トップインタビュー

三洋電機(株)
執行役員
コンシューマ企業グループ
AVソリューションズカンパニー
社長

岩佐芳郎 氏
Yoshio Iwasa

 

コンシューマの生活を
変えていくことができる
付加価値の高い商品を提案



新しい商品価値を提案し、常に市場を創造してきた三洋電機。この年末も定評あるプロジェクターではLP−Z3がさらに進化を遂げて登場。薄型テレビCAPUJOシリーズでは、放送のデジタル化に伴い、新しいテレビのある生活を提案するなど注目を集めている。コンシューマ企業グループAVソリューションズカンパニーの社長として同社のAV事業を指揮する岩佐氏に年末商戦と今後の戦略を聞いた。

インタビュアー ● 音元出版社長 和田光征

フロントプロジェクターに加え
リアプロジェクションテレビで
ホームシアター市場を拡大

エリアごとのマーケティングと
グローバルな開発拠点を確立

―― 現在のマーケットをどのように見ていらっしゃいますか。

岩佐 変化のスパンが非常に短い中、大きな流れとしてはデジタル化、ビジュアルではフラット化のという2つの大きな潮流があります。大切なことはデジタル化で生活がどう変化していくかということです。
昨年の4月1日に経営組織を変え、AVソリューションズカンパニーが発足しました。さらにハイスピードで走りながら効率の高い展開を進めています。コンシューマの生活を変えていくという大きな目的がありますから、変化をいち早く掴んで適切なマーケティングを地域ごとに行っていかなければなりません。グローバルに見てそれぞれ異なるのはもちろん、ひとつの国の中でも大きな変化を遂げている地域もありますから、細かくマーケティングを行っていくことが大切です。また、マーケットを育てていくという気運も日々確立してきています。

―― 生産拠点として中国でも積極展開されていますが、近況はいかがですか。

岩佐 生産拠点として中国にテレビ、DVD、オーディオ関連の工場があります。中国向けモデルの開発はもちろん、日本とリアルタイムにグローバルな開発を行っていく拠点としても機能しつつあります。例えば液晶テレビも日本向け、中国向け、その他とこれまでと異なった新しいラインを設置して良いものを開発し、生産していく体制が整っています。開発とものづくりと、スピードをさらに加速してそれぞれのニーズに応えられる強い商品づくりを行える体制を確立してきました。

テレビの新しい時代を
カタチにしたCAPUJO

―― 年末商戦に投入される商品は非常に提案性がありますね。

岩佐 今回、テレビではCAPUJO(カプージョ)シリーズを発売します。液晶は17、23V型、プラズマは42V型をラインナップしています。
液晶テレビでは国内で出遅れているという認識がありました。そこで他社にない新しい提案をしたいということからはじまりました。ひとつは地上デジタル対応ということです。フラット、大型、デジタルというのが国内のテレビ市場の大きな柱ですが、17、23V型で地上デジタルチューナーを内蔵し、中小型サイズでも思い切った提案を行いました。20V型以下で地上デジタルチューナーを搭載した液晶テレビは業界初です。
さらに考え方を変え、テレビの顔であるデザインでは著名なデザイナーのグエナエル・ニコラ氏を起用しました。デジタル化、フラット化という大きな波が押し寄せていますが、現状のテレビは従来のテレビとなんら変わりはありません。これから地上デジタル放送、双方向サービスなど、放送サービスが増え、徐々にライフスタイルが変わってきます。テレビに向かう時間が今まで以上に重要になってきます。それを踏まえ、いちはやくカタチで表現しました。
情報を受けるだけではなく、テレビともっと親しく付き合いたい、ひとをやさしく包み込むデザインです。せっかくデジタルテレビに買い替えるなら、フラットテレビをお求めのお客様が多いと思います。その際に、他にはない良いカタチを提案することも購入の動機になりますので、期待が高まります。
何か今まで業界慣れしてしまっていたと言いますか、今売れているカタチ、トレンドのカタチを思い込んでしまっていたのかもしれません。印象に残る、新しいテレビ時代への繋がりをカタチにできたかと思います。
お客様との架け橋となる流通様からの反応もよく、注目いただけていると感じます。お客様へスピードをもって積極的にアピールしていただけると思います。

