金賞インタビュー

清水久司氏

エプソン販売
常務取締役
コンシューマ事業部長

清水久司
Hisashi Shimizu

プロジェクターの性能と
使いやすさに磨きをかけ
大画面の楽しさを拡げる

プロジェクター市場を大きく育ててきたエプソン。ドリーミオを市場に投入し、3年目となる2005年、EMP-TW20が金賞を受賞した。日本の住環境にふさわしい明るさ、置きやすさ、美しさを追求。DVDの映像を忠実に再現し、エントリーモデルながら画質面からの高い評価も得た。日本のホームシアター文化の創造に果敢に挑み続ける、同社常務取締役の清水久司氏に話を聞いた。


エプソンが中心となって一般の家庭に
プロジェクターを入り込ませていく


これまでの経験とお客様の
声を反映させた自信作

―― EMP-TW20が金賞を受賞されました。おめでとうございます。

清水久司氏清水 ありがとうございます。これを機会に初心に戻ってもう一度、プロジェクター市場の拡大に取り組んでまいります。

―― まずは商品のコンセプトをお聞かせください。

清水 今回の新製品のEMP-TW20は、入門機としての位置付けになります。プロジェクター市場の裾野をもっと拡げていくために、DVDを一般家庭の6畳間で、最大120型の大画面で楽しんでいただけるというコンセプトを重要視し、細部にわたって磨きをかけました。
カタログや店頭で「日本のDVD鑑賞基準」「日本の家庭にベストマッチ」というキャッチフレーズのもとにご紹介させていただきます。今回の商品づくりでは一般家庭のリビングダイニングのような10畳から12畳の部屋、あるいは4畳半から8畳間で実際に使用していただくという環境を想定して、つくり込んでいきました。例えば、夜はキッチンからリビングに光がこぼれてきますし、昼間はカーテンを閉めただけでは薄明かりの状態というのが一般的にイメージいただける家庭の環境ではないでしょうか。ドリーミオを市場に投入して3年目、入門機としても3機種目になりますが、これまでの経験、お客様の声を活かしたまさに自信作です。


日本の住環境にふさわしい
DVD鑑賞基準モデル

―― プロジェクターの裾野層を拡げるという大きな役割を担うに相応しい、商品の特長についてお聞かせください。

清水 EMP-TW20では入門機であってもやはり高画質でお楽しみいただきたいと思います。そして家庭でご覧いただくのは主にDVDですから、DVDの解像度をリアルに再現する、480pにこだわったことが大きなポイントです。「DVD鑑賞基準」というキャッチフレーズを謳った理由はそこにあります。
DVD鑑賞に最適な480pの高精細ポリシリコンワイド液晶パネルを採用しました。また、新開発のエプソンシネマフィルタと小型化および省エネを実現した独自の高効率ランプを搭載しています。1200ルーメンの高輝度を従来機から継承しながら、さらに色域を拡張し、正確な色再現による高画質も実現したことです。肌の色などがとても自然に再現されているとの評価もいただいています。
また、入門機ですから、AV機器にあまり詳しくない方も含め幅広いお客様にアピールしていく商品となります。使い勝手の良さはとても大切なポイントとなります。従来機よりお客様からご要望として寄せられていましたが、本機には上下2画面分、左右1・5画面分のレンズシフト機能を搭載しました。超短焦点の高倍率1・5倍ズームレンズとともに設置性を大幅に向上させました。様々な環境で大画面をお楽しみいただけます。
さらに視聴環境に応じて最適な色調と明るさをワンタッチで選択いただけるカラーモード数を増加しました。全部で6種類のプリセットモードを搭載しました。特にリビングなど明るい環境でも高画質を実現するリビングモードを見ていただきたいのと同時に、遮光された環境での2つのシアターブラックモードもぜひ見ていただきたいと思います。

―― プロジェクター販売については特に店頭展開が大きな鍵を握ると思います。入門機という位置付けから、量販店での一層の取り組みも期待されますが、販売戦略についてお聞かせください。

