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高橋憲二氏

(株)日立製作所
ユビキタスプラットフォームグループ
ユビキタス営業統括本部
コンシューマ営業本部
本部長

高橋憲二
Kenji Takahashi

新シリーズで巻き返し
プラズマテレビのWoooから
デジタル商品群のWoooへ

薄型テレビ「Wooo」8000シリーズを発表した日立。これまでの同社の薄型テレビならではの魅力を継承しながら、画質や使い勝手などあらゆる面で大きな進化を遂げた新シリーズである。日立グループ内で開発・生産される強み、ハイビジョン高画質へのこだわり、好評の「録れるプラズマ・録れる液晶」としての付加価値と、その提案がますます注目される中、日立の薄型テレビ戦略、Woooブランド戦略を同社コンシューマ営業本部長の高橋憲二氏に聞いた。

インタビュアー ● 音元出版社長 和田光征

IPS方式の自社パネルを搭載
動画応答性能、視野角に優れた
プラズマのような日立の液晶


プラズマと液晶、薄型テレビ
トータルでパネル戦略を展開

―― 4月にコンシューマ営業本部長にご就任されました。ご感想からお聞かせください。

高橋憲二氏高橋 私はもともとAV商品、薄型テレビ、DVDなどを担当していました。日立として軸にしていたプラズマWoooからスタートして、ブランドづくりなどを手がけてきました。32V型のプラズマテレビを2001年に発売し、ブラウン管テレビを薄型テレビに切り替えたのもその時期です。
4月からの状況を一言で表すなら、「チャンスとピンチが一緒に来ている」と言えます。デジタル関連商品が伸びていくことは間違いありません、その意味ではチャンスですが、伸びるマーケットほど位置取りが早急にできていないと淘汰されてしまいます。例えば、プラズマテレビに関しては私どもはトップシェアをずっと誇ってきましたが、この数ヵ月状況は一変しています。それを今回発表した8000シリーズで一気に巻き返していきたいと考えています。

―― 日立のテレビ戦略について具体的にお聞かせください。

高橋 プラズマテレビの印象が当社の場合は強いかと思いますが、もうひとつの軸は液晶テレビです。薄型テレビトータルで幅広いパネル戦略が展開できています。ご存じの通り当社はパネルを内製していますが、1月に東芝様、松下電器産業様と薄型テレビ向け液晶パネル製造及び販売の合弁会社、株式会社IPSアルファテクノロジを発足いたしました。千葉県の茂原に工場を建設していますので、液晶もそういった意味で本腰を入れていく状況です。今回の8000シリーズでもIPS方式のパネルを搭載した37V、32V、26V型をラインナップしていますので、いよいよ液晶テレビも市場で戦っていくと強く意気込んでいるところです。

―― 非常に内容の良いパネルですね。

高橋 あとはマーケットに対してどういうアピールをしていくかです。今、松下電器さんが動きと斜めに強いという表現で訴求していただいていますが、こういった啓蒙活動をもっと3社で加速していくことになると思います。


「録れるプラズマ・録れる液晶」
好評のHDDレコーダー機能

―― 今回、発表された8000シリーズの強みをお聞かせください。

高橋 具体的な商品についての強みはデバイス系とセット系の両方にあります。デバイスについては、発表させていただいている通り、プラズマテレビはメガピクセルALISパネル(水平1024×垂直1024画素)を搭載し、業界最高ピーク輝度1400cd/m2を実現しています。液晶テレビは先ほども申し上げましたが、IPS方式のパネルを搭載し、すぐれた動画応答性能、視野角を持っていますので、店頭で一目瞭然でご理解いただけるものと思います。
セットとしての魅力はやはり「録れるプラズマ・録れる液晶」ということで、HDDレコーダー機能を搭載するとともにデジタルダブルチューナーを採用していることです。簡単な録画はテレビの役目という発想がかなり好評で、構成比はどんどん上がっています。8000シリーズではHDDレコーダー機能を搭載したHRシリーズの構成比を半分くらいに持っていきたいですね。

―― 日立グローバルストレージテクノロジーズをはじめ日立グループとしての強みも非常に有利ですね。

高橋 セットにあわせてデバイスができるという強みはあります。日立グローバルストレージテクノロジーズのHDDの信頼性の高さは自負しています。衝撃面、寿命など様々な工夫が盛り込まれていますので、他社さんの製品とは一線を画しています。「録れるプラズマ・録れる液晶」というのは商品の差別化の大きな柱です。
リモートスイーベル機能もとても好評です。大画面になればなるほど、自分の方に画面が向いてくれるというのは快感です。今回は卓上スタンドだけではなく、ラックタイプもご用意いたしました。こちらも店頭でのアピールポイントになると思いますし、お客様にお喜びいただける機能だと確信しています。

