巻頭言

ITとメディア

和田光征
WADA KOHSEI

ライブドア対フジテレビの攻防、時間の流れの一部分を切り取った感じで見てみるとなかなか面白い。私はニッポン放送の亀渕社長がコメントを出す度にフジテレビ側にとってマイナスになっているような気がしてならない。どうみても日枝会長の精神的指導下の印象しか伝わってこないのです。同時にニッポン放送の社員一同が「ライブドア反対」の声明文を出すに至っては、何を考えているのか労働組合がなく公式的重さもない、やらせの世界と受け取られかねないでしょうから、全く意味がない筈です。つまり、法的には通用しないと言って良い。(その後、反ライブドア労組を結成)
新株発行予約権についても同様でしょう。フジテレビに割り当てるという、その使途についてもあわてて創り出したもので裁判所の判断は当然の帰結といえるでしょう。また、フジテレビのTOBにしてもこれからTOBに参加した企業に対して一般株主から株主代表訴訟が起こされるかもしれません。
ニッポン放送はポニーキャニオン株をフジテレビに売却すると発表しました。また亀渕氏の登場です。ライブドアは重要資産の売却をしないよう文書で要請、取締役会に送付済みで、ニッポン放送がその後に打ち出した焦土作戦の一環のように思います。ライブドアに本質をついた先手を打たれ、次々に株主利益を損なうような手を打ってくる日枝・亀渕ラインの対応は何なんでしょうか。今度はポニーキャニオン株のフジテレビを引き受け先とする第三者割当増資の検討が伝えられています。まさにフジサンケイグループのクラウン・ジュエル手法です。
村上ファンドが動いた時、もっと大きな攻勢があるという対応はできなかったのか、企業防衛策を怠っていた結果が今回の買収劇を招いたのであり、この蟻の一穴の油断が買収劇を激化、肥大化させているのです。
対ライブドアということから見て、守旧的フジサンケイグループの現体制は、著しく不利であるように思われます。特に、株主の利益はどうなっているんだろうかと思います。55年体制的規制に守られている放送業界がこのままの体制でいく筈がありません。
森喜朗氏は今回の件で国民のための電波の重さとして… と反応して言っていましたが、ならばなぜ数局にしか割当てないのか。昨今の青少年の犯罪等フジテレビの日枝氏が仕掛けた電波のムダ使い路線の蔓延化や殺人ゲームが引き起こしているのではないか、既得権を得ている55年体制の放送局こそ変革されるべきだと思ってしまいます。今回のことは永々と続く時間軸のほんの一片の胎動としか私には思えないのです。日枝・亀渕ラインの対応を見ていると既得権に守られている人間や組織の有様、甘えの構造を垣間見る思いがして、少々疲れてきます。
さて、ライブドアです。時間軸で言えば未来へ確実に連なっています。時間外取引云々にしても、道義的問題はあるかもしれませんが、法的には何ら問題はない。私はライブドアの登場によってフジテレビ、ニッポン放送はインターネットをも加え、他局にはないビジネススタイルを構築し、急成長するのではないかと思います。当然、企業価値、市場価値も格段に上昇すると確信します。
いずれにしても、ITとメディアの統合は避けては通れない事実なのです。

ENGLISH