―― エンジンも進化していますね。

岩佐 プラズマ、液晶、それぞれのパネルの良さを怎買Bゾンエンジン揩ナさらに高画質化を追求しました。また、今回のCAPUJOシリーズでは前面にデジカメ端子を設けることにより、デジカメで撮影した画像をダイレクトに手軽に楽しめるといった機能を持たせることで、新しいテレビとしての楽しみ方も提案しています。
カタチだけではなく、段階的に放送が変化していきますから、今後、中身もインターフェースもさらに追及していける可能性を秘めています。

さらに進化を遂げたLPーZ3で
ホームシアター市場を拡大

―― プロジェクターではLP―Z3が登場します。

岩佐 ホームシアターでは、お求めやすい価格でもっと裾野を広げていくという方向と、より本格志向を追求していくという2つの方向性があります。日本でもプロジェクター市場はかなり拡大してきていますが、LP―Z3はさらに本物志向を訴求した商品です。一方、裾野を広げるということからはエントリーユーザーにも最適なLP―Z1Xをラインナップしています。

―― LP―Z3はさらに進化を遂げました。

岩佐 映像信号処理、アイリス開閉、ランプ光量をトータルに制御し、あらゆる映像の高品位投映を実現するトータル映像ソリューション怎gパーズリアル揩搭載しました。その他にも静音化を徹底的に追求しています。また、本体の色も従来のシルバーに加えブラックを用意しました。
技術者がLP―Z2でやり残したところをさらに進化させ、コンセプトである本物を追求しました。加えて流通様との対話も非常に重要です。ご販売いただいている流通様、そこに来られるお客様の志向を追及したものでもありますので、さらに自信を持ってLP―Z3を広めていきたいと思います。
ヨーロッパ、アメリカなどグローバル市場でも期待が高い商品です。最初に欧州向けに出荷をいたしましたが、かなりいい感触を持っています。もちろん日本発の商品ですから、日本市場でもLP―Z1から続く期待通りの手ごたえを感じています。

―― フロントサラウンド、リアワイヤレスなど、新しいサウンドシステムの提案もあり、ホームシアター市場は拡大していくでしょうね。

岩佐 日本のホームシアター市場は、これから変わっていくと思います。業界として、様々な提案をお客様に差し上げられることは素晴しいことです。各社から新しいサウンドシステムの提案が出てきていますので、ぜひ流通様におかれましては、LP―Z3とそれらをうまく組み合わせてお客様にご提案いただければと思います。
様々な価値をご提案させる流通様、他店と違う売り方を目指す流通様もあるでしょう。それぞれの商品の特長を活かし、組み合わせていただくことで、付加価値販売に繋がると思います。ただ展示していただくのではなく、流通様と一緒にホームシアター市場の拡大を実現していきたいですね。
もちろん、音も映像も全て当社の商品で揃えていただければいいのですが、この点についてはもう少しお待ちいただきたいと思います。
音と映像の融合ということでは、中国のテレビとオーディオの会社は異なりますが、開発拠点を一箇所に集めます。中国におけるビジュアル商品に合うAV商品の融合はどういったものか、現地で売り方も含めディスカッションをはじめています。中国のAV商品の開発拠点でもありますし、日本とリアルタイムで開発を共有する、グローバルな開発拠点でもありますから、2005年頃には中国に続き、日本そしてグローバルでの今後のAV商品の展開にご期待ください。