清水 日本の一般家庭で気楽にご使用いただくということがキーワードになっていますから、いかにしてユーザーの裾野を拡げていくか、につきると思います。20から30代の方、あるいは40から50代の方とお客様の層は広いですから、店頭での体験コーナーを充実させ、もっと知らしめていきたいですね。これが大きなポイントです。
ぜひ、明るい環境でも高画質で見られるということを体験して欲しいですし、あるいは暗室でも最高級機とまではいきませんが、ご満足いただける、ということをご納得いただきたいと思います。じっくりとご体験していただくことが重要です。
また、ドリーミオEMP-TW20発売記念キャンペーンを展開します。大変な盛り上がりをみせている「2006FIFAワールドカップドイツ」のアジア地区最終予選日本対イラン戦にドリーミオをご購入いただいた方の中から抽選で40組80名様をご招待いたします。
スポーツは大画面でご覧いただくと迫力が違いますから。2006年のワールドカップに向けて、大画面がもっと一般的になるでしょうね。春商戦からは、サッカーワールドカップ予選などに向け、プロジェクターの大画面でスポーツを楽しむ方も増え、需要が高まっていると感じました。みんなで一緒に応援するそういう文化ができつつあります。プロジェクターがその役割を担うことができますから。市場に追い風が吹いています。


2極化する市場、将来は
10万円を切る商品も視野に

―― 地上デジタル放送の普及などを背景に大画面化の流れがより強くなっていますが、今後のマーケットをどのようにみていらっしゃいますか。

清水 薄型ディスプレイが1インチ1万円を切っていますが、まだまだ高額商品です。今回のEMP-TW20はオープン価格ですが、市場での実売価格は13万円台後半になると想定しています。この価格で120型の大画面をお楽しみいただけるわけですから、お金に余裕のある年輩層だけではなく、若い方にも大画面という魅力溢れる市場を確実に拡げていきたいと思います。
そのためにも、ホームプロジェクターの市場性をきちんと捉える必要がありますが、それは大きく2つに棲み分けされていくとみています。ひとつは映画館のような専用ルームを備えてお楽しみになる方です。家を新築される方、リフォームされる方がいらっしゃいます。
そして、もうひとつは当社ではまだまだ実現できていませんが、将来的にはスクリーンも含めて10万円を切る低価格で大画面を楽しむ方です。若い方、独身の方でワンルームマンションや1LDKにお住まいの層も取り込みたいと思います。パソコンでテレビを見る方が増えています。そんな方がちょっと大画面で楽しみたいという時に、大きなテレビではなくプロジェクターをご使用いただくといった生活シーンがこれからは決して珍しいことではなくなるのではないかとみています。
そのためには企業努力が必要です。できるだけ早い段階で、10万円を切るようなお求めやすさと画質を兼ね備えた良い製品を提供していきたいと思います。さらにはサウンドシステムまで含めるといった提案も必要かもしれません。このような市場を創造していきたいと思います。

―― 御社ではそのような2極化する市場に向けてラインナップを展開されていることも強みですね。

清水 幅広い層がプロジェクターに関心を寄せていただいていると実感しています。例えば、来年度の新入社員の採用試験を行っていますが、プリンターのカラリオのイメージが大きい中、ドリーミオの話をする学生もいます。若い層が関心を示してくれていることはとても嬉しいことです。
また、東京ではワンルームマンション、1LDKといった物件も多くなっています。女性のライフスタイルも多様化していますし、ご年配の方で郊外に家は持ちながら、ご夫婦でマンションにお住まいになる方も増えています。薄型テレビとはいえ50型位の大画面ではそう広くはないマンションなどでは置くのを躊躇されますが、でも大画面で楽しみたいという需要も増えてきます。そのような層からも高い関心を集めています。先に申しましたようにテレビとパソコンの融合もひとつのチャンスと捉えています。
さらに団塊の世代を中心にして子供が独立して部屋が空いてしまったところにシアタールームをつくりたいというご要望もあります。EMP-TW20よりはグレードの高いもの、ハイビジョン対応のプロジェクターへの需要もありますので、画質にこだわる層へアピールする上位機のEMP-TW500、720pのハイビジョン高画質を楽しめるEMP-TW200H、そしてエントリー層を拡大する480pの新モデルEMP-TW20と幅広くラインナップし、ご提案していきます。この2極化していく市場をバランスよく伸ばしていくことによって、市場を大きく拡大していけると考えています。


