シャープ(株) 国内営業本部 副本部長 岡田 守行 氏
アクオスは始まったばかり 液晶テレビ「アクオス」を世に放ち、薄型テレビの大ブームを牽引すると同時に、国内テレビのシェアNo.1の地位を獲得したシャープ。テレビの大画面化とともに価格低下が加速する昨今、商品の差別化提案が求められている。そんな中フルハイビジョン化を積極的に推進するとともに、新提案「アクオスファミリンク」を打ち出した同社の今後の戦略について、シャープエレクトロニクスマーケティング社長の岡田氏に伺った。 インタビュアー ● 音元出版社長 和田光征 ―― まずご経歴につきましてお伺いしたいと思います。 岡田 私は最初に販売会社にいましたので、大手流通の皆様にお世話になりました。その後、首都圏の責任者の時には、地域店や法人関係の方々とお付き合いをさせていただき、国内のチャネルはほとんど勉強させていただきました。 ―― 正にアクオスの成長とともに国内の成長をご経験されたわけですね。 岡田 売上げ規模も大きくなりましたし、販売手法も進化しました。社員の考え方やモチベーションも変わりました。そういう意味でも、非常にいい時期に経験させていただいたと思います。アクオスでは、苦労の成果として、国内シェアナンバー1となることができ、これからますます拡大させていかなくてはなりません。 ―― アクオスがここまで来る過程で、シャープの企業体そのものも激変したと思います。そのあたり、企業全体が発奮されたのはいつ頃からなのでしょうか。 岡田 販促策として「アクオス ビッグバン」キャンペーンが国内でスタートしたのが2001年です。その頃から、それまでディスプレイのイメージだった液晶を「テレビ」として認知していただけるようになったと思います。また、アクオスブランドとして展開し、ブラウン管を含めたテレビでシェアナンバー1になった2003年頃から手応えが感じられたと思います。 ―― 「アクオス」の名称にはどんな意味が込められているのですか。 岡田 「AQUA」の造語です。液晶の持つピュアなイメージと水を結び付けたものですね。これから新しく全国垂直立ち上げをして行くというタイミングでアクオスブランドを打ち出しました。 それから2年でシェアナンバー1になれたわけですが、当時は苦労もありました。今の苦労は競争に対するものですが、当時は前人未到の道を歩いて行くような感覚でした。店頭にはブラウン管しかないという状況の中で、これから薄型ディスプレイの時代が来ると、ご販売店様に説明させていただいていました。会社のトップの方や店長、地域店の皆様方、いろいろなご販売店様と液晶テレビの成長性について対話を繰り返し、特にこれからは液晶テレビの時代になるということを信じてやり抜きました。今思うと懐かしいですね。 ―― そしてナンバー1となった2003年から2005年で、ラインナップを揃えてきたわけですね。 岡田 そうです。それまで独立独歩の状態でおりましたのが、各社が参入されて競争の世界に入ってきました。プラズマも出て来て、小型が中型、大型になってきて、ボリュームゾーンも変化しました。あらゆるところで競争が激しくなってきて、その厳しさを日々感じています。 ―― 昨年の暮れくらいから大画面化が加速し、30インチ以下クラスの価格低下が進みました。そして亀山ブランドが立ち上がり、フルハイビジョン化も加速したわけですね。 岡田 フルハイビジョンについては意図的にアピールさせていただきました。それに対して、特に流通の方々が一見して分かり易く、また面白い商材であるという認識をしてくださいまして、予想通りの伸長を遂げることができたのです。当社の国内営業本部長の大塚が、2006年度末までにシャープのテレビを全てフルハイビジョンにすると宣言しておりますが、ほぼその通りに進んでおります。 ―― 「亀山ブランド」という言葉をお使いになったのはいつ頃でしょうか。 岡田 2004年の1月に亀山第一工場が立ち上がり、3月頃から中部エリアのご販売店様で「亀山ブランド」という言葉を最初に使っていただきました。もともと弊社の液晶テレビを中心に扱っていただいて、名古屋を基盤に営業しておられるご販売店様が、「地元のテレビ」と最初から言ってくださっていました。その中で「亀山」という言葉をポップにつけてくださって、それが環境にやさしい工場であるとか、省エネ、高画質というメッセージにマッチして、お客様からの信頼感を得ることになったのです。
―― 最近ではご年配のお客様からも「亀山ブランド」という言葉が出ており、随分浸透したと思います。最新鋭の工場であることとメイド・イン・ジャパンの好イメージを凝縮させたような感じですね。 岡田 まさにその通りです。それが安心感、信頼感につながっているのです。そして全国の流通の方を亀山工場にお呼びして、工場自体を体験していただくということも徹底的にやらせていただきました。そして皆様がすごいと実感していただいたことを、地元でも言っていただくことにより浸透を深めました。 ―― 吉永小百合さんのイメージも強く浸透していますが、いつ頃から起用されたのですか。 岡田 1999年からですね。もう7年目になります。 ―― 彼女の起用は大成功でしたね。我々の世代はもちろん、若い人にもご年配の方々にも知名度が高いですし、どなたにでも好かれる存在です。そのイメージが「亀山」、「アクオス」とうまく結びつきました。 岡田 そうですね。