プロジェクションテレビを投入
グローバル市場での拡大に期待

―― プロジェクターを含めた大画面に注目が集まる中、12月には日本市場へ55V型のプロジェクションテレビを投入されます。

岩佐 フロントプロジェクターからの資産をたくさん持っています。そのノウハウを生かした光学エンジンの搭載など、当社が長年培った技術が数多く投入されています。液晶プロジェクターの延長線上にプロジェクションテレビの開発があります。まずは今年の5月初旬に日本市場に先駆け、中国市場に投入いたし、かなりの反響がありました。
ただ、ホームシアターにはいろいろなスタイルがあります。本格的なホームシアターとして液晶プロジェクターのZシリーズ、そしてもうひとつのホームシアターのディスプレイとしてリアプロジェクションテレビを訴求していきます。
LP―Z3では部屋を暗くしていただき、映画館に近い状況でご覧いただくことを訴求していますが、部屋を暗くせずに、大画面で映画などを楽しみたいというお客様もいらっしゃいます。その中で、普段ご覧になるニュースや情報は、大画面ではなくてもいいと位置付けるお客様もいらっしゃいます。ですから贅沢なセカンドテレビと言いましょうか、ホームシアターマーケットに向けて、訴求していきたいと思います。
ホームシアターとして本物を追求した大画面となると、50V型以上のプラズマテレビや大型の液晶テレビは非常に高価です。よりお求め安い価格のプロジェクションテレビ、フロントプロジェクターでホームシアターのユーザー裾野を広げていきます。
北米でもプロAV的なところを目指して来年から発売していこうと動いています。また、先日ドイツで開催された「フォトキナ」に展示した際にも評価が高く、ドイツではZシリーズも好調なものですから、このルートでの販売の検討もしています。
さらに中国ではコンベンションセンターやホテルのロビーなどにおける需要がこれから増えてきます。東南アジアでもコンベンションなどで並べた際も引き合いがありましたので、まだまだ今後のグローバル市場において、可能性が十分ある商品です。コンシューマに加え、業務用ディスプレイとしても強化していきます。

ひとつひとつの商品を大切に
付加価値の高い提案を行う

―― 非常に楽しみですね。また、一方、デジタルオーディオプレーヤーがブームになっています。さらに盛り上がることが予想されますが。

岩佐 三洋電機ではMP3フォーマットによる録音方式を採用した、デジタルボイスレコーダーが市場で高い評価をいただいています。
当社の特長であるUSBダイレクトを採用してから、用途がとても広がりました。お客様はいろいろな使い方をされます。もちろんMP3方式なら、音楽も楽しむことができます。様々なラインナップがあって楽しい商品ですし、日本のマーケットではどういった開発をしていけばいいのか、明確に理解してきています。オーディオと言っても三洋電機の特長を活かした切り口から、新しい市場が開けると思います。
これまで培った強みを活かし、新しいものづくりと用途提案を行っていきたいと思います。

―― 先日、HD DVD プロモーショングループを設立されました。また、CEATECではプレーヤーを参考出品され、注目を集めていましたね。

岩佐 現行のDVDと同じディスク構造を採用し、現行のDVDと互換性があるということがお客様にとって重要だと思います。今のDVDのビジネスをどう次に繋げていくか、商品の事業として表明しました。特に北米ではハリウッドのコンテンツなど、DVDの再生を楽しむ文化が出来上がっています。これから北米でも大画面、高精細なディスプレイに置き換わっていきますので、より高精細なコンテンツへの流れはスムーズにいくのではないでしょうか。
来年の商品化に向けて、頑張っていかなければなりません。録画ということではHDDが認知されています、当社としてもこれらとの複合的なものを含め、ぜひ提案していきたいと思います。

―― 最後にメッセージをお願いします。

岩佐 放送サービスの変化に伴い、コンシューマの生活が変わります。流通様とコミュニケーションをしっかりとって一緒に提案していきたいですね。この年末は新しい商品、薄型テレビCAPUJOをはじめ、プロジェクターZシリーズ、リアプロジェクションテレビを投入します。使い方、使用シーンを提案できる自信作です。スピードをもって、流通様と一緒に新しいコンセプトをお客様に伝えていきたいと思います。
そして、上手く伝われば期待通りに売上げも上がりますし、お客様にも必ずご満足いただけるものと確信しておりますので、ぜひ一緒に年末商戦、ひとつひとつの商品を大切に、付加価値の高い提案を行っていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

◆PROFILE◆

Yoshio Iwasa

1971年4月三洋電機鞄社。音響製造事業部ビデオ工場技術課配属。97年4月CEメディア事業本部記録メディア事業部 副事業部長。99年4月マルチメディアカンパニー経営企画室長。00年7月三洋テクノサウンド椛纒\取締役社長。02年4月三洋電機潟}ルチメディアカンパニー販売事業部事業部長兼三洋テクノサウンド且ミ長。03年4月三洋電機且キ行役員コンシューマ企業グループAVソリューションズカンパニー社長。現在に至る。