Special Interview 1 (株)AVC Technology Japan 蘇 智安氏 自社開発・生産・販売の強みを活かし 世界トップクラスのデジタルオーディオメーカー、香港AVC Technologyが、満を持して日本市場への参入を果たした。日本発の「SIGNEO(シグネオ)」ブランドを、日本法人AVC Technology Japanとともに立ち上げ、まずは、デジタルオーディオプレーヤー市場でその実力を見せつける。DAPとオーディオの強力スタッフを擁し、デジタルオーディオの世界にどのような新境地を切り開こうとしているのか。その狙いを、同社Billy So氏に話を聞いた。
―― 7月下旬からいよいよ「SIGNEO(シグネオ)」ブランドのデジタルオーディオプレーヤー(DAP)が店頭に並び始めました。AVCテクノロジーが、日本法人のAVCテクノロジー・ジャパンを設立し、マーケットに本格参入した狙いをお聞かせください。 蘇 米国ではすでにビジネスをスタートしており、市場でもある程度のシェアを獲得していますが、これから世界戦略を考えたときに、やはり、日本市場には大きなポテンシャルがあります。今回新たに設立した「シグネオ」のブランドをどう展開していくかを考えたときに、ダイレクトかつより積極的な展開を図るために、日本法人を設立することにいたしました。日本のDAPのマーケットはどんどん成長しています。以前に比べ、認知も格段と高まっており、本格参入するとてもいいタイミングにあると思っています。 ―― 日本ではまだ、シグネオのブランドも、AVCテクノロジーという会社もよく知られていないと思います。そこで、AVCが属する企業グループの全体像についてお話いただけますでしょうか。 蘇 グループの持株会社となるAV Concept Holdingsは、1996年より香港株式市場に上場しており、豊富な資金力とバックグラウンドを有します。10年前には自社で工場を持ち、アッセンブリーのビジネスを開始しました。6年前の1999年には、まずOEMとして、DAPの企画・開発を行っており、現在も主要製品となるDAPは、年間450万台を出荷しており、世界でもトップクラスになります。 ―― DAPの他にも、オーディオ・ビジュアル系のいろいろなハードウェアをつくっていらっしゃいますね。 蘇 DAPのOEMもやっていますし、ソニーやパイオニアのアッセンブリーも行っていました。現在、工場には高密度の最新型SMTを8ライン備えており、精密度のすこぶる高いものを生産できるという特長を備えています。
―― DAPでは、自社で開発、生産、販売までできることは、戦略上、大変有利な点になりますね。 蘇 ブランドのアイデンティティが守れます。これが何より大きなアドバンテージだと考えています。 ―― 先行する米国や、世界の他の地域での現状はいかがですか。 蘇 米国はどちらかというとショップブランドが中心ですが、日本とは異なり、大変大きなマーケット構成比を占めています。現在、フラッシュタイプでは10%くらいのシェアを獲得しています。シグネオのブランドは日本が最初の導入となり、その次に、この秋からのヨーロッパでの展開を予定しています。 ―― 日本のマーケットでどのような成果を出すことができるか、非常に大きな意味を持ちますね。 蘇 市場で成功を収めるためには、やはり、その国のマーケットに精通した人材が不可欠です。その意味では、日本のオーディオ並びにDAPに対する豊富な経験と実績を持ったスタッフとともにスタートすることができましたので、導入もスムーズに進み、大変よいスタートを切れたと思います。 ―― 通常は、あるブランドをワールドワイドに展開していて、それを日本にどのようにランチングさせるか。その手法や、地域にあった商品をどう展開させていくかを考えるのが、親会社と現地子会社の関係だと思いますが、今回のケースはそうではないわけですね。 蘇 日本と米国のマーケットはまったく異なります。まず何より、好みのデザインが違います。アップルは、米国向けにデザインした商品を全世界的にそのまま採用していますが、AVCの場合には、日本には日本、米国には米国の好みのデザインがありますから、それにあわせた商品を開発し、導入していきます。とりわけ日本向けに関しては、ユニークなデザインの商品が特に必要とされていますので、そうした商品を、これからどんどん投入していく戦略をとります。 ―― マーケットごとに商品を切り分けて開発していくという考え方ですね。 蘇 その通りです。マーケットのトレンドというのは国によって大きく違います。さきほどデザインを代表例にあげましたが、例えば米国では、充電式は少なく、単3電池の使える大きなものが多い。液晶も普通のタイプです。片や日本では、携帯電話と同じく、リチャージャブルバッテリーやカラー液晶を採用した小さなものが求められています。
―― 日本の消費者は先端商品に対する感度が非常に高い。品質に対する要求も厳しい。米国とはまったく嗜好性が異なります。それに対するAVCテクノロジーの開発・生産体制についてお聞かせください。 蘇 ひとつには、香港や中国の技術陣だけでなく、韓国にも開発チームを持っていること。また、クオリティに関しては、品質管理の部隊の再教育を行い、日本メーカーのスタンダードに近い形での品質管理が徹底されています。日本の品質管理の方法を全部持ち込み、日本人が指導する形で行っています。最終的な工場出荷にも現地で立会い、日本へ入ってきたものに対しても、ほぼ全数検査に近い形で確認作業を行っています。 ―― AVC本体の自社による開発・生産力に加え、AVCテクノロジー・ジャパンがそのようなファンクションを持っていることは、他社に対する大きな差別化ポイントになりますね。 蘇 カスタマーサービスも夜9時半まで行っています。今は、会社帰りに駅の近くの量販店に寄ってDAPを買われていく人も多いですから、そういうお客様にも、翌日ではなく、その日の内に問い合わせができる体制を整えようというのが狙いです。これは会社の立ち上げと同時に行っています。 ―― DAPも今では本当にいろいろな商品がありますが、その中で成功するための鍵を何だと考えていますか。 蘇 やはり一番大事なのは品質ですね。DAPには、新しいテクノロジーが次々に搭載されていきますので、開発にもよりスピードが求められます。デザインもエンドユーザーにとってはその人のアイデンティティですから、ひとつの商品が皆に売れるとは思いません。様々な好みを持った人へ、特別なデザインの商品も準備していきたいと考えています。当社は昨年も、国際的に有名なデザイン賞をいただいており、これからもそうした賞がいただけるよう、デザインには力を入れていきたいと思います。 ―― 色々なメーカーが参入しています。新しい「シグネオ」というブランドは、どのようなポジショニングを目指すのでしょうか。 蘇 コスト競争はあまり歓迎しませんので、そうならないためにも、主にミドルからハイエンドの商品に集中して展開していきたいと思います。ファッショナブルなデザインも提供していきたい。シグネオから、新しいトレンドやファッションを感じとっていただきたいですね。 ―― オーディオの世界、DAPの世界の双方に知識豊富な人材が揃っていることはシグネオの大きな力になると思います。またそのことは、AVCテクノロジー・ジャパンという会社が、世界的に見ても大変ユニークなDAPのブランドを創ることができるのではないかと思います。 蘇 大切なのは、我々が日本のマーケットのニーズを的確に拾い上げて、どういう商品を作って欲しいかということを、香港に適切かつ迅速にフィードバックできるかだと思います。 ―― それでは最後に日本の販売店の方にメッセージをお願いします。 蘇 立ち上げの段階から非常に熱心に取り組んでいただき、どうもありがとうございました。今後も、今お話させていただきました我々の戦略を十分ご理解いただいた上で、ぜひご拡販いただきますよう宜しくお願い申し上げます。 ◆PROFILE◆ Billy So |