巻頭言

三方良し

和田光征
WADA KOHSEI

9月の企業物価指数速報は原油価格の高騰などで1.8%上昇した。企業物価指数とは材料や中間財の価格変動を表すものである。素材産業や中間財産業ではこの価格上昇を必要に応じて価格に転嫁できるので、好況感が見られる。
実際には素原料の原油が高騰している訳だからマイナスの影響はまぬがれないが、商品に価格転嫁できるという点で消費財産業とは事情が違ってくる。
一方、最終財は9月は前年同月比で1.0%マイナスになっていて相変わらずデフレ現象は解消されていない。
消費財産業は価格転嫁できないから苦しい状況におかれてしまう。原材料、中間材の上昇、それを受けてつくった商品は安売りされてしまう。だから利が取れない。いずれ回り回って素材産業へ跳ね返り産業全体が疲弊してしまう。
今秋、各社から力作の新製品が投入されてきた。次代を決定付ける商品もいくつか提案されていて、AV業界の先導性、奥の深さに感嘆しきりである。
ビクターから発売されたハードディスクによるビデオカメラは、従来のようにテープ等を装着させる必要が無い。このことはいずれメモリーカード等の記録メディアを媒体としたビデオカメラでも、画質を含めさらに進化を遂げたものが当たり前になることの証査である。こうなれば2005年にはビデオカメラが完全に新しい時代を迎えるということでもある。
フロントサラウンド花盛りである。この年末商戦、いよいよホームシアターが盛り上がり、付加価値販売をしっかりやった販売店は利を生み出すことができるだろう。とりわけ、フロントサラウンドは商品が個性的で充実している。このことが本格的ホームシアターブームの火付け役になるはずだ。
ピュアオーディオへの回帰。団塊世代が動いている。この層は言うなれば余裕層であり、コンポ型ホームシアターへの関心も高い。一方で、ピュアオーディオへの回帰も起こしている。デノンはそうした背景から専門店の活性化を図りながらハイエンドモデルを投入し、ピュアオーディオマーケットへ力を込める。ホームシアター商品とピュアオーディオの活性化は急務であり、また、時宣を得ていて楽しみである。
デジタルオーディオプレーヤー。PCメーカーアップルが火をつけたiPod。それに続けとばかりに各社から一斉にこの分野への商品が投入されていて活況を呈している。まさにネット時代、デジタル時代のひとつの極みとして期待大である。音楽をハードディスクに取り込み、楽しむ。この商品群はポータブルオーディオを完全に新しい時代へ強力にサポートするものであり、関連商品を含めて急成長することは間違いない。
まだまだ話題は尽きないが、要はこれら次代を担う素晴しい商品群があっと言う間に安売りされてしまうことである。
利がとれるのに利を棄てる。もちろん、値ごろ感ということはあるが、価格転嫁が難しいメーカーを疲弊させてはならない。
“三方良し”の理念で年末商戦を勝利したいものである。

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