―― プラズマと液晶と棲み分けは明らかですね。

高橋 大画面はプラズマ、中小型は液晶。37V型はどちらもラインナップしていますが、コンセプトは明快です。シアター系のプラズマに対し、カジュアル的なリビングイメージを液晶には持たせています。その一端として、プラズマはサイドスピーカーを採用し特に音を重視したスペックを持たせていますし、液晶はアンダースピーカーを採用した省スペース設計となります。


「人づくり」「売り場づくり」
「お客様づくり」3づくりを推進

高橋憲二氏―― 営業戦略については人づくり、売り場づくり、お客様づくりの3づくりの強力推進を掲げられています。まずは人づくりについてお聞かせください。

高橋 私どもは総合家電メーカーです。一人の営業が扱う商品は幅広く、広い知識は持っていますが、それぞれの専門知識は弱い部分もあります。特にそれを補強するための商品と販売の研修を、当社およびHCM(日立コンシューマ・マーケティング)の営業に厚く行います。そして、彼らが伝道師となり、お店の方に商品の良さ、販売のノウハウをお伝えしてまいります。商品が中心になりますが、お客様にとってどう嬉しいのか、お客様にとっての利益をしっかりとお伝えしていきたいですね。

―― 具体的にそれぞれの商品の良さをどのように伝えていきますか。

高橋 まずプラズマの良さをいろいろな販売上のテクニックを使って、きちんと訴求していきます。例えば、家庭の視聴環境と店頭は異なります。200ルクス前後の家庭の照明の下で見た場合に画像がどうなのかということはきちんと伝えなければいけません。そして、プラズマの良さを踏まえて、「日立の液晶はプラズマみたいな液晶」であると説明していきたいと思います。
それはどういったことかというと、日立の液晶はプラズマのように動画応答性能も視野角も優れているということです。ですからこれが商品の魅力を端的に表現できる方法ではないでしょうか。リビングではテレビ正面から45度は当たり前の場所にソファが置かれていたりします。大画面になればなるほど、視野角という問題を重要視すべきでしょう。

―― 今回の8000シリーズは非常にわかりやすく良さが伝わります。液晶テレビの世界ではIPS方式のパネルの登場で、市場での新たな競争がはじまりますね。

高橋 まだ序盤戦です。薄型テレビもDVDの環境もそうですが、ひとついい商品、コンセプトを持った商品が出るとがらっと様相が変わります。しかし、これが何年も続くのかというと、そうではありません。来年のワールドカップサッカーが終わった時にどういったポジションにあるのかが、重要な要素だと思います。なぜかと申しますと、来年が地上デジタル放送の全国普及におけるいわゆる最終ラウンドになりますから、2006年度は大きなターニングポイントになると思われるからです。
もちろん、リアプロジェクションテレビも色々と登場し始めましたし、SEDも間もなくリリースされると聞いていますので、さらに競争は厳しくなると思いますが、日本の家庭のテレビの数は相当な数になります。そういう意味では市場はどんどん活性化していくと思います。まさに「チャンスとピンチ」ですね。一戦、一戦、勝っていかなければなりません。

―― 例えばリビングの中心にプラズマWoooを置くと、その次には各部屋に液晶Woooが入り、家全体、個室まで押さえ込んでいくことになりますね。

高橋 家庭内にある家電はひとつひとつが1票だと思います。しかし、リビングのメインテレビは1票ではなくて、10票くらいになるんです。リビングの中心にWoooが座っていることは大変大きな影響力があります。これだけの普及率の高いテレビがどんどん薄型、地上デジタル放送対応のものに置き換わっていきます。リビングだけではなく、個室の2台目、3台目のテレビも薄型になります。液晶テレビの小型サイズのものも視野に入れながら、ラインナップを拡充していきたいと思います。

―― 売り場づくりでは5000店一斉展示と掲げられていますが、状況はいかがですか。

高橋 順調に進んでいます。売り場ではラインナップでの展示をお願いしています。テレビライクな見せ方を中心に、ラックと一緒にご展示いただきたいと思います。特に大型は卓上スタンドではなくて、売り場の一番下段でスイーベルできるラックでの展示をご提案しています。しかし、実際に店頭でのスイーベルのデモは安全性を考慮しなければいけませんから、動きはPOPで表現していきます。

