 まず、20万円のところをいかに売りまくるかですね。それがいずれ高価なシステムに発展していきます。 ワーナーマイカルにいくとポップコーンを売っています。若い人は「映画館のある家」に取り上げられているような豪華な部屋を作ることはできませんが、ポップコーンの販売機やポスターを並べたりして、映画館のような雰囲気で自分の部屋を飾りたがります。店頭でも「ホームシアターファイル」のカジュアルスクリーン特集のような提案をきちんとすることによって、お客様自身にイメージしてもらうことが大切です。

社長自らが推進者になって
カジュアルスクリーンに取組む

―― そのためには店頭でシステムの全体像を提示することが必要ですね。

友則 メーカーは単品で商品を訴求されていますが、システムでの訴求を業界全体でやっていかなければいけないと思います。デオデオでは今回本店のリニューアルにあわせて、ホームシアターをもっと身近に感じていただくために、例えば6畳の部屋ならこういうAVセットが組めますという具体的な提案を展開しています。

―― こんなことができたらいいなというお客様の思いを商品やカタログで具体的に見せてあげると、そのままくださいということになります。そういう仕掛けをせずにハードだけをいくら訴求してもなかなかうまくいきませんね。

友則 先日、友達のお嬢さんが結婚するということでデオデオの本店でブライダル用品を買っていただきましたが、そこにホームシアターのセットが入っていました。デオデオのブライダルは高くて130万円、平均で80万円くらいです。20万円ほどで揃えることができるホームシアターシステムは十分その中に入ります。結婚される時には新しく住まいを設計されます。今後はホームシアターをブライダル用品に含めることを、普通にしていかないといけません。

―― お客様のライフサイクルや事情に応じたライフスタイルを提案してあげることが大切ですね。

友則 「映画館のある家」の本に取り上げられている部屋の写真を見ているだけで、ホームシアターを欲しくなってきます。こういうものを店頭に置いて提案するようなことも含めて、もっと努力していかないといけないと思います。

―― 売り場でもラックや遮光カーテンなども含めたトータルでの提案が必要ですね。

友則 昨年OMCから買収した「暮らしのデザイン」という会社では、結構いいAVラックを取り扱っています。ホームシアターを単品ではなくシステム全体で見るとAVラックは重要ですが、なかなかいいものがありません。そこで、AVラックのいいものを開発して、デオデオ店頭での販売をするなど、ラックにももっと力を入れていこうと思っています。

―― これからが楽しみですね。

友則 当社にはいろいろな営業政策の柱がありますが、その中の一本にAVシステムのセット販売を入れています。 まだまだホームシアターに対する理解度は不十分です。当社では社長である私自身が最大の推進者になって、メーカーさんとも力をあわせてカジュアル層の掘り起こしに積極的に取り組んでいきます。

◆PROFILE◆

Kazutoshi Tomonori

1951年2月28日生まれ。74年3月東京理科大学理学部卒業。74年4月バローズ入社。77年7月富士ゼロックス入社。82年10月第一産業(現デオデオ)入社。89年5月旭電機商会 取締役、89年5月ナンバーワン 取締役、90年10月ダイイチ(現デオデオ)常務取締役営業統括本部長、91年5月デオニー 代表取締役社長、92年4月ダイイチ(現デオデオ)常務取締役販売部長、95年6月ダイイチ(現デオデオ)取締役副社長、00年6月ブロードバンドコム 取締役(現任)、02年3月エディオン 取締役(現任)、02年4月デオデオテクノネット 代表取締役社長(現任)、03年7月デオデオ代表取締役社長。現在に至る。趣味は映画鑑賞、ゴルフ。