受賞インタビュー (株)日立製作所 橋 憲二氏
凄いけど簡単に磨きをかけ ますます拡がりを見せる「Woooワールド」。お客様満足をさらに一段上のステージへと導くその商品提案力は、店頭テーマである付加価値提案の柱となる強力な存在だ。その実力を、プラズマとDVDレコーダーの2つの金賞受賞をはじめとする各賞獲得で見せつけた。受賞商品を生み出した背景、そして、さらなる市場活性化へ向けた戦略を、営業の陣頭指揮を執る橋憲二営業本部長に聞く。 インタビュアー ● 音元出版社長 和田光征 録れるプラズマが高評価 ―― 金賞を受賞したプラズマテレビW42P-HR9000は、大々的な発表会も開催されました。「1080ALISパネル」を新たに搭載され、250GBのHDDを内蔵するなど、日立の先進的な提案が凝縮された商品ではないでしょうか。市場の反応はいかがですか。 橋 かつてない規模のデビュー戦略で導入しましたので、テレビCMなどで目に止まった方も少なくないと思います。全国9箇所で駅頭イベントも開催し、約5000名の方に実際に体験していただきました。このときに行ったアンケートでは、HDDを内蔵した録れるプラズマという特長に対し、実に97%の人が「大変便利である」とご回答いただき、商品の方向性が間違いなかったものと意を強くしました。 ―― HDDを搭載したものと、非搭載のものとをラインナップされましたが、構成比はいかがですか。 橋 ご予算の関係などもあり、発売前は、HDD搭載6に対し、非搭載が4くらいの割合を予想していましたが、直近のデータでは、それが85対15くらいになっています。お客様にその価値を十分ご理解いただくと同時に、お取り扱いいただいている販売店でも、単価アップの絶好の商材となっており、店頭での展示商品の入れ替えなど、うれしい悲鳴をあげています。 ―― 低価格にさらに拍車がかかる中、やはりこれからは、他社とは一味違うという部分が大切だと思います。 橋 流通では現在、単価アップという面からも、薄型大画面テレビとDVDレコーダーのセット販売に力を入れています。テレビの側にHDDを内蔵することで、それを阻害してしまうのではないかという声も一部には聞かれましたが、それも杞憂に終わりました。 さらなる簡単さの追求が ―― いま、DVDレコーダーのお話が出ましたが、今回、DVDレコーダーとしては唯一、御社DV-DH1000Dが金賞を受賞されています。他社に先駆け、ハイビジョン録画にターゲットを当てた商品企画を進められてきた点が、審査委員の間でい評価を集めました。 橋 本当にうれしいですね。日立のハイビジョンは、アナログの時代、ブラウン管の時代からのこだわりでもあります。会社の中にも自然と、「ハイビジョンでなければ」といった感覚が社員の間に染み付いています。 ―― DH1000Dは、デジタルチューナーが2つ、HDDは1TB、使い勝手もさらに進化しました。 橋 DVDレコーダーは、てこ入れすべきところがまだまだあります。フォロワーの方の購入が増えてきて、「使いにくい」「むずかしい」というのは、依然、大きな課題としてクローズアップされています。ビデオに限りなく近い使い勝手をもっと追求していかなければなりません。
カメラのHD化へ ―― ビデオカメラは規格の過渡期にありますが、DVDビデオカメラとしてはただひとつ、御社DZ-GX3300が銀賞を受賞しました。この市場は御社が開拓者であり、今回の受賞商品には「その決定版だ」という高い評価が集まりました。 橋 まったく無の状態から、この5年間、営業も技術もいろいろ言われながらもやってきました。サイズや録画時間など、課題をひとつひとつ解消し、進化してきました。今回は3MのCCD搭載による高画質化、ハンドリングのさらなる向上など、ご評価いただいたように、ひとつの到達点まで達することができたと思います。 ―― さらなる高画質化となると、当然この分野でも、「ハイビジョン」というキーワードに対し、御社に対する期待感は高いのではないでしょうか。 橋 ハイビジョンに対するこだわりがありますから、もちろんここでも、ハイビジョンで撮れる商品を目指して現在商品開発を行っているところです。複数の選択肢がありますから、いろいろな可能性、市場性から考え、結論を出したいと思います。今回の受賞も、「ハイビジョン化に向けて頑張れ」というエールを送っていただいているように思います。