続けて起用させていただくことで、ますます亀山=吉永小百合さんのイメージが強固なものになりましたし、信頼感につながったと思います。これは非常に大事なことです。 ―― 今回の新商品では、テレビに絡めて「アクオスファミリンク」のご提案をされました。あらためてご説明いただけますでしょうか。 岡田 現在「アクオスファミリンク」をご販売店様に提案させていただいていますが、大変高い評価をいただいております。薄型テレビ単体では単価下落が大きく、利益がきちんと確保できないという悩みがありますが、「アクオスファミリンク」を提案することにより、レコーダーやラックとのセット販売ができ、単価アップを図ることができます。映像と音と録画・再生を連携させることにより難しい操作がリモコン1つで操作できるので、ユーザーには非常に優しく、フレンドリーな機能として提案ができます。今商談をしているところですが、我々の想像以上に高い期待を持っていただいています。 ―― 今回の商品には、1ビットデジタルアンプが搭載され、音質にも注力されていますね。 岡田 おかげさまで音に対しても高い評価をいただいております。1ビットはシャープのオンリーワン技術で、ラックにも搭載しました。このラックはテレビで視聴している放送コンテンツの種類によって、最適なモードを自動設定します。ご販売店様からの反響も大きいですね。もっともっと、流通にもお客様にもアピールしていかなくてはならないと思います。 ―― アクオスが立ち上がって以後、独走から競合へと環境が様変わりしましたが、競合戦略、差別化戦略についてはどのようにお考えですか。 「亀山」ブランドでテレビ本来の性能である高画質を謳い、他社とは違う差別化、またアクオスファミリンクによるシステム提案での差別化を図りました。そして、対流通では売り場の中で一番いい場所をとっていただけるように営業活動をしてきたつもりです。競争が激しくなっても、そういう風にこれまでやってきたことをきっちり進めていけば、ナンバー1であり続けることは可能だと確信しています。流通からもそれだけ評価していただいているということは、我々も感じています。決して油断することなく取り組んでいけば、道は開けると思います。 まずお客様が店頭に来ていただけるような環境をつくるため、「亀山」「吉永小百合さん」でアピールするとともに全社一丸となって取り組んでいくことが大事だと思います。そして事業部がしっかりと商品をつくり、我々がしっかりと営業に取り組んで行けば、負けることはないと考えています。 営業的にはシェアをとることも大切ですが、ご販売店様に地道な提案活動をきちんと継続していくことが最終的にシェアとして現れるものだと考えています。 ―― アクオスのイメージを徹底的にアピールするということと、商品のラインナップ戦略も大事ですね。ややもすると商品の幅を拡げすぎて足を引っ張り合い、求心力を欠くことになりがちです。 岡田 アクオスを推進する際、社内では恷Oつコブらくだ揩ニして提案するようにしています。サイズ別の販売動向は、40インチ以上の大型ゾーン、37インチのボリュームゾーン、そして20インチ以下のセカンドニーズのゾーンの3つのコブがあり、この3つのコブでの商品ラインナップを揃え、用途別にきちんと提案できることが勝負に勝つポイントとなります。 ―― 2003年から2005年までの3年間、アクオスは破竹の勢いで成長し、ある到達点に来ました。次の2006年から2008年までの3年間は、その地位を安定させていく時期ではないかと思います。 岡田 10月1日に亀山第二工場の商品が発売されます。37インチ以上のゾーンできちんと提案ができるのも、これからが勝負です。これまでは32インチあたりがボリュームゾーンでしたが、早晩40インチ台があたりまえになるでしょう。そうなると楽しみです。メインとなる40インチ台は、ほとんどのご家庭にとって1台しか入れません。そうすると寝室で30インチ台、子ども部屋で20インチ台とまた買っていただけるチャンスがある。これには営業的なことでサポートやサービスをきちんと行っていく必要があります。 ―― 今、徐々に海外の低価格液晶テレビが入って来ていますが、その動きをどのようにご覧になりますか。 岡田 国内のユーザーは、目も耳も感性も豊かで、いいモノを見極める力を持っておられますし、購入される財力もお持ちです。そしていいモノを買うことに対する満足感を感じておられます。実は今回提案させていただきましたアクオスファミリンクに加えて、新しいラックを提案致します。 ―― アクオスでは当初からインダストリアルデザイナーの喜多俊之先生を起用され、ライフスタイル提案という点においても注力されていました。今度の壁寄せラックも優れたライフスタイル提案だと思います。こちらもデザインは喜多先生なのですか。 岡田 今回はデザイン監修を喜多先生にやっていただきまして、いい商品に仕上がりました。10万円台で提案させていただいておりますが、買っていただけるチャンスは大いにあると思います。 ―― テレビが大型になればなるほど、デザイン的要素も大事ですね。 岡田 その通りです。コードを見せない、足周りを美しくする、壁にぴったりと付いた形にするなどの配慮をし、アクオスのイメージにぴたりと合うようなラックです。ぜひご期待いただきたいと思います。 ―― 今後も御社のご活躍に期待しております。本日はどうもありがとうございました ◆PROFILE◆ Moriyuki Okada |