トップインタビュー パイオニアマーケティング 校條 亮治氏
きめ細かなマーケティングで 2005年7月1日、パイオニアは子会社としてパイオニアマーケティング株式会社を設立した。販売会社内にマーケティング部門を据えたことが大きな特徴のひとつ。AV専業メーカーとして、「憧れのブランド」としてのポジショニングを確立するパイオニアがどのように強みを発揮し、挑むのか。新会社の代表取締役に就任した改革仕掛人、校條亮治氏に経営方針を聞いた。
―― パイオニアマーケティング株式会社が設立されました。新会社の経営方針についてお聞かせください。 校條 当社はホームエンタテインメントビジネスカンパニー、AVビジネスカンパニー国内営業部とインダストリアルソリューションズ&エンタテインメントカンパニーの業務用PDP国内販売部門を統合し、販売会社として設立されました。当然ながら販売会社として独立した事業会社にしたいという思いがありますのでそれを目指していきたいと思いますが、単に商品を仕入れて売るという機能だけではありません。 ―― マーケティングまで販売会社に含めるというのは特徴的ですね。 校條 お客様の要求が多岐に渡る中でいかに私どもの思いを、商品に表現をしてお届けするか、その前段である商品のアウトデザインまで担います。当然、商品は技術開発、設計からものづくりをしなければなりませんので、後段のところはパイオニアの事業部門の中で担います。この2つの相乗効果で市場のスピードに乗るというのが狙いです。パイオニアはAVの専業メーカーです。販売会社が生きていくのは難しいかもしれませんが、私どもの持てる力をどれだけ活かすのか、マーケティング部隊を持つことが一番大きな肝であります。 ―― 商品は命ですからね。 校條 商品というのは工場でつくっただけでは商品にはなりません。製品で終わってしまいます。商品にしないと意味がありません。お客様の要求としっかりフィットしていれば当然、売り切れます。要求されるものをいかにしっかりとつくり上げるかということです。こういう仕組みにしていきたいと思います。
―― 商品の具体的なマーケティングについて、まずは映像部門からお聞かせください。 校條 映像ではテレビジョンの世界に入ろうとしていたわけではないのです。クオリティーの高い映像を音と共に表現してお客様へ感動を提供していきたい、という高い理念の元に他社ができなかった、レーザーディスクというものを開発したわけです。それを開発して映すためにどうしても映像機器が必要でした。テレビのように受動的に見るための機器ではなくて、お客様が主体的に見たいというものをつくらなければ専業メーカーという立場がありません、そこに私どもが映像に飛び込んだミッションがあります。ただ、市場で埋没してしまい、本来の専業としてのポジショニングが確立できていなかったというところが昨年の反省点です。
校條 パイオニアはオーディオの専業メーカーとして培ってきたブランドです。映像と音を対比した場合、6対4、6が音というのが、私どもの戦略ではないかと思います。「sound.vision.soul」というブランドスローガンを打ち出しているのも、私どもの生き様はまずサウンドにあるということです。パイオニアのブランドが映像の中に埋没してきたのではないかというご指摘もいただいていますので、会社としてもう一度、音に磨きをかけ、再度オーディオを強化したいという方針を、今回明確に打ち出しています。このようにパイオニアは2つの商品戦略の中で、ブランドを構築していきたいと思います。
―― 価格低下など、流通の問題は大きいですね。 校條 日本の大きな課題だと認識しています。流通様自体も非常に悩まれていると思います。今回、挨拶回りをさせていただいていますが、流通様サイドからも実はパイオニアというメーカーに対する要求があります。パイオニアのオリジナリティーは何なのか、もっと明確にしていただきたいというご意見もあります。私どもとしては例えばクオリティーの高い映像、クオリティーの高い音、クオリティーの高い使用価値であったり、それを最終的にいかにうまくお客様に伝達できるかにかかっています。メーカーだけではなく、流通様も担うべき役割が各々にあると思います。いわゆる量販店様、地域店様、専門店様と役割が違うと思います。それに対してメーカーがワンパターン、ワンモデルではなく、どうフォーカスするかにかかっていると思います。そんなところも追いかけていきたいと思います。 ―― 支店制を持つ理由はどういったところからでしょうか。 校條 もう一度、エリアというものを徹底的にフォーカスしたいというのが狙いです。チャネル別のマーケティングではなく、お客様は少なくともエリアで捉えたときに様々な違いがあります。しかし単に地域性を捉えるのではありません、マーケティングのきめ細かさ、そういうものが要求されてきています。流通市場のそれぞれのご要求に対してメーカーとしての責任を果たしていきたいと思います。チャネルごとにそれぞれ色合いの違うご要求があります。効率だけでは責任放棄になります。本来の責任を早く果たしていきたいですね。選択と集中で事業構造を模索しながらここまできました。いよいよ私どもがお応えできる時がきます。一番は何といっても商品開発になります。メーカー、流通様ともにスピードが大きな鍵になることは間違いありません。 ―― まだまだ薄型テレビも緒についたばかりです。プラズマと液晶とがあります。パイオニアは大画面の世界で大きな強みがありますね。 校條 40V型以上の大画面で、VGA、XGA、SXGAと棲み分けをしてきましたが、次のステップとしてはフルハイビジョンを展開しようとしています。液晶は液晶の良さ、プラズマはプラズマの良さがありますので、そこで切磋琢磨して技術開発をしていきたいと思います。大画面、高画質という視点で捉えた時に、しかも家庭でご覧になる場合には現時点で私どもとしてはプラズマに利があると訴えています。省エネということでも私どものプラズマは業界最高水準の低消費電力です。家庭で見る時に、極めてピュアでナチュラルな映像をご提案できます。単なるテレビジョンではなく、ご理解いただけると思います。一般のお客様、グレードの高いお客様に量産品としてきちんとご提供していきます。こだわりの映像、画像で打ち出していきたいですね。 ―― 最後にメッセージをお願いします。 校條 販売会社として、マーケティングを強化していきたいと思いますので、遅ればせながら皆様のご期待に沿えるものと思います。秋口からの商材についても、パイオニアというブランドを再度認識いただけるような展開になると思います。流通様にも非常に強いご期待をいただいています。お客様に価値をどれだけ一緒になって伝えていただくか、そのことがお客様に本来の満足をご提供することになります。価格だけに特化されては、私どものご提供する価値とは異なってしまいます。ぜひご理解いただき、パートナーシップを築いていきたいと思います。 ◆PROFILE◆ Ryoji
Menjo |