プラズマと液晶を両立 ―― 液晶ではIPSαパネルを新たに開発されました。プラズマと液晶の両方を持たれていますが、その棲み分けについてはどのようにお考えですか。 橋 IPSαパネルは、今回受賞したW32L-HR9000を皮切りに、さらに大きなサイズの37V型、下のサイズ26V型へとラインナップも充実させていく方針です。 ―― お客様のメインストリームのインチサイズが年々上がっています。この動向はどうお考えですか。 橋 ブラウン管からの買い替えでは37V型が伸びていますが、32V型も根強く、構成比は高いですね。下からのボトムアップでそれぞれのサイズが伸長しています。また、これからはセカンドテレビの地デジ搭載商品のマーケットも大きくなります。日立がトータルでラインナップを構える意味も、ここにあります。 ―― 例えば、2002年の日韓ワールドカップサッカーで、32V型を50万円出して購入されたような初期のお客様がいらっしゃいますが、当時は地デジのチューナーも搭載されていませんでしたから、買い替えも出始めているのではないですか。 橋 当時大画面を購入されたお客様は、販売店にとっても大切なお客様ですから、メーカーの責任として、次の商品をきちんと紹介し、お買い求めいただくための取り組みにも力を入れています。早々に買い替える方も少なくなく、使っていたものを実家に送ったり、寝室用に移動したりといった話もよく聞きます。ブラウン管より買い替えサイクルが早くなっていますね。
ホームシアター普及は ―― フルHDとの兼ね合いで、商品の完成度は非常に高いものの、逆風に立たされる液晶プロジェクター市場はどのようにお考えですか。 橋 プロジェクターは、きちんとお客様に紹介し、ホームシアターシステムとしてのアピールをもっとやっていかなければなりません。昔から置き場所やスクリーンなど、二次的な部分で敬遠されがちでしたが、薄型大画面テレビの普及により、導入環境は格段によくなっていると思います。あとはどう背中を押してあげるかではないでしょうか。とにかく実行あるのみです。 ―― ホームシアターのお客様や小社ホームシアターファイル誌の読者の声の中でも、「なぜホームシアターをはじめたのか」という動機として、「友達や親戚など知り合いがやっていて感激した」という方が実にたくさんいらっしゃいます。 橋 私も十数年も前になりますが、家でメなんちゃってシアターヤを楽しんでいました。シーツをスクリーン代わりに壁に張って、子供もテレビゲームをその大きな画面で楽しんでいました。画面が大きいということは、何よりも訴える力があるんですね。 ―― ますます広がりを見せる「Woooワールド」の今後の展開についてお聞かせください。 橋 それぞれの機器がもっと「凄いけどかんたん」に進化していかなければなりません。そのためにも、それぞれの機器がリンクしてくることになると思います。 ―― その際、「音」も重要な要素になりますね。 橋 音は非常に大切ですね。店頭での提案も難易度が高く、知恵も使わなくてはなりません。しかし、購入されたお客様からは、お礼の言葉が返ってくるケースがとても多いんですよ。それが大きな励みになります。薄型大画面テレビそのものの付加価値を高めることにもなりますし、販売店にとっては単価もアップできる。この点については現在、音響メーカーさんとのコラボレーションに力を入れていますが、今後も続けていきたいと思います。 ―― プロジェクターも音も、お客様に実際に体験いただけると本当に喜んでいただけますから、そうしないと、先々お客様に恨まれるくらいの気持ちで、店頭ではもっと積極的に取り組んでいただきたいですね。それでは最後に、販売店へのメッセージをお願いします。 橋 今回の数々の商品の受賞は、日立がこれまで考えてきたこと、取り組んできたことをご評価いただいた結果だと思います。メーカーとして、これら商品の内容をきちんとお客様にお伝えしていかなければなりません。そのためには、ご販売店さんのお力が必要です。今後とも、さらに魅力溢れる商品づくりに力を入れて参りますので、ぜひご協力、お力添え宜しくお願い致します。 ―― 本日はどうもありがとうございました。 ◆PROFILE◆ KENJI TAKAHASHI |