イメージを湧き立たせる
店頭での体験が重要

清水久司氏―― 店頭での具体的な展開に向けての意気込みをお聞かせください。

清水 6畳間で最大120型の高画質大画面がお楽しみいただけること、明るい環境でも十分お楽しみいただけるということを、この夏商戦でしっかりPRしていきます。大画面ディスプレイ市場に追い風が吹いていますが、やはり実際に体感していただくことが大切です。販売店様も積極的にプロジェクターの展示に取り組んでいただいていますし、大きな店舗が増えていますし、より見せやすい環境が整えられると思います。
もちろん、引き続き、お客様に売り場へ足を運んでいただく仕掛け作りもしていきたいですね。プロジェクター選びのポイントをまとめた小冊子など、これまで大きな効果を発揮してきました。
プロジェクター=(イコール)大画面といっても、ご自身で魅力を実感していただくことがお客様の心を動かします。そこで具体的な形で示すことが必要です。マンションのリビングルームにプロジェクターとスクリーンを設置したイメージなど、こんなふうに楽しめますよ、ということをどんどん示していきたいですね。新たに用意する「日本の家庭にベストマッチ」というPOPなどをはじめ、よりイメージが湧きやすいように工夫していきます。

―― 流通からの反応はいかがですか。

清水 販売店様からの反応は、非常に高いです。昨年はオリンピックで盛り上がりましたが、かなりの注文が入っており、注文だけでも昨年を上回る状況で、非常に期待が高まります。
また、最近ではスクリーンメーカー様も頑張っていらっしゃいます。それぞれの販売店様とスクリーンとのセット提案なども考えていきたいですね。入門機をお求めになる方には基本的にスクリーンも必要ですから、セットで提案したいと思います。

エプソンがリードして
プロジェクター市場を拡大

―― プロジェクター市場の拡大に積極的に取り組まれる御社の展開にますます期待が高まりますね。

清水 ぜひ当社がリードしてプロジェクター市場を拡大していきたいと思います。今回、ビジュアルグランプリの金賞をいただいたことはとても大きな励みになります。480pというエントリーモデルながら、高画質で楽しめるということを特に評価していただいたくことができ、家庭で映画をはじめとするさまざまなコンテンツを大画面で楽しむという文化の創造に加速がかかります。
当社では家庭にプリンターという文化を持ち込んできましたが、今度はプロジェクターという新しい楽しみを持ち込んでいきたいと思います。

―― ハイビジョンの時代と言われていますが、まだまだ一般の人にとって、DVDがひとつの基準です。今の時期に480pであれだけの画質をつくられたのは大変なご功績だと思います。

清水 いかに裾野を拡げるか。一般の人が使う世界にプロジェクターをどんどん入り込ませていきたいです。そのためにはどういう商品が受け入れられるのか、今後も市場を拡大する商品を提案していきます。現状では10万台程度とされていますが、まだまだです。やはり、ゆくゆくは全世帯数の2割から3割にプロジェクターが入るという状況にしたいですね。

―― 最後にメッセージをお願いします。

清水 販売店様と一緒になってプロジェクター市場を拡大し、新しいユーザー層を捉えていきたいと思います。勉強会や売り場づくりも含めて強力な支援体制で引き続き展開してまいりますので、ぜひ販売店様のご協力をお願い申し上げます。