―― お客様づくりということでは、Woooの商品を通したファンづくりを掲げられています。

高橋 これだけの商品ですから、車などと同じように商品を見ないでご購入いただけることはないでしょう。お客様とプラズマおよび液晶Woooとの接点を増やすということで、地域店さんではフェアをお願いしています。ご販売店様の店舗で行うものから、地域のお店が数店集まって行うなど、近隣のお客様を身近な場所にお呼びした小さな展示会から企画を積み重ねて、たくさんの会場で行っていこうと企画しています。もちろん量販店様のキャンペーンももれなく働きかけていきたいと思います。

―― 今後も高い伸びが期待されている薄型テレビやDVDレコーダーですが、一方で価格の問題があります。これについてはいかがでしょうか。

高橋 大変な状況だと思います。しかしながら商品の価値をご理解いただき、お客様にとってなくてはならない存在になりたいですね。また、日立では以前「すごいけど簡単」というCMを展開していました。まさにそういう商品が求められています。簡単であることは以前はどちらかというとお値段的に安いことでしたが、お客様への使いやすさという意味での簡単、使う人のために技術を振り向けることがご評価いただける時代です。そういったものづくりをしていこうと設計や開発部門に言っています。
今回、8000シリーズでHDD内蔵のHRシリーズをお薦めするのには、こういった簡単という要素があります。テープを入れる手間もなければ、リモコンもひとつで済みます、録りたいものをワンボタンで録画できます。リモコンも今回は工夫し、ハンディキャップをお持ちの方にも使いやすくしています。DVDレコーダーのリモコンもビデオと同じような使い勝手は表に、様々な機能は裏にあればいいわけですから、こういったことをさらに具現化していきたいですね。


プラズマのWoooから
デジタル商品群のWoooへ

―― 今回、8000シリーズを発表されたことで、Woooブランドの中核商品となりますが、どのようなブランド戦略を描かれていますか。

高橋 Woooブランドは広く認知していただいていますので、大切にしていきたいと思うと同時にチャンスだと思います。ブランドとしてのWoooは商品に落とし込むと、やはりプラズマのWoooという印象が強いです。先ほども申し上げましたが、これを早く薄型テレビのWoooにしたいですね。そしてこれを軸に、DVD関連にもどんどん波及させていきたいと思います。最終的にはAV商品を全部くくるような、第2ブランドにしたいという気持ちは常にあります。今年、来年といったイメージでいうとプラズマのWoooからデジタル商品群のWoooにしていきます。
そのためのイメージづくりのキーとなるWoooブランドのキャラクターに今回から黒木瞳さんを起用し、Woooトータルで展開します。Woooの顔として積極的に宣伝・販売促進戦略を展開していく予定です。薄型テレビのCMだけではなく、秋の運動会シーズンにはDVDカムのCMにも登場します。黒木瞳さんは女優としての顔はもちろん、お母さんとしての顔もお持ちの方です。DVDカムのCMも良いものができましたので、ご期待ください。さらに今後、DVDレコーダーでもご登場いただくなど、お客様へWoooトータルのイメージがより強く大きなものになっていくと思います。

―― 最後に販売店様へのメッセージをお願いします。

高橋 プラズマも液晶も現在、新工場を建設しており増産体制を整えつつあります。この成功が次の展開に繋がりますので、必ず勝利していきたいと思います。
今回の8000シリーズではそれぞれのお客様のニーズにお応えできるラインナップを揃えました。ご販売店様におかれましては、地上デジタル放送の全国普及+αの重点商品として、ぜひWooo商品を商圏のお客様にお届けいただきたいと思います。

◆PROFILE◆

Kenji Takahashi

1955年4月18日生まれ。福岡県出身。79年3月九州工業大学卒業。79年4月日立家電販売鞄社。03年4月鞄立製作所ユビキタスプラットフォームグループコンシューマ営業本部AV営業部部長。05年4月ユビキタス営業統括本部コンシューマ営業本部本部長就任。現在に至る。趣味はアウトドア全般。生まれも育ちも福岡県、根っからの九州人。自称「温和な性格」も怒らすと恐いとの定評あり。入社以来、コンシューマ向けAV商品の営業一筋で販売前線に精通していると自負する。モットーは「成せば成る」。