トップインタビュー 潟fィーアンドエムホールディングス 淺野恭文氏 プレミアムオーディオを プレミアムオーディオを軸足に、デノン、マランツ、リオ、マッキントッシュ、ボストン・アコースティックなど数々のブランドを傘下におさめるD&Mホールディングス。シナジー効果を活かし、足腰もさらに強靭に鍛え上げ、付加価値市場での存在感を放ち続ける。セールス&マーケティングジャパンの淺野恭文プレジデントに、同社の事業戦略を聞いた。
―― 4月1日からセールスアンドマーケティングジャパンのプレジデントに就任されました。今後のD&Mの展開につきまして、そのビジョンからお聞かせください。 淺野 プレミアムオーディオを中心に、今後いろいろな形で事業領域をさらに広げていきます。D&Mホールディングス傘下には様々なブランドがあり、いろいろな商品が発売されています。それらに関連した、或いはシナジー効果を高めることができる関連会社やテクノロジーについては、買収やM&Aもさらに積極的に行っていく方針です。オーディオやAVに限らず、D&Mの総合的な価値を高めていきたいと考えています。 ―― 福島県の白河でデノンとマランツの製品は作られています。中国の工場も稼動してきているとのことですが、製造現場と販売現場との関係についてはどのようにお考えですか。 淺野 白河ワークスはマザー工場として位置付けられるもので、開発から生産までの一体完結型の工場となります。これに中国をはじめ、国内、海外に協力工場がありますが、それぞれの位置付けについてもしっかり考え、きちんと棲み分けを行っていきます。 ―― バックではシナジー効果をうまく出しながら、フロントではより独自性を強く打ち出していこうということですね。 淺野 その通りです。モノづくりやマーケティング以外の部分での、各国における販売管理やサプライチェーンなど、バックオフィスで一緒にやれることは効率的に行っていく。その一方で、お客様に見える表に現れる部分、商品の中身や思想の違いは明確に出して違いを訴えていこうということです。 ―― PDPや液晶、DVDレコーダーなど他社では垂直統合の効果を出しています。D&Mでは逆に横に広げながら、なおかつ統合効果を出していこうということですね。 淺野 これがベストだという経営方針はありません。時代やトレンド、自分達の成長過程において、縦型統合もあれば横型統合もあります。世の中は複雑ですから、さらにそれがアコーディオン式に伸びたり縮んだりすることもあれば、斜めに進んでいくこともあるでしょう。ただ、どのような形態や組織、戦略においても忘れてはならないのは、われわれメーカーのモノづくりを、お客様は大変シビアに見ているということです。 ―― 先ごろ発表した「ビジュアルグランプリ2005 SUMMER」においても、デノン、マランツはじめD&Mグループの製品が各部門で受賞しています。これだけモノづくりに徹した商品があるということは、D&Mの大きな強みと言えますね。 淺野 こうした賞をいただけるというのは本当にありがたいことだと思います。言わば、われわれがこれまで取り組んできたことに対し、賞という、きちんとした裏付けを得られたということになりますからね。
―― 放送のデジタル化という後押しもあり、薄型大画面テレビが家庭の中にどんどん入りこんでいます。それにあわせて需要の拡大が期待されるのがホームシアターだと思いますが、もうひとつ伸び悩んでいます。リアスピーカー周りの問題の解決など、これ以上の普及を図るには、まだまだ課題が残されているように思います。 淺野 より良いものを追求していくというのが我々の商品づくりにおける基本姿勢ですが、一方ではまた、例えばデノンのシアターパッケージのDHTシリーズやDVDミニコンには、ドルビーバーチャルスピーカーとドルビーヘッドフォンを搭載して手頃感を前面に打ち出しています。誰にでも分かることも重要なポイントですからね。 ―― いかにも入り口が狭い。或いは今の段階ではまだ敷居が高すぎるということですね。 淺野 まず、ホームシアターという扉を叩いて、中に入っていただかないことには何も始まりません。始められると、その中には必ず、それでは満足できないという人がでてきます。そこに、われわれのビジネスチャンスがあります。 ―― ホームシアター市場をリードする強力ブランドですから、今後のさらなる需要拡大を実現するためにも、店頭でも御社からの市場創造型の新しいアイデアに対する大きな期待が集まっていると思います。 淺野 例えば、薄型大画面テレビの奥行きに合わせたオーディオ商品も必要ではないかと思いますね。大画面と釣り合う大きさ、見た目の存在感という意味から、横幅は430mmあってもいいと思います。しかし、奥行きのサイズまで従来通りである必要はありません。むしろ、薄型大画面を省スペースにスッキリ設置したいというニーズが強いことを考えれば、テレビの下に置く商品の奥行きサイズを合わせてやる方が自然なのではないでしょうか。
―― 市場では今、商品価格の低下が大きな課題として指摘されています。この点についてどうお考えですか。 淺野 薄型大画面テレビの価格がどんどん下がっています。例えば、それに合わせて、ホームシアター製品の値段を下げていくべきかといえば、それはまったく別の問題で、私はむしろ、逆に上げていってもいいくらいではないかと思います。反比例してもいいくらいだと私は思いますね。 ―― 価格競争がますます激しさを増していく中で、流通も差別化を図ろうとしていますが、これからはブランドが流通を選ぶということがあってもいいのではないでしょうか。 淺野 われわれの商品では、マス的な要素もなければいけませんし、また一方では、高級ブランドとしてトップの地位に君臨するということもやっていかなければなりません。どちらか一方というのではなしに、私どもとしては後者にウエイトを乗せながら、うまくバランスをとって取り組んで参ります。 ―― ただ安ければいいというのではなく、付加価値をお求めのお客様にはきちんとそうした商品をお届けしていかなければならない。それを提供することができるメーカーや販売店には、きちんとその分の利益が還元される環境を構築していかないといけないですね。 淺野 「10%成長」はひとつのキーワードですが、収益や営業利益の面においても2桁成長をターゲットに置いています。もう少しで達成できるところまできており、あと一歩です。それを、毎年、持続していくということは大変なことですが、しかし、できないことではありません。挑戦し続ける意思を強く持ち続けるためにも、ひとつのターゲットとしてぜひ、実現していきたいと思います。 ◆PROFILE◆ Takafumi Asano |